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美人が少女達に恐喝・リンチに遭うフェチその2

美人が少女達に恐喝・リンチに遭うフェチその2






19 :新田美穂 1:2009/11/08(日) 17:39:52 ID:O+Mk4XHm0
 新田美穂の前にはインタビュアーとカメラマンが陣取っていた。美穂は20歳。
現役東大生の美人だ。タンクトップを盛り上げる乳房は形がよく、ウエストは
キュッとくびれ、ミニスカートに包まれた尻は引き締まっている。スリーサイズは
88、56、90。伸びやかな太ももは陶磁器のごとく色白だった。ツンッと
高い鼻は自尊心の高さを象徴しており、アーモンド型の瞳は、覗き込んだ男を
瞬く間に虜にしてしまう。黒檀色の髪は吐息で舞い上がるほどサラサラで、
豊かな量が腰元まで流れ落ちている。
「次戦への抱負をお願いします」とインタビュアー。
「美しく勝つ、それだけよ」
 美穂は自分が最も綺麗に見える角度で微笑んで見せた。インタビュアーが生唾を
飲み込んだのが見て取れる。
「対戦相手は28歳のベテランです。山篭りをして技に磨きをかけているそうですが」
「その間、私は美に磨きをかけておくわ」
「おお、余裕ですね!」
「もちろんよ。私は必死でトレーニングに励んでいる弱い犬とは違うの。対戦相手、
何て名前だっけ?」
「二階堂久恵選手です」
「ああ、そんな名前だったわね。昨日、戦ってる映像を見たけど、私、思うのよね。
山篭りなんてしたら、雨に濡れた惨めでブサイクなブルドックみたいな外見に
なっちゃうんじゃないの? 観客は気持ち悪がるわよ」
「手厳しいですね」
「平均以下の容姿の女は、死に物狂いで美を磨かなきゃ。28歳じゃ、肌はボロボロ
でしょうに、ますます醜くなるわよ」


20 :新田美穂 2:2009/11/08(日) 17:41:12 ID:O+Mk4XHm0
「余裕の発言ですね。さすが女子チャンピオン。しかし、今回はプレッシャーも
あるのでは?」
「私が? いつもどおり勝だけよ、美しく、ね」
「しかし、あの約束は重荷じゃありませんか?」

1ヶ月前。
美穂が試合で見事なKO勝利をし、余裕で防衛した直後だった。二階堂久恵が
リングに上がり、次は私と戦え、とマイクアピールしたのだ。勝者のインタビューを
邪魔した久恵に腹が立ち、美穂は彼女を罵った。リングは口撃の応酬となった。
「勝つのは私よ、新田美穂!」
「醜い犬ほどよく吠えるものね」
「何ですって!」
「私の勝利は決まってるのよ。あなたじゃ私には勝てない」
「ふざけんな。勝つのは私よ! もし私が負けたら引退してやるわ!」
「へえ。じゃあ、私が勝ったらあなたの言うことを何でも聞くわ」
「その言葉、忘れたとは言わさないわよ。本当に“何でも”ね?」
「私のモットーは有限実行なの。女王に二言はないわ」
「ふふふ、それは楽しみね。覚悟してなさい」
 久恵は不敵な笑いを残し、リングを去った。
 翌日のスポーツ新聞は、美穂が一面を飾った。
『負けたら“何を”することになるのか!』
『女王が負けたら何でも言うことを聞く宣言!』
 世論は盛り上がり、後には引けない大勝負となった。


21 :新田美穂 3:2009/11/08(日) 18:01:24 ID:O+Mk4XHm0
 しかし、美穂は負ける気は全くなく、適度にトレーニングをこなし、後は
お洒落してバーに行き、声をかけてくる男どもを焦らし、カクテルを奢らせ、
軽くあしらうという暇潰しをしてすごした。
「なあなあ、俺と飲まない?」
 声をかけてきた男は、50点の容姿だった。それでも男性ファッション誌に
登場していてもおかしくない程度の外見は備えている。まあ、つきあってもいいだろう。
美穂は男の奢りで適度に酒を飲んだ。
 美穂は男の腕時計を見やり、微笑を見せて言う。
「ねえ、私、時間が分からなくて困ってるのよね。その時計、くれない?」
「おいおい、冗談だろ。これはロレックスだぜ?」
「あっ、そう。だから?」
「いくらするか分かってんの?」
「さあ。興味ないから。そんな程度の時計、いくつも持ってるもの。でも、
買うときも貰うときもいちいち値段なんて気にしてないわ」
 男は困惑した顔で頭を掻いている。
 美穂は立ち上がった。
「別にいいわ。私は時計をくれる男を捜して一緒に飲むから」
 男は美穂の腕を掴み、「待てよ、分かった、分かったって」と言いながら、
腕時計を外して差し出した。美穂は受け取り、自分の腕に巻いた。
 別にロレックスの腕時計なんて欲しくもないが、男がどれだけ自分の
美貌に魅了され、言いなりになるか確かめたかったのだ。
 美穂は再びスツールに座り、酒を飲み始めた。


22 :新田美穂 4:2009/11/08(日) 18:02:26 ID:O+Mk4XHm0
 30分後、男が言う。
「なあ、そろそろ行かないか? ホテルがとってあるんだ」
 美穂は呆れ顔を作って男を見た。
「私に相応しい男は、高学歴、高収入、高身長のハンサムだけよ。残念ながら
あなたじゃ私に釣り合わないわ」
「はあ? ふざけんなよ。時計やったろ!」
「時計程度で買収できると思わないで」
 ぴしゃりと言い放つと、男は立ち上がり、「なめんな!」と殴りかかってきた。
美穂は座ったまま上体を反らすと、拳をかわし、男の後頭部を鷲掴みにしてカウンターに
叩きつけてやった。鼻が潰れる音がし、鼻血が広がる。
「あら、残念。50点の容姿が20点にマイナスね」
 美穂はロレックスの時計を迷惑代として貰ったまま、バーを後にした。
 男なんてバカばかりなんだから、適度に微笑んでやれば勘違いして何でも
買ってくれる。ブランド物のバッグも自分のファイトマネーで買ったものより、
男から貢がれたもののほうが圧倒的に多い。
 美穂は完全な勝ち組人生を歩んでいた。頭脳明晰で東大に通い、類稀な美貌を持ち、
レースクイーン顔負けのスタイルを維持し、格闘技大会で女王に君臨している。
マスコミからはちやほやされ、水着の写真集も3冊出版した。
 美穂は格闘技は後2年でやめて一流商社に就職するという人生プランを持っていた。
 向かうところ敵なしだった。
 もちろん、嫉妬やねたみによる敵も多い。大学内でも、美穂の高飛車な態度が
気に食わない女たちや、告白して手ひどく「自分の顔を見て出直したら?」と振られた
男たちは、美穂を嫌っている。


23 :新田美穂 5:2009/11/08(日) 18:06:21 ID:O+Mk4XHm0
 しかし、美穂は気にしていなかった。底辺の人間は恵まれた人間をねたむものだし、
嫉妬されればされるほど自分の完璧さが実感され、嬉しかった。
 気分転換に銀座で買い物をしようと思い、電車に乗った。尻に触れる手のひらの感触があったのは、
満員電車に揺られて3分後だった。美穂は車内をさりげなく見回した。最初に目に飛び込んで
きたのは、一人の青年を挟んで斜め後ろに立つ脂ぎった顔の中年オヤジだった。こいつが痴漢か? 
確信はなかった。男の位置から触るには、相当腕が伸びないと無理かもしれない。しかし、美穂は
男を睨みつけ、「痴漢です、この人」と冷淡に一言。
 すると、声が聞こえた男全員が中年オヤジを見据えた。
「私は何もしていません、本当です、私じゃないんです。信じてください」
 犯人かどうかは知らない。ただ、息も臭そうなこの中年オヤジに生理的嫌悪感があり、半径5メートル
以内から消えてほしかっただけだ。事実、中年オヤジは次の駅で乗客数人に放り出された。駅員に
突き出そうとした青年に美穂は、「私は忙しいし、そこまでするのは可哀想だから見逃してあげて」と
優しく言った。青年は感激した眼差しを向けてきた。本当は痴漢の証拠がない事実を駅員に突っ込まれたく
ないだけだったのだが。
 美穂は満員電車にしてはまあまあ快適な時間を過ごし、銀座で買い物をして帰った。
 部屋は高級マンションの25階だった。家賃や生活費は、男から貢がれたブランド物のバッグや
指輪を転売して得たお金で払っていた。売っても売っても貢物は部屋に置ききれないのだから、
邪魔な物を処分して何が悪い? 男たちはどうせ、私の笑顔を見られるだけで満足し、何も気づか
ないんだから。
 美穂は毎日の日課をはじめた。隣室の部屋でエアロバイクを漕いで汗を流し、多種多様な
トレーニングができるマシンでバストアップ、二の腕やウエストの引き締め、太ももやふくらはぎの
シェイプに励んだ。自分を美しくするための努力は惜しまない。仰向けになっても形が決して崩れない
88センチの美乳はこうして作られる。


24 :新田美穂 6:2009/11/08(日) 19:03:14 ID:O+Mk4XHm0
 運動後は大理石の浴槽に浸かり、一日の疲れを落とした。自慢の体を洗うときは、コットン100%の
専用タオルで爪先から円を描くようにマッサージしながらボディーシャンプーを泡立て、足先と背中は
ボディブラシで優しく洗った。髪は、余分な皮脂を落とし、キューティクルを保護する作用のある天然
ハーブのシャンプー――50ml五万円――で時間をかけて丁寧に洗った。黒髪は光り輝いている。
 バスタオルで体を拭いた後は、枝毛ができないように濡れた状態では決してブラシを入れず、バスタオルでも
こすらず、軽く挟むようにして水気を取った。専用のオイルをつけ、ドライヤーで痛まないようにケアした。
 腰元まで流れ落ちる絹糸さながらの髪質は、毎日のケアで日々磨きがかかっている。踵を返す瞬間、背中で
フワッと翻る黒髪。そして再び背中を覆う。シャンプーのCMに出ている美髪の女優でも感嘆させる自信があった。
10年間丁寧に細心の注意を払いながら伸ばし続けてきた自慢の髪だった。
 入浴後は、新陳代謝を促進するハーブティーを飲み、高価なサプリ――コラーゲンとアミノ酸の含有量が高い――
を嚥下した。爪の手入れも怠らない。両手足の爪を爪磨きで丁寧に磨き、蛍光灯に掲げる。爪は宝石のような
輝きを放っていた。表面は高級車の車体のように滑らかだった。
 バスローブを着て境内の前に座り、鏡に自分の美顔を映しながらマッサージとケアをした。小顔で
シャープな顎のラインだ。鼻筋は綺麗に通り、桜色の唇は適度にふっくらとしている。
 女神にも嫉妬されそうな完璧な美貌ね――。
 就寝前には朝や昼よりも丁寧に歯を磨いた。歯科医御用達の専用液で10分間磨き、真珠を思わせる
真っ白な歯をさらに綺麗にした。小学生のころの歯列矯正で歯並びも完璧だった。100万ドルの笑顔を作る
ための歯だった。白い歯を見せて微笑めば、男なら誰でも魅了されるだろう。
 明日は男から貢がれたエステの無料パスを使おう。
 美穂は自分の美貌に満足してベッドに入った。寝る際は、長く美しい豊かな黒髪を枕の上に出し、決して
体で敷かないようにしている。男が見惚れ、女が嫉妬すらおこがましく感じるほどの美を磨くには、努力あるのみ、
だった。ミス東大に選ばれたこの美貌は常に高めていかなければいけない。


25 :新田美穂 7:2009/11/08(日) 19:04:16 ID:O+Mk4XHm0
現在。試合当日。
「ねえ、ちょっと! 水はまだなの!?」
 控え室の椅子に座り、伸びやかな脚を組んでいる美穂は、付き人の女を非難した。付き人の女は
鈍亀みたいに動きが遅い。気も利かない。こんな女にはなりたくないわね。
「すみません、すみません」と付き人の女が頭を下げる。平身低頭、土下座でもしそうな勢いだった。
美穂はため息を吐くと、「すみませんじゃなく、申し訳ありません、でしょ」
「も、申し訳ありません。ただいまお持ちします!」
 付き人の女は鈍亀にしては頑張り、すぐさまミネラルウォーター入りのコップを持って戻ってきた。
美穂は礼を言うこともなく、受け取って水を飲み干した。
 そして、試合開始の時刻が訪れた。
 新田美穂はピンクのチューブトップと白のミニスカート姿で入場した。スカートの下はもちろん白の水着
である。黒檀色の髪が腰の周りでスモークに舞っている。美穂の全身はスポットライトの中で輝いていた。
整った顔立ちに誰もが釘付けだ。磨き続けている美貌が最も引き立つ瞬間だった。
 20000人も収容できるドーム型の会場は満員だった。美人である美穂のファン、美穂のセクシーな
何らかの罰ゲームを期待する男たち、高飛車で外見に劣る女を見下す美穂の負けを期待する女たち――。
 美穂は観客の注目を一身に浴びながらリングインした。ブーツを脱ぎ、生脚を見せつけながら。
 リングの中央に立つと、両手をウエストに添え、腰を右側に少しスライドさせ、なだらかな体のラインを
強調するポーズをとった。グラビアアイドルさながらの絵になると自覚しての行動だった。フラッシュが
全身に注がれる。最高だった。全世界をこの手におさめた気分になる。
 リングには二階堂久恵が待ち構えていた。彼女は肩までの茶髪をウルフヘアにし、タンクトップと迷彩柄の
ズボンをはいている。一重の三白眼と低い鼻のせいで顔の造作は悪い。
「山篭りでまた老けたんじゃない?」と美穂が挑発すると、久恵の顔が屈辱に歪んだ。ますます醜くなった。
 あんな容姿じゃ、底辺の男にしか相手にされないんじゃないかしら。


26 :新田美穂 8:2009/11/08(日) 19:05:03 ID:O+Mk4XHm0
 アナウンサーが声を上げる。
「青コーナー、二階堂久恵~! 28戦26勝2敗。26KO~。赤コーナー、新田美穂~! 38戦全勝。
30KO~!」
 美穂は久恵に微笑を返し、付き人の女から花束を受け取り、久恵に投げつけた。花束はリングに落ちる。
「引退するあなたに祝福よ」
 久恵は野犬のように鼻を鳴らした。
「あんたこそ、覚悟しておきなさいよ。負けたら何でも言うことを聞く約束だったわよね」
「水着でセクシーダンスでも踊ればいいのかしら?」
「そんなことさせるわけないじゃない。常に注目を浴びていたい女王様は、セクシーポーズなんて
喜んでするでしょ。何の罰ゲームにもならないわ」
「じゃあ、あなたが勝ったら私に何を命じる気?」
 負ける気はこれっぽっちもないが、一応訊いた。
 久恵はリング下に視線を投じた。緑色の手術着を身に着けた外科医らしき男が3人立っている。その隣には
手術台があり、手足の部分に皮のベルトが備えつけられている。精神病者を拘束するベッドみたいだった。
 久恵の口から飛び出た言葉は、耳を疑うようなものだった。
「私が勝ったら、あなたを不細工に整形させてもらうわ。二度と今の美しい顔に戻れないようにね」


27 :新田美穂 9:2009/11/08(日) 20:25:54 ID:O+Mk4XHm0
 冗談としか思えない発言に唖然としていると、ゴングが鳴った。久恵が殴りかかってきた。不意打ちだった。
反応が遅れたのは、突如として尿意を覚えたからでもあった。
 今朝ちゃんとトイレに行ったのになぜ?
 美穂は拳を右へかわそうとした。反応が遅れた。拳が頬をかすめる。瞬間、久恵の左膝が腹部にめり込んだ。
「げ、げふっ」
 美穂は体を二つ折りにした。舞のように華麗な体捌きが自慢の美穂にとっては、攻撃を食らう経験はめったに
なかった。だから激痛に面食らった。おなかを押さえていると、ローキックが飛んできた。色白の太ももに
音が弾ける。男の軽量級キックボクサー並みだった。
 は、早い……。
 想像以上の実力に美穂は面食らっていた。再びローキックを食らった。衝撃が弾ける。2発、3発、4発。
伸びやかな前脚を上げてブロックを試みる。しかし、久恵は巧みに軸足の太ももの内側を狙ってきた。
「うぐっ」
 激痛に顔を顰めながらも反撃する。しかし、脚には力が入らず、よろけた。パンチはむなしく空を切った。
久恵の蹴りの猛攻。太ももに浴びる激痛の連打。
「あうっ、うぐっ、くっ」
 尿意が気になり、時折内股になってしまい、攻撃をよけられなかった。
 あっという間に太ももが赤く変色した。もともと透き通るように肌が白いため、赤く腫れたら日焼けのように
目立つ。女王として負けるわけにはいかない。美穂は久恵に組みついた。瞬間、右足の親指に激痛が走った。
踵で思い切り踏まれたのだ。見下ろすと、親指の爪が弾け飛んでいた。
「あぐううう!」美穂は叫び声を上げた。久恵は容赦なく足の指に踵を叩きつけてくる。
 な、何すんのよ。手入れの行き届いた私の綺麗な爪を!
 美穂は怒りに任せて払い腰を仕掛けた。久恵は重い腰で踏ん張って耐え、
再び踵で指を踏みつけてきた。


28 :新田美穂 10:2009/11/08(日) 20:26:48 ID:O+Mk4XHm0
「うぐうっ!」
 美穂は思わず久恵を離した。距離をとり、自分の足の指を見下ろす。親指も人差し指も薬指も青く変色し、
ウインナーみたいに膨れ上がっていた。親指の爪はなく、肉が見えている。痺れるような激痛が足首まで走っている。
右足は足首から先の感覚がなかった。
「大事な足をよくも!」
 許せない。そう思って顔を上げると、久恵が眼前に迫っていた。鉈で切り払うような蹴りが太ももに炸裂し、
美穂は薙ぎ倒された。久恵がのしかかってくる。美穂は仰向けのまま、下から左脚で蹴り上げた。
当たらなかった。普段の切れがないのは、高まる尿意が気になるからだった。早期決着を意識すればするほど
動きが大きくなる。左脚はキャッチされ、脇に抱え込まれた。アキレス腱固めだった。足首が絞り上げられる。
「あううっ! い、痛い、離して!」
「誰が離すか!」
 久恵は上体を反らし、腕に力を込めた。アキレス腱が切断されそうだった。美穂は美貌を脂汗まみれにしながら
うめいた。
 な、何とかしなきゃ――。
 指の痛い右脚で顔面を蹴りつけてやろうとした。久恵は足の裏を両掌で受け止め、両手で美穂の足の指を折り
曲げ始めた。骨折しているであろう足の指をさらに曲げられ、美穂は悲鳴をほとばしらせた。久恵は密かに
尖った爪を立てて、美穂の爪が剥がれた親指の肉に食い込ませてくる。
「ぎゃあああ!」
 美穂は絶叫した。叫びながら無我夢中で暴れ、蹴り、もがき、転がるように脱出した。立ち上がり、肩で息をする。
「どうしたんだよ、女王様? 限界かい?」
 久恵の勝ち誇った口調に美穂は桃色の下唇をかみ締める。
「私はチャンピオンなのよ!」


29 :新田美穂 11:2009/11/08(日) 20:27:48 ID:O+Mk4XHm0
 反撃しようと脚を踏み出した。瞬間、足の指に激痛が走った。踏ん張れなかった。指の骨折と爪の剥離。
これによって得意の打撃の力は半分以下になっていた。連打を浴びせかけるも、新人選手なみの切れだった。
28戦26勝の久恵には全く通じない。
 久恵の戦法にまんまとはまってしまった。打撃系の選手にとって、脚を痛めつけられ、指を潰されるのは
致命的だった。
 試合開始から15分が経ったときには、美穂は息を喘がせていた。膀胱が内側から圧迫され、決壊を起こし
そうだった。駄目よ、駄目。試合中にそんな大恥を晒したら、動画が世界中に配信され、二度と世間に出られなく
なってしまう。
 美穂は、これは本当の私の実力じゃない、と現実を否定した。勝ったら不細工に整形させてもらう、なんていう
久恵の悪質な冗談に動揺し、不意をつかれ、尿意が気になり、流れを持っていかれただけだ。
 久恵が大振りのパンチを繰り出してきた。これならカウンターで迎撃――そう思ったときだった。再び足の指に
激痛が走った。久恵は大きく踏み込む際、美穂の足の指の上に踏み込んだのだ。
 瞬間の激痛でカウンターは放てず、ガードするので精一杯だった。久恵は膝頭を跳ね上げた。よけられなかった。
腹に炸裂し、美穂の上体が浮き上がる。
「うげえええっ」
 美穂はみっともなく胃液を撒き散らした。リングに倒れ込む。久恵のフットスタンプが美穂の頬を踏み抜いた。
美穂は口内でペキッといういやな音を聞いた。激痛にうめきながら血反吐を吐き出すと、粘着質の液体の中に
前歯が一本、混じっていた。口元を押さえながら「ああ、私の歯が……」と悲痛な声を漏らす。
 男を魅了してきた真っ白に輝く私の歯が折れた! 歯は一本でも失えない。骨折と違って折れたら直らない。
「な、何てことをするのよ!」
 上体を起こしたとき、美穂は扇状に広がる長く豊かな黒髪を掴まれ、うつ伏せに押しつけられた。
「い、痛っ!」
 久恵は美穂の背中に馬乗りになり、両手を顎の下に添え、美穂の体を反り上げさせた。苦しみに喘ぐ美穂。


30 :新田美穂 12:2009/11/08(日) 21:01:36 ID:O+Mk4XHm0
「どうだ、このバカ女! 参ったか!? 降参か!?」
「ぐううっ、だ、誰がギブアップ、なんて、するもんですか……」
「じゃあ、みっともなく負かしてやるよ!」
 久恵は右手で美穂の体を反らしたまま、左手で美穂の鼻の穴を持ち上げた。指の鼻フック状態でツンッと
高い鼻が豚鼻になる。鼻の穴が拡張される。
「い、いや~、こんなの、いや~」
 美貌を売りに水着の写真集まで出した美穂には、耐えられない屈辱だった。歪んだ顔を観客に見られるなんて
死にも勝る。カメラのフラッシュが焚かれる。
 信じられない屈辱だ。だが何より心配なのは、思い切り引き上げられたせいで鼻の穴が0・1ミリでも大きく
なったらどうしよう、ということだった。美貌を気にした隙をつかれ、久恵の腕が首に巻きついた。
「うぐぐぐぐ」
 美穂はうめき、逃れようと必死になった。しかし駄目だった。チョークスリーパーは完璧に決まっていた。
ああ、女王の私が何もできないなんて……。
 美穂は気絶し、敗北のゴングが鳴った。ミニスカートから伸びる太ももの付け根からは、黄色い液体が流れ出し、
リングに染み広がっていた。

 意識を取り戻した美穂は、リングの中央で肘掛け椅子に皮ベルトで拘束されていた。それでも、被虐美を
醸し出しているのは美貌のなせる業だった。ピンクのチューブトップは二つの釣鐘型に盛り上がり、白い腹部に
可愛らしいへそがあり、ミニスカートから伸びる太ももは見事に引き締まっている。もっとも、あざが目立って
いたが。
「ふざけないで! 早く離しなさいよ!」
 美穂は負けん気を発揮し、毅然と声を上げた。頬にあざがあっても美貌は全く損なわれていない。しかし、
頬は真っ赤に熱かった。失神したときに感じた感触。失禁? 今も水着に濡れた感触が残っている。


31 :新田美穂 13:2009/11/08(日) 21:02:31 ID:O+Mk4XHm0
 自分はもしかして――。
 恐怖と羞恥に何も考えられなくなった。
 久恵はリング下の椅子に座り、机の上のパソコンを起動させていた。パソコンの映像は会場の大スクリーンにも
映っている。そこには、美穂の顔写真があった。久恵は画像加工ソフトを立ち上げ、美穂に言う。
「ふふふ、私がパソコン上で加工したとおりの顔にあんたは整形されるのよ、そこの美容整形外科医たちにね。
うーん、どんな顔に加工してやろうかな~」
 美穂は恐怖を覚えた。久恵は本気だ! 怯えた声で言う。
「冗談でしょ、ねえ、冗談よね? 整形なんて許されるはずないわ」
「残念ね。主催者にも話は通してあるの。大金でオーケーしてくれたわ」
「そんな、そんな馬鹿な話、あるわけ――」
 美穂は周囲を取り囲んだ3人の男を見やり、言葉を失った。緑色の手術着を着ており、注射器やメスを手にして
いる。観客が盛り上がった。
「いいぞー!」
「やっちゃえ、やっちゃえ!」
 誰もがこんな非道な罰ゲームに興奮してる!? そうか、しょせん他人事だからか。テレビ番組でゲームに
負けた女優に罰ゲームをさせるかどうか、ネットで投票したら大多数が『させろ』に投票するだろう。自分に
何も被害が及ばないなら、他人が恥ずかしがったり悔しがったりする姿を見るのは面白いに決まっているのだから。
罰ゲームを見れないより、見れるほうが盛り上がるのだから。
 美穂は一人でもいいから味方を捜そうと周囲を見回した。リングの下には付き人がいる。助けを求めようと口を
開いたとき、付き人の女の唇が嬉しそうに吊り上った。その瞬間、美穂は悟った。試合前の控え室。鈍亀女の
持ってきた水を飲んだ。あの中に利尿剤が入っていたのではないか。普段から虐げられていることを疎ましく思い、
裏切って久恵に取り入ったのでは? 二人で私を罠に嵌めるため、負かすため、周到に計画していたのでは?
 愕然とした。飼い犬に手を噛まれたのか。


32 :新田美穂 13:2009/11/08(日) 21:03:34 ID:O+Mk4XHm0
 久恵はキーボードを操作し、美穂の画像をいじりはじめた。大スクリーンに映る美穂の顔写真の髪の部分が
入れ替わる。モンタージュ写真を作るように、顔は美穂のものだが、髪型だけが入れ替わるのである。
 腰まで流れるサラサラの黒髪が肩までのミドルヘアになったとき、美穂は動揺して声を張り上げた。
「私の髪を一ミリでも短くしたら絶対許さないから!!」
 天然ハーブのシャンプーとトリートメントで毎日ケアし、10年間伸ばしてきた自慢の黒髪である。朝日を
浴びたとき、茶色がかって輝くまでの髪。腰元までストレートに流れ落ちる髪――切られてたまるか。
 しかし久恵は無視し、髪型を入れ替えた。美穂の画像がオカッパヘアになる。
「そ、そんな髪にしたら承知しないわよ!」
 久恵は振り返り、呆れたように言った。
「はあ? オカッパなんてそんな可愛い髪型にするわけないじゃん」
 久恵はパソコンを操作し、次々と髪型を入れ替え、ある髪型で停止した。美穂はそれを見て声を失った。
 大スクリーンに映る美穂の髪型は、俗にいう『波平ヘア』になっていた。短い黒髪が両サイドに残っているだけで、
前頭部から後頭部まで肌色に禿げ上がっている。
 久恵が美穂に歩み寄ってきた。右手にはバリカンを持ち、口元は意地悪く吊りあがっている。
「これくらいは私にもできるわね~」
「いやよ、いや。冗談じゃないわ」
 美穂は拘束を外そうともがいた。しかし無駄だった。重い肘掛け椅子がガタガタと揺れただけだった。
「覚悟しなさい、新田美穂。何でも言うことを聞く約束だったでしょ。私はあんたを波平ヘアにしてやりたいのよ」
 スイッチを入れ、バリカンを美穂に近付けた。顔が恐怖に歪む。冗談じゃない。美容師ですら恐れ多くて触るのを
ためらった髪よ。あんたなんかに触る権利はないんだから!
 久恵の持ったバリカンが、美穂の額の真ん中から滑り込んだ。
「ひっ、ひいっ!」


33 :新田美穂 15  上のは14に訂正:2009/11/08(日) 22:07:51 ID:O+Mk4XHm0
 冷徹なギザギザの刃が豊かな髪の中に突き刺さる。黒い髪の束がバサバサと目の前を流れ落ちていく。
「バカ、バカ、何考えてんの!? 信じらんない! 本当にやるなんて!」
 色とりどりの宝石を踏みにじるような行為だった。朝にシャンプーしたばかりの髪は、薔薇のようなかぐわしい
香りを残しながら、リングに舞い落ちていった。
「うわあ、超楽しい! 他人の自慢の髪を奪ってやるのってこんなに楽しいんだ~」
 久恵は嬉々としながらバリカンが前後に往復させた。試合前の煽りVTRでさんざん『不細工扱い』された
鬱憤を晴らすように。
「いやあああああ!!!」
 美穂は喉が裂けんばかりに絶叫した。
「お、お願い、お願いだから髪だけはやめて!!」
 バリカンの動きが止まると、視線を上げ、大スクリーンを見やった。いつの間にかパソコン画面から、リングのアップに
切り替わっている。美穂の額から後頭部にかけて、畑でも耕したみたいに青白い道が何本もできていた。
「ひどい、ひどい、本当にバリカンなんかを使うなんて!」
 久恵は再びバリカンを動かし始めた。鼻歌混じりだった。
「やめてよ、やめて。同じ女なら分かるでしょ、この命を切られるショックは!」
 眼前を髪の束が雪崩れ落ちていく。私の髪が、私の髪が……あんたなんかと違って大事に大事に長年伸ばしてきた
のに……こんなのって……。自尊心ごと刈り取られていくようだった。
 走馬灯のように今までの自分の完璧な姿が脳裏を流れる。微風の中で梳き流した艶やかな黒髪が腰元でサラサラと
舞うとき、男たちは吐息混じりに眺めた。誰もが振り返り、足を止め、高級ホテルの黒いレースのカーテンが風になびいて
いるのを見る目を向けてきた。女たちですら、嫉妬の声よりも先に感嘆の声を漏らすほどの髪質だった。美穂は満足感と
優越感に身震いしながら街を闊歩したものだった。重さを全く感じさせない髪。触れた者はみな驚く。指で髪を梳かした
ときのあまりの軽さに。空気のような軽さに。
 なのにもう、その髪は刈られてしまった。リングに散らばっている。ごみのように。


34 :新田美穂 16:2009/11/08(日) 22:08:43 ID:O+Mk4XHm0
 私の髪はもう戻らない。ウィッグでは絶対に出せない艶と質なのに。ど真ん中を刈られたら、もう坊主にするしかないでは
ないか。そしてまた元の長さになるまで待つ? いやよ、いや! ショートヘアまで2年? ミドルヘアまで4年、5年? 
ロングまでは7年? 元の長さまでは10年はかかる。ああ、10年?  私は30歳になっている。それまでの間、
もう自慢の髪に櫛を入れる贅沢もできないの?
 久恵は楽しそうにハサミを取り出すと、美穂のサイドの髪を乱暴に切り始めた。シャキンッと硬質の音が響くたび、
透き通った絹糸のように黒髪が舞い落ちる。 今や、リングの中央には黒髪の絨毯ができていた。
「……もう、好きにしてよ」美穂は投げやりに言った。
 恐る恐る顔を上げると、スクリーンには醜い頭の美穂の顔があった。尼さんのようなスキンヘッドならまだ特有の色気が
あるかもしれないが、両サイドに黒髪を残して中央の髪が刈られた波平カットでは、ただただ惨めなだけだった。
 う、嘘でしょ。これが私なの?
 完璧に整った自分の顔立ちなら、役のために髪を剃った長澤まさみなんかよりも美人で、色気があるはずだと思って
いた。そう思うことでわずかな慰めを見出していた。髪を剃った女優は国内外にいる。なのに、中途半端に横髪が残って
いるせいで信じられないほどみっともなかった。顔の形が完璧に整っていても、顔の中で一番存在感を示しているのは
波平頭だ。誰もの目がそこに吸い寄せられ、色気も何も感じない。
 世界一の女優でも、波平頭にされたら滑稽なだけだろう。笑い者になるだけだ。誰も格好いいとは思わず、惨めな頭を
罵倒するだろう。
「ねえ、美穂。これで終わりとか思ってるわけじゃないわよね?」
 美穂は涙を流すだけで答えない。自分の容貌の悲惨さに打ちのめされ、言葉を返す気力も失っていた。
「バリカンで刈っただけじゃ、青白いもんね~。波平カットはちゃんと禿げでなきゃ」
 久恵が取り出したものを見た美穂は、両目を剥いて悲鳴を上げた。彼女の手には、小瓶が握られている。
ラベルには『ドイツ製 超強力永久脱毛剤』の文字。下には、『塗布後5分で毛根を完全に死滅させ、男性の髭でも
一度塗るだけで完全に脱毛できます。一生生えてくることはありません』


35 :新田美穂 17:2009/11/08(日) 22:09:29 ID:O+Mk4XHm0
 美穂は悲鳴を上げながらもがいた。皮のベルトが手首と足首に食い込む。
 逃げなきゃ、何とかして逃げなきゃ!
 久恵は無駄な抵抗を試みる生贄を見る目で陰湿に微笑し、超強力永久脱毛剤の小瓶のキャップを開けた。
「おとなしくしてなさい。たっぷり塗ってあげるから」
「いやいやいや、絶対にいや!」
 美穂がいやがればいやがるほど久恵は嬉しそうに、そして楽しそうに口元を緩めた。唇には満足の笑みが
浮かんでいる。
「お願い、お願いします。それだけは、それだけは許してください」女王のプライドも何もかなぐり捨てて懇願した。
 しかし久恵は耳に手を当て、「え? 何、聞こえなーい」とすっとぼけている。
 久恵は美穂の頭上で超強力永久脱毛剤の小瓶を傾けた。透明の液体が垂れ、バリカンで刈られて青白くなって
いる部分に落ちた。久恵は手のひらで超強力永久脱毛剤の液体をまんべんなくこすりつける。ライトを浴び、
液体を塗られた部分がキラキラと光る。
「や、やめ……やめて、お願い。お願いだから洗い流して! 早く、早く!!」
 ぬ、抜けちゃう。私の髪が抜けちゃう。こんなのひどすぎる。私が何したっていうの? あんまりよ。ああ、
このままじゃ二度と元の髪に戻せなくなる。10年経っても20年経っても髪が生えてこないなんて――。
「ああ、お願い。お願い、もう許して!」
 もがいているうちに時間は刻一刻と経過していく。大スクリーンに掲示されている電光時刻が徐々に減っていく。
 美穂の頭の中に過去の栄光が流れる。女子格闘技チャンピオンとしてテレビに出演したときだった。共演の
グラビアアイドルたちがため息混じりに見つめてきた髪。雑草が薔薇を眺めるように見つめてきた髪。美の
プロたちが素直に負けを認めた髪。彼女たちの眼差しを見るたび、勝ち組の人生を実感した。それなのに……。
 時間はすぎる。1分、2分、3分、4分。
 観客が残酷にもカウントダウンを始める。
「10……9……8……7……6……5……4……」




37 :名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 22:31:15 ID:WF6IKY5I0
書き直して更によくなりましたね!
やっぱり、いかに性格悪いかとかいかに美に力入れていたか、
いかに美しいかをこれでもかと描写してからの方が萌えるよなあ。
執筆者さんギャップの大事さをよくわかってらっしゃる。


38 :新田美穂 18:2009/11/08(日) 23:16:30 ID:O+Mk4XHm0
 切羽詰った美穂が叫ぶ。
「早く、早く洗い流してよ! 間に合わなくなっちゃう!!」
「……3……2……1……0!!!」
 無情の『0』の声を――観客全員の興奮と期待に満ちた声を聞いた瞬間、美穂は「ああ……」と力なく
つぶやき、両肩を落とした。絶望感に押し潰された。
「さあ、効果のほどはいかがかしらね~」
 久恵は歌うように言いながら、美穂の頭の液体をタオルで拭き取った。真っ白い生地の全面に黒い毛が大量に
付着していた。毛根から抜けた5ミリの髪である。溶かした海苔をぬぐったようにタオルは黒く汚れている。
 美穂は恐る恐る顔を上げ、大スクリーンを見上げた。心臓が止まった。両サイドに黒く短い髪を残しているだけで、
前頭部から後頭部まで肌色に禿げ上がっていた。毛根は完全に消えうせていた。
 観客から爆笑が起こった。
「ぎゃはははは!」
「波平だ! 波平だよ!!」
「きゃははっ、いい気味! ざまあみろよ!」
 美穂は茫然自失だった。『もう一生毛が生えない』という言葉の重みが鉛の塊となり、両肩にのしかかってきた。
押し潰されそうだった。現実とは思えない。誰もが羨む髪は戻ってこない。もう戻ってこないんだ……。
 観客の笑い声だけがどこか遠く、耳にこだまし続けていた。

 大スクリーンには再びパソコンの画面が映っていた。画像加工ソフトの中に美穂の顔写真がある。頭は波平ヘア
のままだった。久恵は楽しそうにマウスを掴んでいる。
「ふふん、ふん♪ さあ、お待ちかねの整形タイムよ~」
 観客は雄叫びを上げた。会場は異常な興奮に包まれている。


39 :新田美穂 19:2009/11/08(日) 23:17:15 ID:O+Mk4XHm0
「基本は……やっぱり豚鼻に整形よね~♪」
 うつろな瞳を見せていた美穂は、釣り糸で持ち上げられるように顔を上げた。大スクリーンに自分の顔が映って
おり、ポインターが手探りするように動いている。
 久恵はポインターを美穂の鼻に重ねると、マウスを上に動かした。画像の中の美穂の鼻が上向きに伸び上がる。
続けて鼻の穴を中心に左右に広げる。今や、美穂の鼻は球根のように低く大きくなっていた。鼻の穴はでかい。
「まだ甘いかな~♪」
 久恵は心底楽しげにマウスを動かし、項目から『広げる』を選んでクリックし、美穂の鼻の上にポインターを
重ねた。カチカチカチ。左クリックの音が響くたび、美穂の鼻は全体的に肥大化した。真正面を向く鼻孔がます
ます広がっていく。
 久恵は私の命より大事な髪を永久脱毛しただけじゃ飽き足らないというのか。
「も、もう充分でしょ!!」と美穂が悲痛の声を上げる。
 画面の中でも自分の美貌が崩されることに耐えられなかった。不快だった。
「はあ? 何言ってんの? 髪なんてなくなってもウィッグでごまかせるじゃん。帽子かぶるだけで美人に戻れる
んだから何の罰ゲームにもならないわ」
 罰ゲーム――。
 そんな軽い気持ちで私の大事な美髪は奪われたのか。信じられない。それに、何? ウィッグをかぶればすむ? 
そんなわけないじゃない。もう大好きな海水浴にも行けないし、温泉にも行けない。風になびく美髪を心地よく
感じることもできない。風が吹くたび、ウィッグが飛んでいかないか戦々恐々としてすごさなきゃいけない。
 作り物の髪で隠せば何も問題がないなんて、信じられない言い草だ。
 心の中に巨大な穴が開き、そこを冷えた風が吹き抜けていくような気分だった。二度と生えない私の髪。誰もが
嫉妬した私の髪が……。


40 :新田美穂 20:2009/11/08(日) 23:18:27 ID:O+Mk4XHm0
 雨に濡れた野良犬より惨めだった。もう優越感を感じることもできない。不細工な女を見て見下し、けなしても、
反撃されるだろう。『うるさいのよ、この禿げ女!』と。私は勝てない。もう口喧嘩で勝てない。禿げ頭の女より、
不細工な女のほうが精神的には数段上だ。今までは、私が厳しい言葉を叩きつけると、底辺の女たちは反論しようと
必死に私の体の粗を探し、何も見つからないと分かるや、悔しげに唇を噛み、すごすごと去っていったのに。
 この頭じゃ、すごすご引き下がるのは私のほうだ。
 そう思ったら涙があふれ出てきた。
「ううっ、ううう、うううっ……」
 美穂は泣きながら必死で禿げ頭を隠そうとした。皮ベルトで拘束された両手は動かなかった。頭さえ、頭さえ
隠せたら美貌が戻ってくるのに。整った完璧な顔の造作はまだあるんだから。
 久恵はますます愉快そうにマウスを操っている。
 画像の中の美穂の鼻孔は一円玉サイズにまで広がっている。二つの穴が真正面を向いているため、醜い醜い
豚鼻になっていた。天然の豚鼻女でもこんなに不細工ではない。
「うわあ、驚き! 豚鼻にするだけで美人が台無しになるね~」
 波平頭の豚鼻女――画像の中の美穂は久恵が美人女優に見えるほどの醜女だった。100人にアンケートをとれば、
全員が久恵を選ぶだろう。そのことが美穂には死にたいくらいのショックだった。今まで見下してきた雑草に
見下し返されるなんて……。
 美穂は変わり果てていく画像の中の自分を見つめ続けていた。
「次は目を小さくしちゃおと!」
 久恵は項目から『すぼめる』を選択し、美穂の目にポインターを合わせた。カチカチカチ。左クリックを一回
するたび、二重のアーモンド形の目と水晶のような瞳が縮小される。それにともなって両目の間隔が開き、
完璧な造作だった顔が平べったくなっていく。
「今度は唇よね。男がキスしたくもなくなるような唇にしてやらなきゃ♪」


41 :新田美穂 21:2009/11/09(月) 00:03:50 ID:O+Mk4XHm0
 今度は再び『広げる』をクリックし、ポインターが桜色の唇に重なる。左クリックの連続。そのたび、美穂の
官能的な唇が膨れ上がり、不細工なタラコ唇になる。
 美穂は変貌していく画像の中の自分を見つめ、恐怖に身震いした。パソコンの加工ソフトの中だから、
どんな人間離れしたブス顔でも簡単に作れてしまう。クリック一つで。マウスの数センチの移動で。久恵は
画像の中で整形しているから、自分がどんなに残酷で非道なことをしているか、実感がないのではないか。
だからフォトショップで写真をちょっと加工して遊ぶような気持ちで整形計画を立てているのでは?
 久恵は次に縦1.5センチ、横5センチの長方形を二つ作り、美穂の眉の上に重ね、中を黒く塗った。
海苔のような眉の完成である。
「面白いね、これ~。きゃはは」
 久恵は高笑いしながら、『広げる』を選択して両頬を膨らませた。ぶりっ子女優が口内に空気を入れて
怒った顔を作っているような膨れっ面。しかし、常にその状態だと不細工なだけである。
 美穂は非現実的な世界に迷い込んだ気分で大スクリーンを見上げていた。変わり果てた自分の顔写真は、
もはや他人の顔だった。しかし、隣に立つ美容整形外科医たちの目の光を――神が与えた最高の美貌に
メスを入れられる興奮に輝く狂った目の光を見たとたん、全てが現実として実感させられた。
 私は本当にあの顔に整形させられてしまうんだ……。
「ふふん、まっ、こんなものかしらね~♪」
 久恵は満足げにつぶやき、決定をクリックした。

 椅子からの拘束が解かれたとたん、美穂は逃げようとした。しかし、周囲に陣取っていた用心棒
みたいな男3人に馬鹿力で押さえ込まれ、手術台に引きずられていった。大の字にされ、両手足は皮製の
ベルトでしっかり拘束された。唯一の逃げるチャンスは生かせなかった。
 美容整形外科医の一人が注射器を取り出し、歩み寄ってきた。
「いやっ! 絶対に駄目。許さないから。絶対に許さないから。あんな顔にしたら殺してやる!」


42 :新田美穂 22:2009/11/09(月) 00:04:38 ID:O+Mk4XHm0
 美穂は叫びながら、拘束ベルトよ切れろとばかりにもがいた。びくともしない。筋骨隆々のプロレスラーでも
引き千切れないかもしれない。
 美容整形外科医二人に顔を押さえつけられた。額にベルトが装着され、数ミリ震わせることも不可能になった。
鼻に注射器が刺さり、麻酔液が送り込まれていく。
 美穂は「ああ……」と絶望の声を漏らした。
「大丈夫だからね~。静脈麻酔は併用しないから意識はあるよ」
 何が大丈夫なのか分からない。自分の顔が不細工に整形される過程を見せつけ、絶望する様を楽しむつもり
なのか。だったら絶対に泣くものか。美穂は精一杯の憎悪を込め、美容整形外科医たちを睨みつけた。
「ベルトで固定したのは、動かれると危ないからなんだよ。ただ、局所麻酔しかしてないから、体が痛みを
想像して血圧があがったり、脈が上がったりして苦しくなると思うけど、まあ、我慢してね」
 軽々しく言い放つと、別の一人がマイクを握り、高々と宣言した。
「ただいまより、鼻尖拳上手術と鼻翼拡大手術を行います!」
 顔の印象を左右する鼻。知り合いの画家には「君の正面像は理想的な黄金分割だよ。横から見ても
非の打ち所がない審美三角のラインをしているね」と褒められた鼻だった。それを醜く整形される?
 想像したとたん、強がりも消えうせそうだった。しかし、美穂は表情に出さなかった。逃れることが
できないなら、相手を喜ばせることだけはしてやるもんか。
 美穂の目には大スクリーンが見えていた。意図的だろう。足側の高い位置に巨大な画面があるため、
仰向けになっていても映像が見える。見えてしまう。
 美穂は思わず目をギュッと閉じた。
 鼻の穴に専用のメスが差し込まれた。中を切開されたのが分かる。軟骨がメスでカットされた。
ツンッと高く整った鼻の骨が専用にノミで削られていく音が耳に響いてきた。
 体の内部を切り刻まれる恐怖に心臓が高鳴った。息苦しさを覚えた。呼吸が乱れる。しかし、痛みは
全く感じられなかった。メスの恐怖が薄れると、自慢の鼻を醜く整形されるショックが胸にこみ上げてきた。


43 :新田美穂 23:2009/11/09(月) 00:05:49 ID:O+Mk4XHm0
 同級生たちがへし折ってやりたいと妄想しては何も方法がなく、歯噛みしてきたであろう高い鼻。そんな
ねたみを感じるたび、容姿端麗で頭脳明晰な自分への自信が高まり、ますます鼻を持ち上げるように顎を上げ、
無能でダサい他人を見下してきた。そんな私の鼻が今の自分の地位同様に低く貶められようとしている。
 尊厳と自尊心の象徴だった鼻を削られ、美穂は再び涙を流した。注射器が刺さり、鼻全体を球根さながらに
大きくする手術が施されている。
 目を開けると、大スクリーンに映る自分の顔のアップが目に飛び込んできた。鼻を持ち上げつつ左右に広げる
ように整形されているため、鼻孔は真正面を向いている。
 観客たちの頭の中が透けて見えるようだった。
 自信満々で堂々としているミス東大の鼻っ柱が折れた――。
 きっと溜飲を下げているだろう。そう思うと悔しくて、悔しくて、悔しくてたまらなかった。
人生で他人に見下されたことなんて一度もないのに。誰もが私を見上げていたのに。
 間を置き、観客が爆笑する声、嘲笑する声が耳を打った。
「豚よ、豚。牝豚だわ!」
「いや、掃除機女だ!」
「ギャハハ、それいいな。ぴったり! 紙くずや埃を全部吸い取ってくれそうじゃね?」
 確かにそのとおりだった。鼻の穴は掃除機の吸引力をイメージさせるほど巨大になっていた。
掃除機の筒を二つ並べたみたいに見える。
 顔を不細工にされたら、もう一生マスクをして生きるしかない。ウィッグで隠せる禿げ頭と違い、
顔そのものを隠して生きなきゃいけないなんて……。
 波平頭の豚鼻女。もしこの姿で人前に出たら、全員の視線が頭と鼻を交互に行き来し、そんな連中は
内心の爆笑をこらえるのに必死だろう。いや、面と向かって痛罵されるかも。そんな光景を想像したら、
もう生きているのが苦痛に思えてきた。


44 :新田美穂 24:2009/11/09(月) 01:02:11 ID:WP2bY2tG0
「どう、美穂。少しは私たち不細工の気持ちが分かった?」
 久恵が言った。余裕の笑みを浮かべながら自分を『不細工』だと卑下できるは、目の前に自分以下の
醜い女がいるからだろう。事実、もし久恵の顔と今の自分の顔を取り替えられるなら、迷わず取り替える
だろう。唇と輪郭と目は残しておきたいが。
 美穂は瞳に殺意を込め、久恵を睨み返した。
 美容整形外科医たちは美穂を豚鼻に整形し終えると、次の手術に移ろうとした。そのときだった。
観客の男が大声で叫んだ。
「どうせなら歯も全部抜いちゃえよ!!」
 一人の観客の提案は瞬く間に広がり、他の観客も「そうだ、そうだ」「賛成!」と声を上げる。
「全抜歯希望!!」
 観客が声を揃え、手拍子をはじめた。
「抜歯! 抜歯! 抜歯! 抜歯! 抜歯! 抜歯!」
 美穂は唖然としながら、その地鳴りのように異様な叫びを聞いていた。久恵も気圧されたようだったが、
名案を思いついたらしい、すぐに意地悪そうな笑みを浮かべた。自分にないものを全て持っている女に――
美貌、スタイル、学歴、頭脳、若さ、金、将来を持っている女に嫉妬し、その女を徹底的に貶められることに
無上の喜びを見出している笑みだった。
「せっかくなんでみなさんの期待に応えちゃいましょうか。美穂の歯を抜いてみたい希望者を募って、
抽選して一本ずつ抜歯させてあげるってのはどう?」

 観客の半数が総立ちになり、興奮の叫びを上げた。
 美穂は恐怖に見開いた目で会場を見回していた。歯を抜く? 歯を? 幼いころに他界した母の言葉が耳に
よみがえる。『歯は一生ものなんだから大事にしなさい。朝昼晩、毎日磨くのよ。虫歯で抜けたらもう二度と
生えてこないんだからね』冗談でしょ。何を考えてるの?


45 :新田美穂 25:2009/11/09(月) 01:03:25 ID:WP2bY2tG0
 美穂は顎と歯ぐきに麻酔注射をされていた。口はだらしなく意思とは無関係に開いている。
久恵は歯の数を数え、31本――1本は久恵に踏み折られた――と知るや、抽選券を作製し始めた。
 美穂は無駄な抵抗と知りながら、「うー、うー、うー」と喉からうめき声を出した。
 15分かけて抽選が行われた。希望者は20000人の観客のうち3000人。信じられない。
3000人? これだけの人間が自分の美を壊してやりたいと思っているのか、イジメのように場の
雰囲気に流されているのか。前者だったらショックだと思った。なぜなら、希望者の半数は男だったから。
男だったら誰でも、神から授けられた私の美に感動し、それを守りたいと思うものだと思っていたから。
 選ばれた男は13人。女は18人。
 美容整形外科医が歯の抜き方を懇切丁寧に説明し始めた。選ばれた男女は目を興奮に輝かせ、
鼻息も荒く、素直に「はい。はい。はい」とうなずいている。
 一人目は茶髪の女子高生だった。必死で化粧して底辺の男に何とか「可愛いね」と言われる程度の容姿だ。
目は陰湿に澱んでいる。男に冷たくされるたび、毎夜毎夜、ネットの掲示板に女優の悪口を書き込んで
鬱憤を晴らしているタイプの少女。抜歯鉗子(歯を抜くための専用ペンチ)を握り、開いたり、閉じたり
してみせている。怯えさせようとしての仕草だろう。分かっている。意図は分かっている。だから
決して怯えを見せたくなかった。
 しかし、女子高生のニッと笑った顔を見ると、自分の瞳に恐怖の影が躍っていたことが分かった。
何よ、煙草のヤニで黄ばんだ汚い歯をしているくせに。歯並びも悪いくせに。こんな状況じゃなかったら、
私を見つめては自分の惨めな容姿に打ちのめされている程度の人種のくせに。
 美穂が歯列矯正をしたのは小学校のころだった。そのころから自分の美を自覚していた。男子たちが自分を
見る目を意識し、見られる側の人間として行動するようになった。中学に入学したときにはホワイトニングをし、
透き通るような真っ白の歯を得た。完璧な歯並びと白さ。高校のころには、歯磨き粉のCMに起用したいと学校を
通じて依頼があったほどだ。


46 :新田美穂 26:2009/11/09(月) 01:04:21 ID:WP2bY2tG0
 CMに出演してからは、男が何でも買ってくれるようになった。底辺の女のように「奢って」などと
無粋な台詞を口にしなくてもよかった。商品を一瞥しただけで率先して買ってくれた。お礼は笑顔で充分。
股を開くしか代価を支払う方法がない女と違い、笑顔で歯を見せると、男たちは100万ドルの価値を
実感したように興奮し、小学生のようにはしゃいだ。
 自慢の完璧な歯だった。試合では顔を傷つけさせたことは一度もない。久恵に歯を一本折られたときは、
リングに穴が開いて奈落まで落ちていくようなショックを覚えたが、高価な差し歯で泣く泣く我慢しよう、と
漠然と考えていた。それなのに歯を全部抜く? 冗談じゃない。絶対にいやだ。
「さあー、ど、れ、に、し、よ、う、か、な、て、ん、の、か、み、さ、ま、の、い、う、と、お、り」
 女子高生は楽しげに歌い、歯を1本1本吟味していった。
「前歯に決まり!」
 美穂は瞳を下に向けた。抜歯鉗子が口内に挿入されたのが見えた。
「うー、うー、うーーー!!」
 上顎が下方に引っ張られる感覚があった。
 やめて、やめて、歯はやめてよ! 生えないのよ、抜いたらもう生えないんだから!
 口の中にクポッという何とも奇妙な音がこもった。耳からというより、体の中から聞こえた。
女子高生が高々と腕を掲げる。 極上の真珠のように輝く白い歯が抜歯鉗子に挟まれていた。
歯の後ろ側は『v』のように二股になっていた。根元から抜けている。
 女子高生は農家の体験学習で見事に大根を引っこ抜けて喜んでいるような顔ではしゃいでいた。
 彼女にとっては単なる罰ゲームを実行しただけだろう。場の空気に同調し、深く考えず、ただ
面白そうだからやってみた、程度の気持ちで歯を抜いたのだろう。でも、私の歯なのよ? 大事に
大事に磨いてきた私の歯なのよ? 一時的な楽しみのせいで私はもう一生歯抜け。20歳の大学生が残りの
人生を差し歯ですごさなきゃならない気持ちが理解できる? できないでしょ。できるはずがない。
理解できるなら最初からこんな残酷なことするはずないもの。


47 :新田美穂 27:2009/11/09(月) 02:02:53 ID:WP2bY2tG0
 人生は一度きりしかない。だからこそ、最高の自分で最高の毎日を生きたいと思うものなのに。なのに
人為的な力によって人生を貶められる――神様の贈り物である美貌を人為的に壊される――こんなのって
あんまりじゃない。
「ざまあみろ!」
 女子高生の吐き捨てた言葉は胸に食い込んだ。
 私がそんなに憎いの?
 次の瞬間、女子高生は真珠の歯を地面に落とし、ヒールで踏みつけた。歯が砕ける音が響いた。なぜか歯を
抜かれた以上にショックを受け、打ちのめされた。
 女子高生は長年の夢が現実なったというような顔でフフンッと鼻で笑った。
 大スクリーンには、前歯が2本もない歯抜けになった滑稽な顔が映っていた。
 二人目は男のようだった。低い声が言う。
「ホント、ざまあみろだよな。いい気味すぎて笑っちまう。実は、さっきお前の全抜歯提案したの、俺なんだよね~。
名案を出したから特別に抽選抜きだってさ。ラッキー。役得、役得」
 男の顔に見覚えがある気がした。見ると、青色のフェイスマスクを鼻にしている。日韓Wカップで
日本のサッカー選手の誰かが装着していたようなマスクだった。鼻骨を骨折しているのだろう。
 骨折――?
 あっと思った。思い出した。10日ほど前、バーで声をかけてきた男だ。ロレックスの時計を貰った。
確か、殴りかかってくる男の顔面をカウンターに叩きつけ、鼻をへし折ってやった。
 あのときの男か! 躊躇なく女に殴りかかる最低男!
「ククク。どうだよ? 今も高学歴、高収入、高身長のハンサムを望んでんのかよ? どうかなあ。
今のお前じゃ、デブの中年オヤジでも逃げ出すんじゃね? 金貰っても抱きたくねえよな。まあ、
全頭マスクでもかぶって肉便器に徹しりゃあ、ヤッてくれるかもしんねけどな」
 美穂は屈辱に打ち震えた。男の言い分がなまじ当たっているだけになおさら悔しかった。


48 :新田美穂 28:2009/11/09(月) 02:08:35 ID:WP2bY2tG0
「あ~あ、こんなになっちまって」
 男は美穂の額から頭頂部を手のひらで撫で上げた。ツルツル。美穂は愕然とし、パニックに襲われた。
大スクリーンを通して自分の頭を見ていたときとは違う。頭に伝わってきた滑るような感触。ゆで卵でも
撫でたような感触。ツルツル。それは本来は髪のあるべき部分が完全に禿げ上がっている証拠だった。
実感してしまった。毛根すら存在しない波平頭にされたことを。自分の前頭部から後頭部は完全な無毛で
あることを。
 美穂は眉を八の字にしながらも、狂ってしまいたい衝動と必死で戦った。髪、髪、髪、髪。私の髪。
失ったものの大きさを意識するたび、胸が痛くなり、交感神経が緊張し、全身がカッカした。
ドライアイスの塊が血中を流れているような感覚だった。自分の半身が殺されたらきっとこんな
動揺とパニックとショックを味わうのだろう。
「何、何? もしかして悲しんでんの? まだまだこれからだよ~、美穂ちゃん」
 異性に『ちゃん付け』で呼ばれたのは初めてだった。屈辱を感じた。もちろん、初対面で馴れ馴れしく
『ちゃん付け』してくる男は大勢いた。しかし、『ちゃん付け』は軽く見られている証拠である。
冷淡な言葉で不快を表したら、誰もが動揺し、二度と『ちゃん付け』をしなくなった。
 私はいつから男に低く扱われるようになってしまったんだろう……。
 認めたくはないが分かっていた。美を奪われたときからだ。顎が動かせるなら歯を噛み締めたい。男は
その歯を奪おうとしている。
「うー、うー、うううー!」
 抗議の声は喉を通り、2本の前歯が欠けた口を通って出てきた。男はゲラゲラ笑いながら抜歯鉗子を
掲げて見せびらかし、明らかに美穂の瞳が恐怖に揺れる様を楽しんでいた。
「鼻の骨折と歯一本じゃ割に合わないけど、まあ、慰謝料代わりに貰っといてやるよ」


49 :新田美穂 29:2009/11/09(月) 02:12:43 ID:WP2bY2tG0
 ふざけないでよ! 日が経てば治る骨折と、一生生えてこない歯一本が同価値? そんなわけないじゃない。
あんたの50点の顔の鼻と私の完璧な顔の鼻でも、ダイヤの指輪と模造品くらいの違いがあるんだから!
絶対に許さない。もし私の歯を抜いたら、今度街中で会ったとき、肘で全部の歯を叩き割ってやる!
「怖い顔すんなって。ブスがますますブスになんぞ」
 美穂は愕然とした。ブス? 生まれてから一度も言われたことがない言葉だ。嫉妬や恨みの感情を持っている
馬鹿たちから浴びたのを除いては。
 心が傷つけられたのが分かった。以前なら底辺の人間の戯言だと聞き流し、逆に自分の完璧な容姿を実感して
笑っていた。でも今は違う。禿げ頭で豚鼻で歯抜け。大スクリーンに映る顔からは、女としての美しさを微塵も
感じられない。だからこたえる。ブスという残酷な単語が胸の奥に突き刺さる。
 男はついに美穂の口に抜歯鉗子を突っ込んだ。下の前歯を挟んでいるのが分かる。
「あええー」
 やめてーと声を上げたつもりだった。男は歯を抜きやすいように美穂の顎を鷲掴みにした。
そして引いた。力いっぱい。歯が抜けた。根元から。

 抽選に当たった観客たちが列を作り、一人一本ずつ歯を抜いていった。一人が抜くたび、美容整形外科医が
手馴れた動作で止血し、口内に溜まった血を布に染み取らせた。
 30分後、美穂の桜色の唇は梅干のようにすぼまり、老婆のような容貌になっていた。顔だけ見たら、
禿げ頭のおじいさんにしか見えない。完璧なラインを形成している顎や頬も、二重でアーモンド型の大きな
目も、水晶のような瞳も、波平頭と豚鼻と梅干唇のインパクトの前では役には立たない。
 歯ぐきの麻酔が解けると、美穂はつぶやいた。
「ひょ、ひょんにゃの……ひゃんわりよ……」
 こんなのあんまりよ、とつぶやいた声は信じられない音だった。美穂は突然言葉を一言も喋れない人間に
なってしまったような恐怖を覚えた。声は出ているのに意味をなさない。自分は猿か何かなの? 未知の
言語が飛び交う世界にただ一人迷い込んだみたいだった。


50 :名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 02:39:40 ID:f2hnaWU60
頭を撫でられるシーンが最高にエロいね。
ツルツル頭で感じるようになるといいかも。
隠れた性感帯らしいから。
感触の描写も良いですなあ。

歯が抜かれて、まともにしゃべれないのもすごく興奮した!
欲を言えば、髪の次は歯にして、その次に鼻というのがよかったかもしれない。
でも最高。

未だに鼻っ柱が強くて心の中で毒づいてたり性格悪さが直ってないところもいいね。
このノリでいってほしいなあ。

眉だけど、個人的にはアートメイクより全剃り脱毛の方が好きかも。


51 :新田美穂 30:2009/11/09(月) 02:43:29 ID:WP2bY2tG0
 私の声が……私の美声が……。
 得意の英語やフランス語は? もう喋れないの? 授業中、私が口を開き、英文を一つ発しただけでも
クラス中の視線が口元に集まり、天使の祝福のように聞こえる声に誰もが聞き入った。私が頼みごとをすると、
男どもは誰もが海の精セイレーンに引き寄せられる船乗りみたいに従った。
 自慢の声だった。将来は一流商社で持ち前の語学力を生かし、海外で活躍しようという明確な目標を持っていた。
この美貌と美声と頭脳があれば、上流階級の人間との食事もさぞ絵になるだろう、と。
 なのにまともに喋れなくなってしまった。自分の頭脳まで貶められた気がした。東大に現役で合格した私が
日本語も満足に喋れないなんて。言葉を忘れた人間みたいだ。
 訴えたい怒りや絶望の思いは胸に渦巻いているのに、赤ん坊みたいに舌足らずな情けない自分の声を聞きたく
なくて何も言えなかった。猿轡などで強制的に声を封じられたのではなく、喋りたいのに自分の意思で喋ることが
できない――これは想像以上にこたえた。
 美穂が拘束されている手術台の横には、まだ青いフェイスマスクの男が立っていた。
「よお、よお、何だよ、何でだんまりなんだ? つまんねえじゃん」
 私はあんたを楽しませるために存在しているんじゃない!
「まあ、いいや」男は鼻で笑うと、煙草に火をつけ、一服した。「なあ、お前も吸う?」
 無視を決め込んだ。一言も話す価値のない男だ。相手にするな。
 男は「吸うって言っても、鼻からだけどな」と言った。天井を向いている大きな鼻孔に煙草が挿し入れられた。
男が煙草から指を離した次の瞬間、直径1メートルのマンホールの穴に直径30センチの丸太が落ちるように
煙草が滑り落ちた。赤く燃える煙草の先端が視界から完全に消えた。
「ふひゃあああああああっ!!!」
 大きな鼻孔を滑り落ちた煙草は、完全に鼻の奥まで落ち、粘膜を内側から焼いた。美穂は激痛に咽び、
「ふひい、ふひい、ふひい」と鼻から息を噴き出した。その惨めで滑稽な姿に会場中が大爆笑した。いくら
鼻息を荒くしても、空気は巨大な鼻孔から噴き上がるだけで、煙草は飛び出してこない。熱い、熱い、痛い!


52 :新田美穂 31:2009/11/09(月) 02:44:58 ID:WP2bY2tG0
「わりい、わりい。鼻の穴がでかすぎて落ちちまったな」
 再び会場が大笑いした。美穂は気にするどころではない。
「ひょって、ひょって! ひゃついの!!」
 ふひい、ふひい、ふひい。
 パニックだった。煙草が鼻の穴から一生取り出せない気がして怖かった。
 懸命に鼻息を上げ、煙草を出そうとした。打ち上げロケットみたいに飛び出させようと必死になった。
代わりに鼻水がプチュッと天高く飛び上がり、ぺチャッと頬の上に落ちた。高性能の集音マイクが
その音を拾って会場に響かせると、物凄い爆笑が沸き起こった。
 額には大粒の汗が噴き出ていた。どれくらいの時間が経っただろう。1分か、2分か。煙草の火は
鼻水で消火されたらしい。鼻孔の奥には、数センチの煙草が残ったままになっている。
「今度はちゃんと吸わせてやるからな」
 男は次々に煙草に火をつけ、片方の鼻の穴に4本ずつ煙草を押し込んだ。今度は滑り落ちなかった。
美穂は天井を向いた豚鼻に8本の煙突を立て、鼻から煙を吸い込んでは、口から吐き出していた。
 会場は喝采を送らんばかりの爆笑に包まれた。
「機関車だ!」
「最高ね!」
「そんなに排気ガスを出すなよ~」
「馬力ありそうだよな。八気筒エンジンじゃん」
「キャハハハハ!」
 信じられない屈辱と恥辱だった。底辺のお笑い芸人でもこんな惨めなまねはしないだろう。数時間前の自分
からは――誰もがうらやむ美髪と美貌を持っていた自分からは想像もできない。数時間前の自分なら、
バラエティに出演しても役どころは決まっていた。最上段の綺麗な椅子に座り、ときおりカメラに向かって
微笑を浮かべてやる。視聴率はそれだけで取れる、そう確信していた。
 なのに今の自分は……。



62 :新田美穂 32:2009/11/10(火) 11:48:28 ID:V5qY5z820
 煙草が短くなり、鼻の周囲が焼けそうになるまで美穂は煙草責めから解放されなかった。
 フェイスマスクの男は見世物小屋で愉快な芸を楽しんだように満足した顔で観客席に戻っていった。
 美穂は涙に霞む瞳で久恵のほうを見た。もう許して、と眼差しで訴える。
 久恵は高校生らしき男女数人と話していた。身振り手振りで何かを言い合っている。久恵は何かを
言われ、うなずくと、手術台に歩み寄ってきた。
「整形の続きをしようと思ったけどさあ、あんたに恨みがあるって子たちが来てるのよね~。生中継見て
渋谷から駆けつけてきたんだって。ガードマンと押し問答してまで入ってきたの」
 高校生グループに見覚えはなかった。金髪の少年少女が私に恨み? 一体何なの?
「覚えてねえの?」男子高校生が言った。「1年くらい前さ、俺が声かけたらさ、肘鉄食らわせたよな。
ちょっと食い下がっただけなのにさ。仲間には金的蹴り。あんたをナンパしてのされるカッコわりいトコ、
待ち合わせ中だった彼女に見られて振られるしさ、本当、お前、最低の女だよ」
 記憶にない。叩きのめした礼儀知らずの馬鹿男たちの顔なんていちいち覚えていない。
 次に女子高生が言った。
「彼氏があんたの顔をテレビで見るたび、褒めるんだよね。超美人だよな、とかさ。この前なんて、
お前もあの10分の1でも美人ならいいのにな、なんてつぶやいたのよ」
 久恵が楽しげに言う。「みんなあんたに恨み晴らしたいって言ってるんだよね。叶えさせてあげてね」
 金髪の女子高生は顔側に歩み寄ってくると、美穂の大きな鼻の穴を覗き込んだ。
「鼻クソがすげえじゃん! 綺麗にしてやるよ。これ、用意してきたんだよね~」
 眼前に突き出してみせたのは、毛が固そうな歯ブラシだった。
 女子高生は美穂の鼻孔に歯ブラシを突っ込んだ。硬質のブラシが粘膜を削る。激痛が渦巻いた。目から
強制的に涙が流れ出た。鼻水があふれ、グッチャ、グッチャ、ニッチャ、ニッチャという粘着質の音が大きくなった。
鼻水が掻き混ぜられているのが分かる。彼女が歯ブラシを乱暴に抜き挿しするたび、ブラシに絡まるドロッと
黄みがかった半固形物が見えた。以前の鼻なら真下にブラシが抜けただろうが、今は鼻孔が真正面を向いている。
ブラシの様子がよく見える。見えてしまう。


63 :新田美穂 33:2009/11/10(火) 11:49:56 ID:V5qY5z820
「ひひゃい、ひひゃいひゃらひゃめへ!!」
「何言ってるか分からないでちゅよ~、日本語で喋ってくだちゃいね~」
 赤子をあやす口調だった。こんな頭の悪そうな年下の女子高生にまで馬鹿にされるなんて。
 女子高生は豚鼻の穴から歯ブラシを抜き出した。痰のように黄色く白っぽい粘液がブラシに絡みついており、
腐った生卵のようにびろーんと尾を引いている。
「うわっ、きたね!」
 会場の大スクリーンに歯ブラシのアップが映し出される。嫌悪感たっぷりの「うわあ」という観客の声が耳に
突き刺さった。美穂は巨大な画面から目をそらした。信じられない屈辱だった。昨日までは、自分の完璧な
容貌とそのイメージを保つため、下品に見える行為は決して人前でしなかった。ゲップ一つでもしようものなら、
美貌の女神も普通の人間に堕ちる。鼻をすすり上げる行為だけでも、自分の作り上げたイメージが壊れ、
自分を崇拝する人間を失望させると思っていた。
 なのにこんな……。
「一度洗わなきゃ使えねえ!」
 女子高生は、梅干のごとくすぼまる美穂の桜色の唇に歯ブラシを近づけた。
 意図を悟り、美穂は、いやっ、と口を閉じた。絶対に口内に入れさせる気はなかった。歯ブラシが梅干唇の
真ん中に突き刺さる。歯を食いしばって侵入を阻止したともりだったのに、歯ぐきと歯ぐきの合間から汚い
鼻水だらけの歯ブラシが押し込まれた。歯が一本もないせいで顎を閉じても侵入を防ぐことができなかった。
 歯の感触を全く感じることができない舌が口内で暴れた。塩辛いような、しょっぱいような味が舌に広がり、
吐き気を催す腐臭が口内から鼻孔をついた。唾液と鼻水が混じり、淫靡で粘着質の音が響いた。
 やだ、気持ち悪い……。


64 :新田美穂 34:2009/11/10(火) 11:52:37 ID:V5qY5z820
 女子高生は、歯が抜けて凹凹凹凹凹凹状態の歯ぐきににじりつけるように歯ブラシを動かした。
 振られた不細工女が惨めに男の膝にすがりつき、鼻水と涙で顔をグチャグチャにしながら懇願する――そんな
光景を見るたび、嫌悪を催したものだった。泣き顔が必要なとき、涙は綺麗に流さなくてはいけない。そう
思ってきた。だからこんなふうに鼻水を噛み締めるはめになるとは、全く想像したこともなかった、今日までは。
 女子高生は歯ブラシを抜き取ると、口をクチャクチャと鳴らし、唾を溜め、美穂の顔の上で唇から垂らした。
汚らしい液体が重力に従って伸びてくる。
 美穂は顔を振って避けようとした。しかし、額を固定するベルトのせいで無駄な足掻きに終わった。
 天井を向いた大きな鼻孔は、二つの筒型のゴミ箱みたいだった。女子高生の口から垂れた汚物が鼻の穴に落ち、
悪臭を伴って鼻の奥に纏わりついてきた。
やだ、サイテー。汚い。
美穂は鼻から飲み込みたくなかったから、鼻息を噴き上げた。煙草を飛ばそうとしたときと同じく、唾と鼻水の
混合液が飛び上がり、宙で停止し、顔の上にペチャッと落ちた。女子高生は腹を抱えて笑っている。
「わ、わたしさあ」と笑いながら言う。「あんたみたいにさ、髪の毛先から爪先まで完璧に手入れが行き届いてますよ、
みたいな顔して生きてる女、大嫌いなんだよね」
 自分の人生が冴えないのは、自分自身の努力不足でしょ。努力して最高の人生を掴んでいる人間に嫉妬するなんて
お門違いなのよ!
「毎日手入れしてんでしょ、その眉。綺麗に整ってるもんね」
 当たり前でしょ。眉頭と眉山と眉尻が最も美しく優雅に見えるように鏡で研究し、アイブローシザーズや専用の
ブラシで完璧に整え、一本でも余分な毛は見逃さずアイブローニッパーズで丁寧に抜いているんだから。
あんたみたいに油性マジックで充分な顔じゃないのよ、私の顔は。
 女子高生は「何かムカつく顔」と言い、バッグからI字剃刀とシェービングクリームを取り出した。


65 :新田美穂 35:2009/11/10(火) 12:07:39 ID:V5qY5z820
 彼女の狙いを知り、美穂は両目を剥いた。まさか剃る気? 冗談でしょ。眉はメイクの成否を左右する
重要なポイントなのよ。一ミリの違いでも美が変わってくるんだから。第一印象は眉で決まる、それが美穂の
持論だった。なのに眉を剃られたら……。
 宇宙人みたいな顔になってしまう。
「カワイクしてやるよ!」
 女子高生は美穂の右眉にシェービングクリームを軽く噴きつけた。I字剃刀が眉に触れた。
「ふひゅうう……!!」
 斜線を描くようにI字剃刀が動いた。銀色の刃が盛り上がったクリームをすくい、サラブレッドのたてがみを
思わせるほど優雅に流れる黒い毛を絡め取りながら眉が剃られた。弓なりに整った眉は半分になっていた。
 ひどい。平然と剃るなんて。
 女子高生は再びI字剃刀を滑らせ、残り半分も剃り落としてしまった。タオルでクリームを拭うと、色白の肌が
あらわになった。右眉は完全に剃られていた。
 次に女子高生が取り出したのは、眉用のピンセットだった。
「左眉は丁寧に抜いてやるよ!」
 ピンセットが一本の眉毛を摘む。大スクリーンにその模様がアップで映っていた。一思いに引き抜くのではなく、
痛みを与えるようにジワジワと引っ張り上げていく。毛を引っ張られ、皮膚と毛穴が小山のように盛り上がった。
痛い! 眉が抜けた。毛の根元には白っぽい毛根が付着している。女子高生はピンセットに息を吹きかけ、フッと
毛を宙に舞わせた。
 1本ずつ十数本を抜かれた。眉を抜かれた部分の皮膚は赤くなっていた。針で突っついたように血の粒が
プクッと盛り上がっている。
「次はまとめていってみよう!」
 女子高生は楽しげに笑うと、久恵からペンチを受け取った。眉毛を容赦なく十数本まとめて挟む。
グッと力を込めると、毛の束と一緒に皮膚が引っ張られ、まぶたが引き千切られそうな痛みが襲ってきた。


66 :新田美穂 36:2009/11/10(火) 12:10:11 ID:V5qY5z820
「ひひゃいっ!!」
 思わず“音”が出た。
「あれ~、抜けないなあ。強情な毛ね!」
 女子高生が全身の力を使って引っ張った。ブチブチブチッ! 抜けるのではなく、根元から千切れた。
美穂は「ふぎゅひゃああああ!」と絶叫した。歯が一本もない惨めな口内を晒しながら。
 結局、毛抜きの拷問は10分以上続いた。
 両眉がなくなってしまうと、久恵が現れて『ドイツ製 超強力永久脱毛剤』を塗りこめ、毛根を殺してしまった。
両眉を失った顔が大スクリーンに映っている。観客が喝采を送った。
 本当に宇宙人みたいな顔になっていた。美しかった自分の顔だとはとても思えない。側頭部に短い黒髪を残し、
前頭部から後頭部まで見事に禿げ上がり、球根のような豚鼻があり、顔の真ん中に二つの大きな黒い穴が開いている。
桜色の唇は口内に吸い込まれるようにすぼまっている。眉がないため、表情が死んでいる。殺されてしまった。
眉の微細な動きは人間の感情を瞳と同じくらい伝えるのに。眉尻を寄せて不快を示すことも、眉頭を吊り上げて
怒りを表明することも、八の字にして切なげに相手を見つめることもできない。もうできなくなってしまった。
 スタイルは完璧なのに――チューブトップに包まれた88センチの美乳とくびれたウエスト、ミニスカートから
伸びる太もも――、顔の美貌は破壊され尽くしてしまった。アンバランスだった。精巧なモデルのマネキンの顔を、
横だけに黒髪の生えた子豚の顔にすり替えたような印象がある。
 美穂は現実を否定したくてかぶりを振り続けた。

 次に逆恨みによる報復を実行したのは、別の女子高生だった。目をつけたのは、久恵のローキックを受けて
赤く腫れている左の太ももの反対――右の太ももだった。
 ペンチの角を用い、上質の布地に釘抜きで引っかき傷をつけるように肌に傷をつけた。色白で透き通る太ももには、
赤い傷で乱暴に『ブス女』『ハゲ女』と書き殴られていた。自慢の肌を蹂躙され、美穂はますます打ちのめされた。


67 :新田美穂 37:2009/11/10(火) 12:11:36 ID:V5qY5z820
 傷はいつ治る? 1週間? 2週間? もし傷跡が残ったらどうしよう、クラブのブラックライトに当たったら
浮き上がるくらい傷跡が残ってしまったら。
 横山ノック状態に髪と眉を永久脱毛され、鼻を豚同然に整形され、歯と発音を奪われたほうが何倍も――いや、
比べものにならないくらいショックなのに、肌の傷程度でショックを受け、悲しみ、不安になっている自分が
滑稽だった。
 もしかすると、顔の美貌を取り返しがつかない状態にされてしまったから、他の部分だけでも、乳房や肌だけでも
綺麗なままで残したい、と思っているのかもしれない。顔を崩された以上、レースクイーン顔負けでラウンド
ガールが同じリング上で嫉妬するこのスタイルだけが唯一のプライドのよりどころなのだ。だからこそ、肌に
傷をつけられたら、髪や歯や鼻に比べれば小石に躓いた程度のことなのにこんなに悲しい気分になるのだ。
「じゃあ俺は爪ね」と男子高校生。「そんなものじゃ、物足りないけど」
 美穂は男子高校生を睨みつけた。私の爪は、泥団子をこねるのが似合うようなあんたの爪とはわけが違うのよ。
爪の美と健康を保つための栄養素をサプリで摂取し、2日に1回は爪磨きで磨き(普通は1度磨けば1週間は美しさ
を保てる)、透明の宝石を溶かした液体で表面をコーティングしたみたいな艶と輝きを維持しているんだから。
「でもま、他に奪えそうなとこないし、仕方ねえか」
 男子高校生は残念そうに言い、ペンチを握って歩み寄ってきた。
 大スクリーンでは、左足の親指の爪がペンチに挟まれている映像が映し出されていた。足先のドアップだった。
ネズミをいたぶる猫のようにじっくりと、少しずつ爪が反らされていく。爪の悲鳴が聞こえるようだった。
神経を切断されそうになっているような激痛が指先から駆け抜けた。
「ふぁ、ふぁか! ほ、ほうひゃめらしゃい!!」
 口から”音“を発して抵抗する。しかし無駄だった。皮膚を剥ぐように爪が剥がれた。全神経が足の指に集まり、
激痛が全身を駆け巡って頭にまでのぼってきた。美穂は声にならない悲鳴を上げた。
 大スクリーンに映る足先。爪が剥がれた部分は、真っ赤なザクロでもすり潰して塗りたくったみたいに見える。
見るからに痛々しく、事実、激痛にピクピクと痙攣していた。




73 :新田美穂 38:2009/11/11(水) 22:46:55 ID:sdDvtS9q0
 美穂は肩で息をしながら再び男子高校生を睨みつけた。彼の頭の中には、当時の私の姿が――しつこいナンパに
肘鉄砲で応えた私の姿があるに違いない。
「すごいね~」とショートカットの女子高生。「私にもやらせてよ!」
 何がすごいのか分からない。爪を引き剥がされた光景を見てもひるむことなく、自分もやりたいと手を挙げる
神経が信じられない。私にそこまでの恨みがあるわけ?
 女子高生がペンチを受け取ってやってきた次の瞬間、心臓が止まるかと思うほどの激痛が走った。
「ふぎゅあああああっ!!」
 女子高生は、爪が剥がされた親指をペンチで挟み、上下左右に揺さぶっている。指のザクロがささくれ立つような
光景が大スクリーンに映っていた。
「あっ、ごっめーん。間違えちゃった~。てへ♪」
 美穂は涙に霞む瞳で女子高生を睨んだ。
 そんな容姿でカワイコぶったって誰も喜ばないわよ!
 女子高生は、小指の輝く艶やかな爪をペンチで挟んだ。瞬間、美穂の体は恐怖に硬直した。先ほどの爪を
剥がされた激痛が実際に痛みをともなってよみがえってきた。怖かった。泣き叫びたいくらい怖かった。
 口を閉じ、叫ぶものかと決意したのは、生まれつきのブス女に――しかも年下の女に馬鹿にされ、
笑い者にされたくないと思ったからだった。
 一ミリ、一ミリ、ゆっくりと、ゆっくりと、持ち上げるようにして爪を反らし始めた。美穂は頬を震わせ、
いつ一気に剥がされるのか、覚悟を決めては肩透かしを食らわされ、詰めていた息を何度も吐き出した。
爪が目に見えて反り始めると、激痛が指先から足首まで駆け巡った。
 そして、小指の爪も引っぺがされた。
 美穂は絶叫した。
 全ての足の指の爪が剥がされたときには、激痛に耐え切れず、尿を漏らしながら失神していた。


74 :新田美穂 39:2009/11/11(水) 22:48:37 ID:sdDvtS9q0
 高校生の少年少女が満足して引き下がり、美穂が意識を取り戻すと、観客が口々に叫びだした。
「生ぬるいよ!!」
「目を狐目にしてやれよ!!」
「自慢のおっぱいも貧乳にしちゃえ!」
「それで逆に乳首を肥大させたら面白いんじゃないの~」
「きゃははは、それって超ウケる~」
 美穂は愕然とした。ひ、ひどい。何でそんなことが言えるの? みんな、私っていう一人の人間の人生を
考えたこと、あるの? 面白半分で好き勝手言ってるけど、そんなふうに整形をされてしまう私の悲しみや
絶望は考えたことがあるの? 血の滲むような努力で美を磨いてきた体なのよ。生まれながらに神から与えられた
つぼみが薔薇に育ち上がったのは、毎日のたゆまぬ努力の成果なのよ。それを、それを、それを台無しに――
滅茶苦茶に、踏みにじってしまう気なの?
 冗談じゃない。私の胸をどうこうする? ありえない。貧乳は女として劣性な証拠だという持論がある。
女として遺伝子が劣っている証だ。小さな胸は人生の敗北者だと思うし、娘に遺伝したら可哀想だから
貧乳女は結婚すべきじゃないとさえ思っている。病気か障害の一種みたいなものだ。第一、貧乳の女って
心も貧しくない?
 だから貧乳の女は哀れだと思う。そんな女の前を通るときは、88センチで完璧なふくらみを持つ美乳を
強調するように通り過ぎたものだった。優越感。それが人生の楽しみでもあった。温泉も好きだ。非の打ち所の
ない自分の体を同性に見せびらかせるから。欠陥品の女の嫉妬と羨望を一身に浴びられるから。勝ち組には
負け組みを見下す権利があると思う。
 絶対、私の完璧な体には誰にも手出しなんてさせない!


75 :新田美穂 40:2009/11/11(水) 23:02:06 ID:sdDvtS9q0
 しかし会場の空気は異常だった。試合の敗者にはどんな罰や刑でも許される、そんな空気が生まれていた。
むしろ、敗者は二度と地べたから這い上がれないように貶めてやれ、とさえ思っているかもしれない。
 美穂は好き勝手言う連中を軽蔑し、睨みつけた。
 久恵は「リクエストも飛び交ってるし、ちょっと観客たちの意見を聞いてみましょうか」と言うと、
パソコンを操作し、大スクリーンに文章を映し出させた。


①『整形計画通り、美穂の目を吊り上った狐目に整形してやるor目くらいは大きいまま残しておく』
②『整形計画通り、美穂の唇に脂肪を注射してめくれたタラコ唇にしてやるor唇くらいは綺麗なままにしておく』
③『整形計画通り、美穂の頬に脂肪を注入して発酵パン状態にしてやるor輪郭くらいは美形のままにしておく』
④『脂肪を吸引して、美穂の型崩れしない88cmの美乳を貧乳化してやるor女の象徴の一つくらいは許してやる』
⑤『美穂の乳首に脂肪を注入して、人前で二度と裸になれない肥大化乳首にしてやるor可哀想だから許してやる』


 久恵は大勢のスタッフに命じて投票用紙を観客たちに配らせた。
「さあ、美穂。あんたの未来は観客たちが決めてくれるわ。もうあんたの体はあんたのものじゃないのよ。
あんたの体を好きにする権利は観客にあるの。せいぜい許してもらえる項目が一つでも多くあるように
必死で祈っておくのね」


76 :新田美穂 41:2009/11/11(水) 23:03:57 ID:sdDvtS9q0
 美穂は観客を見回した。
 今の状態で開放されたら”最悪“までは堕ちないはず。髪は高級ウィッグをかぶろう。眉は描けばいい。
歯は総入れ歯にする。最近のものは本物と見まがうばかりらしいではないか。太ももの傷は癒える。
足の爪は伸びる。豚鼻は――どうだろう。分からないが、希望的に見るなら、整形で治せる可能性はある。
 そんなふうに思ってしまうのは、心が壊れないようにという自衛本能なのだろうか。
 何にしても、これ以上取り返しのつかない体にされることだけは避けないと。
 勝ち組人生と女神の美貌を取り戻せなくなる。
 どうする? 演技でも媚びて許してもらう? この私が? 馬鹿で低俗で下品な一般素人たちに媚びるなんて
冗談じゃない。私は神から与えられるべき美貌は全て与えられた女なのよ。人間として格下の連中に頭を下げる
ようなまね、絶対にできない。それに、どうせ媚びようとしてもまともに喋れないのだ。それなら今の自分に
できることは一つ――『これ以上私の完璧な体に手を加えようとしたなら、絶対に許さない。一生かけて復讐して
やる!』という意思を込めて観客一人一人の顔を睨み据え、『処置する』に投票する気概を失わせることくらいだ。
 美穂は、投票用紙に何やら書き込んでいる観客を睨みつけた。
 しかし心の奥底ではこう信じていた。人間は美しいものが好きだし、美人を見ると誰もが得した気分になる。
常日頃から誰もが『ブスは存在だけで迷惑』『ブスを見たら元気がなくなる』と発言している。美人を不細工に
変えたい人間がいるとはとても思えない。私に嫉妬している一部の馬鹿女を除けば、誰もが私の美を
守ろうとしてくれるはず。観客の投票は味方が圧倒的に多いはず。罰ゲームとはいえ、私の美を損なわせたい
人間なんていないだろう。
 何事にも挑む前から勝利を確信する癖が身に染み付いている美穂は、内心で女王の余裕を持ち、観客たちが
投票を終えるのを見守っていた。
 残念ね、久恵。あんたに賛同する観客なんてほとんどいないわ。観客の大多数は私の味方よ。






96 :新田美穂 42:2009/11/16(月) 21:52:31 ID:C8xjoVfP0
 投票用紙を回収し終えると、久恵が流し読みして言った。
「顔の整形に賛成投票はゼロね」
 ほら、みなさい。美穂は勝利を確信し、久恵を見て鼻で笑った。
「理由が分かるかしら、美穂?」
 考えるまでもないでしょ。私の美貌に傷をつけたがる人間なんていない。それだけよ。
「何よその目は。勝ち誇った顔してどうしたの? 勘違いしてるといけないから、みんなが顔のブス整形に反対する
理由を教えてあげるわね。『目や頬はあえてそのままのほうが鼻や眉や髪や歯の惨めさが引き立つから』
『そのほうが醜い部分が引き立つから』『もともとは美人だと分かる状態をキープしておけば、そのバランスが
崩れることで、せっかく美しい部分が残っていても全て台無しになる。そのほうが未練も強くなりそうでいい』」
 美穂は唖然とした。私の美しさを損ねることに罪悪感を感じて反対に投票したんじゃないの? 美しい部分を
残しておいたほうがより惨めだから? 信じられない。観客の残酷さが信じられない。私の美を守りたい一心での
否定派じゃないのか。ただ、綺麗な部分を残しておけばそのほうが悲惨で惨めだから。そのほうが見て面白いから。
そのほうが私を傷つけられると考えたから。
 否定派も別に私の美を崇拝し、私を助けてくれようと反対したわけではない。
「④番、⑤番は全員が賛成してるわよ。『貧乳にしてやれ』『焦げ茶色のブツブツ乳輪にしたら気持ち悪いだろうから
そうしてやれ』『巨乳過ぎて垂れ下がった醜いおっぱいにしてやれ』『CDのように大きな乳輪にしてやれ』『水風船
みたいに腹まで垂れ下がったデカパイにしてやれ』うーん、観客たちはあんたの自慢の胸を整形したがってるわね」
 冗談じゃないわよ! 毎日欠かさないトレーニングとバランスの取れた栄養補給で作り上げた胸なのよ。
グラビアアイドルさえ陶然とするような私の美乳を醜くする? 絶対に許されない。観客は一時の面白さと爽快さで
『処置する』に投票しているんだろうけど、私の人生はこれからも続くのよ。
 惨めな胸じゃ生きていけない。
「さて」と久恵は言いながら笑った。「満場一致で胸の整形を実施ね」


97 :新田美穂 43:2009/11/16(月) 21:54:54 ID:C8xjoVfP0
 リングに一人の女が上がってきた。懐かしい顔だった。名前は由紀子。高校時代の同級生だ。貧相だったはずの
胸が膨らんでいるのは、上げ底ブラかパッドか整形か。
 由紀子は険しい顔をしている。
「あんたさ、覚えてる? 合コンに行ったときさ、あたしが胸の大きさに悩んでてパッドで大きく見せてるって
知ってるくせにさ、聞こえよがしに男に言ったよね。私、貧乳の女は欠陥品の人間だと思う、って。あたし、
居心地悪かったよ。男たちはさ、君たち二人はいいおっぱいだよね、なんて言ったんだよね」
 由紀子は美穂のチューブトップを毟り取った。仰向けでも型崩れしない88センチの美乳がプルンッと飛び出した。
桜色の乳首は完璧な形で天井を向き、色白の山の中央で存在を主張している。大スクリーンにアップで映ったとき、
観客席に感嘆の吐息が広がった。
 美穂は羞恥に頬を赤く染めた。
「あたしさ、男に誘われたけどさ、断って逃げ帰ったんだよ。裸になって胸見られたら、どんなふうに思われるか
怖かったから。あたし、それ以来、自分に自信を失ったの。男が服の上から胸を見るたび、パッドを入れてる
惨めさを意識して泣きそうだった。大学に行っても、まだ誰とも付き合えてない。なのにあんたはさ、男は誰もが
私の虜、みたいな顔して大学生活満喫しちゃってさ」
 だから何? 逆恨みじゃない。高校時代のそんな笑い話程度のエピソードでさ。
「許せないんだよね。だからあんたのおっぱいを私の何倍も惨めにしてやる!」
 由紀子が美容整形外科医から受け取ったのは、注射器だった。透明の筒の中に白っぽい液体が詰まっている。
彼女は美穂の胸の前まで歩み寄ってきた。
「好きな男の前で服を脱げない惨めな気持ち、あんたにも思い知らせてやる!」
 由紀子は憎悪を撒き散らし、興奮と愉悦に鼻息を荒くした。
 美穂は「うううー」と音を発しながらもがいた。上半身を揺する。乳房が震えた。
「往生際が悪いのよ!」


98 :新田美穂 44:2009/11/16(月) 21:57:14 ID:C8xjoVfP0
 由紀子は美穂の乳房を鷲掴みにすると、桜色の乳首に注射器の針を突き刺した。チクッと痛みが走る。
彼女がピストンを押し始める。
やめてええ!!
 綺麗な桜色の乳首が勃起するように膨れだした。1センチ、2センチ、3センチ。乳首に圧迫感を覚えた。
肥大化するたび、桜色の色素が引き伸ばされ、薄茶色に変色しはじめた。例えるなら、桜色の絵の具10mlに
2mlの茶色い絵の具を混ぜたような感じだ。
「ひっ、ひいいっ!」
「全部注入してやるわよ~♪」
 由紀子の親指がピストンを押し込むたび、乳首は肥大化した。脂肪を注入し終えたときには、桜色の乳首は
薄茶色になって赤ん坊のおちんちんサイズにまで勃起していた。今にもおしっこを迸らせそうだ。
「脂肪は30分もしたら内部に癒着するから、縮小化できないそうよ。よかったね」
 そんなのいや。早く吸引してよ!
 心の叫びは届かず――届いたとしても由紀子はより楽しげに、反対側の乳首も同じく肥大化させた。
 美穂は自分の乳房を見下ろし、ショックを受けた。張りのある88センチの美乳の先端に赤ん坊のおちんちんが
ついている。こんなみっともない乳首を持っていたら一生のコンプレックスになることは間違いない。
 何てことするのよ!
 美穂は憎悪を込めて由紀子を睨みつけた。自分が貧乳なのは劣等遺伝のせいでしょ。だからって恵まれた
人間の胸に嫉妬しないでよ!
 由紀子は美容整形外科医に訊いた。
「ねえ、この最低女の乳輪を大きくすること、できないの?」
「普通は乳輪を大きくする手術なんてないんだけど、それは美を追求する範囲での話でね。つまり、美観を損なって
も構わないなら大抵のことはできちゃうっていう。乳輪が小さくて悩んでる患者さんの乳輪を大きくするとしても、
醜い感じで大きくすることは望まないはずでしょう? だから、そういうことさえ考えなければ、大きくできるよ」


99 :新田美穂 45:2009/11/16(月) 22:15:14 ID:C8xjoVfP0
「じゃあ、大きくしてやって!」
「方法を教えてあげよう」
 美容整形外科医が事細かに説明しながら美穂の乳輪の根元に注射器を刺し、由紀子に引き継ぐ。
「後は注入してやるだけだよ。そうすれば乳輪が引き伸ばされて大きくなる」
 由紀子は鼻歌を歌いそうなほど楽しげに注射器のピストンを押し始めた。美乳を引き立てるようにバランスよく
備わっていた桜色の乳輪が徐々に広がりだした。乳輪の拡大に伴い、モントゴメリー腺(乳輪に存在するブツブツの
皮脂腺)が誇張されていく。まるで乳輪の下から極小のストローで何箇所も空気を吹き込み、気泡を作り出している
ようにブツブツが浮き上がってきた。
「ひょんな、ひょんなのって……」
 美乳に備わる肥大化乳首と巨大乳輪。アンバランスさが乳房の美観を台無しにしている。みっともない乳首と
ブツブツ乳輪のせいで、完璧な形と大きさの胸も下品に見える。
 自分の美乳の惨状に唖然としていると、脂ぎった中年オヤジがリングに上がってきた。
「私にも恨みを晴らす機会を与えてほしいねえ」
 男に見覚えはなかった。昔のアッシー、メッシーではありえない。私は貢がせる相手を選ぶ。貢がせて自分の格が
落ちるような相手からは何一つ受け取らない。こんな醜い中年オヤジから物を貰った記憶はない。一体誰?
「覚えてないんだねえ。信じられないよ。あんたにとっちゃ、私なんて人生の敗残者。中年のブ男だろうからね。
この前、あんたに電車で痴漢扱いされたんだよ」
 思い出した。尻を誰かに触られたとき、外見で一番怪しい男を指差し、痴漢扱いした。息が臭そうで生理的に
嫌悪感があったから車両から追い出したかった。案の定、男は乗客に引きずり出された。私は痴漢じゃない、と
騒ぎはじめたため、痴漢の証拠が必要だと駅員に責められたくないから、「駅員には突き出さないであげて」と
乗客たちに優しい女を演じて見せた。


100 :新田美穂 46:2009/11/16(月) 22:17:08 ID:C8xjoVfP0
「思い出したかな? 私はね、あの日以来、人生が転落してねえ」
 何よ、もとから冴えない人生だったんでしょ。だいたい、私は見逃してあげたじゃない。駅員に突き出したら
可哀想だと思ったから許してやったのに恨みって何よ!
「駅に放り出された姿を同期の奴が目撃していてね、私と課長の座を争うライバルだから、当然上司に密告。
私は車内で痴漢オヤジ呼ばわりされて昇進はなし、左遷されたよ、あっという間にねえ。妻子は私を信じず、
愛想をつかして家を出る始末。ああ、あほらしい。15年間真面目に働いてきたのに、たった一日、ただ
電車で会社から帰ろうとしていただけで痴漢扱いされて仕事も家庭も崩壊。ああ、何てあほらしいんだろ」
 妻子に逃げられたのは自分に信頼がないからでしょ。自業自得よ。逆立ちしても痴漢するように見えない男なら、
会社の同僚も家族も信じてくれただろうし、何の問題もなかったはずよ。
「全てを失ってからは、あんたを刺し殺して自分も死のうと思って同じ電車に毎日乗ってたけど、考えたら
殺したって空しいよなあ。死んだ人間は無になって後悔もできないし、苦しむこともない。だけど、こんな
復讐の機会が巡ってくるとはねえ」
 中年オヤジが美容整形外科医から受け取っていたのは、黒い装飾のレーザーガンだった。
「ひゃ、ひゃにひゅるき?」
「色素を沈着させるレーザーを照射してやるんだよ。日焼けマシンに入ってるみたいになるそうでね。乳首の日焼け。
色は沈着したら絶対に戻らないそうだ」
「ば、ばひゃなまねはやえて!」
 舌足らずの声で叫ぶ。
 由紀子が「それって最高!」とはしゃぐ。
 何が最高なのよ。そんなの最低よ。私の生まれ持った綺麗な乳首の色を醜くする? 
 中年オヤジが容赦なく乳首に狙いを定め、引き金を引いた。赤色の可視光線が照射される。美穂は身をよじり、
懸命にレーザーから逃れようとした。いやよ、いや。絶対にいや。人の体を何だと思っているのよ!


101 :新田美穂 47:2009/11/16(月) 22:19:14 ID:C8xjoVfP0
 由紀子に乳房をガシッと握り締められると、体を揺すっても光線から逃れられなくなった。赤ん坊のおちんちん化
させられた醜い乳首が変色し始める。茶色い色素が徐々に沈着していく。
「や、やえへええ! わひゃひのちふびがああ!!」
 美穂は、歯が全て抜かれて歯ぐきに張りつくような唇で悲鳴を上げた。中年オヤジは陰湿な冷笑を浮かべながら、
光線の照射を続けている。脂肪注入で4、5センチに伸ばされた乳首は、日焼けするみたいに色が変わり、今や
薄茶色から海老茶色になり、だんだんと焦げ茶色になってきた。
「誰も痴漢なんてしたくなくなる体にしてやるからな。男が味方したくなくなるような体に、ね」
 照射は5分、10分と続いた。乳首と乳輪への色素沈着が終わる。
 美穂は自分の胸を見下ろし、現実を否定しようと首を振り続けた。目の前で起こっていることが信じられなかった。
型崩れしない88センチの乳房は相変わらず堂々と盛り上がっているが、中央の乳首は天井に向かってそそり立つ
のではなく、萎えた赤ん坊のおちんちんみたいにヘナッとしていた。しかも女遊びしまくった男のペニスなみに
焦げ茶色になっている。コイン大だった完璧な乳輪は直径が二倍に拡大していて、茶色いモントゴメリー腺の
ブツブツが目立っている。腐った米粒の群れのように見える。
 外国人のラウンドガールにも負けない自信があった美乳に、惨めで下品な茶色い肥大化乳首と巨大ブツブツ乳輪が
ある。口に含んだらばい菌に侵されそうな形と色合いだった。ホームレスでも嫌がりそうなほどの醜悪さだ。こんな
汚らしい乳首にされたら、理想の男が現れてもモノにできない。ブラを外したとたん、顔を顰めるだろう。男の
最初の一言も想像できる。おずおずと、『あの、言いにくいんだけどさ、それ、触っても病気とか感染らないよね?』
 想像したあまりの光景にショックを受け、意識が遠のきそうだった。
 わ、私の自慢の胸が……ああ、もう人前で絶対に服を脱げない醜さにされてしまった……。
 美穂は悄然とうなだれた。
 由紀子は醜女を見下す口調で言った。
「まだまだ許してやらないわよ!」






114 :新田美穂 48:2009/11/18(水) 22:48:49 ID:F2Qz3HAz0
「いいぞ、いいぞ!」と観客が盛り上がる。「もっとひどい目に遭わせてやれ!」
 全世界が敵に回ったようだった。今までは誰もが味方だったのに……あれは全部偽りだったの? なぜ誰もが
私の不幸を望むのよ!?
「ずいぶん嫌われてんのねえ、あんた」と由紀子が小馬鹿にしたように笑う。「ふふんっ、あんたの自慢のおっぱい、
私よりぺチャパイにしてやるから!」
 恐ろしい発言を聞かされ、美穂は身を震わせた。大事な乳首と乳輪を穢しただけじゃ飽き足らず、胸まで
悲惨なことにしようというのか。冗談じゃない。そんなことされてたまるか。劣性遺伝の女が人為的に仲間を
作るなんて許されない!
 由紀子が歩み寄ってきたとき、「待った!」と声が上がった。ピシャリと棒で打つような制止の声だった。
美穂は救いを求め、声の方向に目を向けた。ロープを飛び越え、颯爽とリングインしたのは筋肉質の肉体を
タンクトップで包んだ青年だった。
 彼は確か――坂田康平。格闘家だ。以前、会うたびにブランド物のバッグを貢がれた記憶がある。
 救いの主が現れた。一縷の希望だ。さあ、早くこの残酷な茶番を終わらせて!
「……お前、何嬉しそうな顔してんの?」
「へ?」
「お前、俺に何したか忘れたわけじゃねえよな?」
 美穂は坂田の顔を見つめ、記憶を掘り起こした。土中深く埋もれていた記憶がよみがえったとき、あっと
声を上げた。
 男子と女子の格闘家同士の対談企画で知り合って以来、坂田は数百万相当のブランド品を貢いだ。美貌の
女神を恋人にしたい一心だったのか、ホテルに連れ込みたい一心だったのかは分からない。とにかく優しい言葉を
連発して貢物を持ってきた。しかし半年も経つと、坂田は金策に走り回るようになった。女にちょっとプレゼントを
しただけで金に困る程度の男に価値はない。だから彼がサラ金から借金していると聞いてからは、携帯のアドレス帳
から『坂田』の名前を抹消し、連絡を取らないようにした。


115 :新田美穂 49:2009/11/18(水) 22:49:32 ID:F2Qz3HAz0
 着信拒否されても避けられていると分からない単細胞は、マンションの前で待ち伏せし、声をかけてきた。
鬱陶しく思ったから無視すると、馬鹿力で腕を掴まれた。手首を握りつぶすぞと言わんばかりの握力だった。
女子チャンピオンといえども、男子の一流格闘家に簡単に勝てると思うほど自惚れてはいない。だから、横目で
交番の存在を確かめると、悲鳴を上げた。警察官が飛び出してきた。
 後は、いかつい男に付け狙われている美女を演じるだけだった。赤く変色した前腕を見せ、「暴力を振るわれた
んです」と訴えた。女の武器をフルに使い、頭脳の勝利だった。警察官は坂田の弁解も聞かず、彼を連行していった。
「俺はよ、お前のせいで人生を狂わされたんだ。お前にいいところを見せたい警察官に現行犯で逮捕されてよ、
マスコミに嗅ぎつけられてよ、女子格闘家をストーカーした犯罪者扱いだよ。ベルト剥奪、無期限の試合出場禁止、
サラ金の借金が膨らんで自己破産。地位も名誉も希望も失っちまった。お前のせいでな」
 責任転嫁して逆恨みする坂田に呆れた。
 警察に逮捕されたのは、あんたが私の腕を握り締めたからでしょ。染み一つない完璧な肌にアザを作ったんだから、
それくらいの報いは受けるべきだったのよ。
「お前みたいに始末の悪い女、とことん惨めな目に遭わせてやるよ」坂田は由紀子を一瞥して言った。「なあ、
ただ貧乳にしてもつまんないだろ」
「何でよ? 貧乳を病気みたいに思ってるこの女にはショックなはずよ」
「胸の小さい女なんて大勢いるじゃねえか。仲間由紀恵なんて人気あるしな。貧乳ってだけで人生が終わるなら、
女の4分の1くらいは終わってる」
「……じゃあ、あんたはどうしてやりたいのよ?」
「俺か? 俺はな、ババアのようにしわしわの垂れ乳にしてやりたいね」
 美穂は我が耳を疑った。何とんでもないことをさらっと言うの?


116 :かず:2009/11/18(水) 22:52:01 ID:ym4BHN6e0
投稿お疲れ様です
美脚の足の指両方とも再起不能にしてやってくださいw


117 :新田美穂 50:2009/11/18(水) 22:56:29 ID:F2Qz3HAz0
 由紀子は両目を見開いて笑みをこぼした。
「垂れ乳! それはすごいわね。最高!」
「だろ」
「しわしわの垂れ乳に比べたら貧乳のほうが何百倍もましよね。貧乳が最高のおっぱいに思えるくらいよ」
「こいつは若さを奪われるのもこたえるはずだ」
「しわしわの垂れ乳かあ。何かワクワクする!」
「こいつはそれくらいされても当然の女だ」
「だよね~、私もそう思う」
 二人は恐ろしい会話を交わすと、美容整形外科医に相談し、機械を用意した。小型の青いボックス型をしている。
 四肢拘束状態の美穂は、暴れ狂った。大事な胸に手出しはさせない!
 しかし革ベルトがギチギチと音を立てただけに終わった。美容整形外科医は乳房の下部に麻酔を打つと、
カニューレ(金属製の細い管)を挿入した。88センチの美乳から管が突き出ているのは、異様な光景だった。
「超音波のエネルギーが脂肪細胞を液状にして、それを吸い取るんだよ」
 美穂は何度も首を振り、「ひゃめて!」と訴えた。坂田と由紀子はワクワクした顔で見守っている。
 自慢の胸を潰されたら私の人生はもう……。
 坂田は美容整形外科医から機械の操作方法を教わると、「ババアのような胸にしてやるよ!」と言い放ち、
スイッチを入れた。モーター音が響き渡った。悪魔の呪文のように聞こえた。
「ひゃ、ひゃえてえええ!」
 胸と髪は女の象徴だと思っている。女性器と違い、髪は女が常に見せびらかしている部分だし、胸は衣服の
上からでも形が分かる。裸にならなくても、女を女たらしめているパーツだ。二つを奪われたら女として
死んでしまう。


118 :新田美穂 51:2009/11/18(水) 23:01:34 ID:F2Qz3HAz0
 視線を落とすと、自慢の美乳が波打っていた。明らかに左胸よりいびつになっている。真ん丸く膨らませた
水風船から少しずつ水を抜くように乳房が縮みはじめていた。美しい形を保ったままサイズが縮むのではなく、
中の脂肪を無理やり抜かれたことで垂れ乳になってきている。
「ひいいいっ!!」
 わ、私が何したっていうのよ!
 10分後、右の乳房は悲惨なことになっていた。萎えて真下に垂れている巨大なペニス状態だった。
引き締まった色白の腹部に右の乳房がヘナッと張りついている。先端には拡大された焦げ茶色のブツブツ乳輪と
肥大化した乳首がついている。
 な、何よこれ。こんなの私の胸じゃない。ううん、人間の胸ですらない。
 左の乳房にもカニューレが挿入されると、由紀子は「今度は私の番ね♪」とはしゃぎ、スイッチに指を伸ばした。
 ふざけないで! 他人を落としたって自分は偉くならないのよ! こんなことしている暇があるなら、もっと
自分を磨きなさいよ!
 由紀子はスイッチを入れたり切ったりしながら、少しずつ嬲るように乳房の脂肪を吸引した。
 1分ごとに垂れていく乳房を見せつけられ、美穂は半狂乱になった。
 やめてよ、やめてよ、もうやめて!
 そして15分後……。
「はい、完成!」
 美穂は自慢の胸が貶められた様を見て愕然とした。決して型崩れしない88センチの美乳は死んでいた。
まるで肌色のナマコが二つ胸にへばりついているようだった。先端にはグロテスクな焦げ茶色の乳輪と乳首。
「うわあ、悲惨だね~」と由紀子が笑いを噛み殺しながら言う。
「ひ、ひりょい……ひりょすぎる……」


119 :新田美穂 52:2009/11/18(水) 23:03:07 ID:F2Qz3HAz0
 こんな胸にされてしまったら二度と人前に出られない。ああ、どうしたらいいの? 同性の誰もがうらやみ、
異性の誰もが魅了される自慢の美乳だったのに。毎日のエクササイズで完璧な形を保っていた胸だったのに。
衣服から覗く谷間を見せるだけで男を従わせられた胸だったのに。
 由紀子は美穂の焦げ茶色の肥大化乳首を指先で摘むと、右のナマコ乳房を引っ張り上げるように持ち上げ、
それから指を離した。ペチャっと音がしてナマコ乳房が腹に落ち、張りついた。由紀子が爆笑し、つられて
観客たちも大笑いした。
 美穂は信じがたい光景にショックを受け、絶望感と惨めさに打ちのめされた。由紀子はこの遊びが気に入った
らしい、両手で両胸の乳首を摘んで引っ張り上げては指を離し、ナマコ乳房がヘチャッと腹に落ちる様を――
力なくくずおれる様を何度も楽しんでいた。そのたび、観客が爆笑の渦に包まれる。
「悲惨すぎ~」
「超ウケるんですけど!」
「あんな女、100万払われてもデートできねえよ!」
「俺も無理無理。絶対無理。ハゲで豚顔の垂れ乳女なんてありえねえし!」
 観客の嘲笑や心ない言葉に心は傷つき、息苦しさと動悸を覚えた。
 美穂は放心状態で身動きすらできなかった。

 由紀子が「ああ、満足した♪」と満面の笑みで言ったとき、観客の中から声が上がった。
「まんこもレーザーで真っ黒にしてクリも肥大化させてやれ!」
「肥大化クリを弄って慰めるしか生きる楽しみがない女にしてやれ!」
 観客による精神的なリンチだった。いや、肉体的な被害を伴っているのだから”精神的“ではすまない。
 美穂は茫然自失状態から意識を取り戻すと、いやよ、もうやめて、と暴れ始めた。
 女神に嫉妬する餓鬼どもの醜さをまざまざと思い知らされた気がした。






125 :新田美穂 53:2009/11/22(日) 00:43:06 ID:7VESHbBH0
「だけどその前にさ」と坂田が美容整形外科医を見た。「脂肪吸引したのはいいんだけど、また脂肪注入したら
元通りになっちゃうんじゃ意味ないんだよね」
 満足げな表情だった由紀子が「確かに!」と叫ぶ。
 美容整形外科医は注射針と小瓶を持っていた。
「問題ないよ。皮膚が吸着する液体を流し込めば、脂肪を注入するスペースは消えるから。例えるなら、
空気を抜いた紙風船の内部に接着剤を注入するようなものでね。空気を送り込もうとしても、完全にくっついて
いるから不可能というわけ」
「じゃあ、この女は一生この垂れ乳のまま?」と由紀子が心底嬉しそうに言う。
「お望みとあらば」
「もちろん望むに決まってるじゃない!」
 美穂は信じがたいやり取りを聞き、何でそこまでするのよ! と内心で叫ばずにはいられなかった。私の
美貌に敵わないからってあんまりじゃない! あんたより胸が大きくて綺麗だからって、ここまで貶める
必要ないじゃない! そんな根性だから顔も醜くなるのよ!
「肥大化した乳首や茶色い乳輪は?」
「注入された脂肪はすぐに細胞と癒着してしまうから、もう吸引はできないんだよ。皮膚の下で一体化するから。
色素が沈着した乳輪も同じでね。男のペニスと同じ。黒くなったらもう白くは戻らないだろ。大丈夫。
乳首の大きさも乳輪の色も一生このままだから」
 美穂は美容整形外科医の言葉を聞き、無意識のうちに首を振って現実を否定していた。嘘よ。もとに戻せない
なんて嘘に決まってる。
「では皮膚の吸着処置をはじめよう」
 美容整形外科医が迫ってきた。死神の足音のようだった。美穂は抵抗を試みたものの、皮のベルトは四肢を
完全に拘束しており、ナマコ状態の乳房を左右に揺らすだけに終わった。注射器が刺さり、液体が乳房に
注ぎ込まれると、美穂は圧倒的な絶望感に打ちのめされた。


126 :新田美穂 54:2009/11/22(日) 00:48:09 ID:7VESHbBH0
 私の胸は一生このままなの? 整形でも戻せないの? 冗談よね?
「ああ、一つ言い忘れ」と美容整形外科医。「ずいぶん無茶な整形をしちゃったから、乳腺組織が壊れて
母乳を作れない身体になっちゃってるけど、まあ、あまり気にしないでね。最近は赤ん坊用のミルクも
進歩してるから」
 美穂はなぜかその言葉に大きなショックを受けた。結婚や出産なんて考えたこともないのに。子供を産んで
体型が変わることを嫌っているのに。どうして? もしかすると、自分の歩く道の前に無限に広がる可能性を
人為的に一つ潰されたからかもしれない。ないものねだり。
 美穂は美容整形外科医を睨みつけた。私にこんなショックを味わわせるなんて! 一体何様よ!
 悲しみに暮れている間もなかった。痴漢の中年オヤジが例のレーザーガンを持ってニヤニヤしている。
「お待ちかねのご開帳だよ」
 中年オヤジは美穂のミニスカートをカッターナイフで切り、一気に剥ぎ取った。スラリとした色白の太ももと
ふくらはぎが伸びている。三角地帯は白い水着が覆っていた。
「ひゃ、ひゃだ」
 大勢の観客の前でスカートを奪い取られる行為に羞恥を覚え、思わず声が漏れた。
 中年オヤジのカッターナイフが水着の端に切れ込みを入れる。美穂は動揺した。観客の前で全裸にされ、
大事なところまで晒されようとしている。大した顔と身体じゃなくても裸を見せるだけで価値が出るAV女優じゃ
あるまいし。私の裸はそんなに安くないのよ! あんたみたいな社会の落伍者、1000万払ったって私の裸は
拝めないんだから。私の裸には1000万ドルの価値があるんだから。エリートの中のエリートの中から
選ばれた最高の男しか見られないのよ。
 水着の両端が切れた。中年オヤジが水着を鷲掴みにする。
「ひゃめへよ! ひょんなおおぜいのまへで!」


127 :新田美穂 55:2009/11/22(日) 00:52:15 ID:7VESHbBH0
 中年オヤジは「はあ?」と顔を顰めた。「あんたみたいな女として終わった生き物の裸なんて誰も見たくねえよ」
水着を剥ぎ取るのをやめ、美穂の頭を撫でる。ぬめぬめと脂ぎった手のひらの感触がツルツルの頭皮に伝わった。
「あ~あ、こんなハゲになっちゃって。私は45だけど、髪の薄さが気になってたんだよね。でもあんたを
見てたら元気が出てくるよ」クククと笑う。「あんたに比べたら私なんてフサフサなほうだからね」
 目の前が真っ暗になるようなショックだった。中年オヤジは前頭部から半分も禿げ上がり、残り半分の髪を
必死に伸ばして額の面積を狭めようと悪あがきしている頭だったからだ。そんな奴より私のほうがひどい
状態ってどうなの?
 中年オヤジの手のひらが前頭部から後頭部までの無毛地帯を撫で回す。大スクリーンを見るまでもなく、
横山ノック状態にされた自分の頭の惨状が実感され、心臓が苦しくなった。次々と醜くされる身体のショックで
忘れていたのに、思い出さされ、改めて愕然とした。
「誰があんたみたいな垂れ乳ハゲ豚の裸なんてみたいかよ。間違って届いたAVのパッケージに写ってたら、
再生せずに即返品するレベルだぞ」
 信じがたい侮辱だった。底辺の最も卑しい仕事であるAV女優にすら劣ると言われるなんて。
 女の価値は服を脱がなくてもどれだけの男を魅了し、虜にできるか。事実、私は笑顔を見せるだけで大勢の男が
寄ってきた。勘違いして高値の花をホテルに連れ込みたがる男には、あんたには私の笑顔すら見る資格はないと
ばかりに冷めた眼差しを向けてやった。すると、男は平謝りして許しを乞うた。なのに――。
 会場が中年オヤジに同調し、見たくねえよ! と叫び始めた。これじゃ、興奮の声を上げられたほうが何倍も
ましだ。昨日までは誰もが私の下着の奥を見たがり、貢物の額を増やしていった。オークションのように。もちろん、
全員に思わせぶりな態度をとり、実際は笑顔で受け流してきた。なのに今は誰もが見たくないと叫ぶ。信じられない。
 何よりショックなのは、言い返せないことだ。今まで私を悪く言う人間の言葉なんて負け犬の遠吠えだったのに。
女神に嫉妬するブルドッグの悪口に傷つくわけがない。それなのに――。


128 :新田美穂 56:2009/11/22(日) 01:03:36 ID:7VESHbBH0
「一生男は無理って身体にしてやるからな!」
 ふざけないでよ。100年生きたって私の1か月分にも満たない程度の人生の価値しかないくせに。私の衣服に
指一本触れる資格もないくせに。こんな状況じゃなきゃ、私の香りすら嗅がせてないわよ! もったいない。
 中年オヤジはついに水着を剥ぎ取った。三角形に整えられた陰毛が観客に晒された。しかし、恥ずかしがるに
恥ずかしがれなかった。醜女が恥らう姿など滑稽なだけだ。恥ずかしがる姿を見せたら笑い者にされるだろう。
そのほうが何倍も屈辱だった。
 由紀子が手術台に歩み寄ってきた。「とりあえずさ、邪魔な毛は抜いちゃおうよ。ほら、手術前って剃毛? って
やつをするじゃん」
 彼女は陰毛を何本か掴むと、思い切り引っこ抜いた。
「ひぐうっ!」
 思わず悲鳴が出た。敏感な部分に激痛が走る。何すんのよ。肌に赤い跡が残るじゃない!
 由紀子は人差し指と親指で摘んだ陰毛をしげしげと眺めている。
「汚いわね~、ゴミ箱はないかしら」由紀子はわざとらしく周囲を見回した後、「はっけーん♪」と声を上げ、
抜いた陰毛数本を美穂の鼻の穴に人差し指で押し込んだ。
「ふぎぎっ……」
 不快な感触が鼻の奥に詰まっている。気持ち悪い。
 由紀子は陰毛を次々と毟り取っては、美穂の豚鼻に捨てていった。鼻孔がむずむずし、くしゃみが出た。
陰毛混じりの鼻水が真上に飛び上がり、ほっぺたにペチャっと落ちた。鼻の穴が真正面を向いている事実を
再認識させられ、改めてショックに襲われた。
「キャハハ、おもしろ~い。私も一度やってみたかったんだよね~、打ち上げ花火!」
 屈辱のあまり、胸が苦しくなった。
「さあ、キレイ、キレイしましょうね~♪」
 由紀子は笑いながら恥丘にドイツ製の超強力永久脱毛剤を塗り込み始めた。


129 :新田美穂 57:2009/11/22(日) 01:05:41 ID:7VESHbBH0
「ひゃめへー!」
 必死の訴えもむなしく、5分後には無毛の恥丘が出来上がった。大人の女として完璧な脚と腰のラインを
たどっていくと、赤ん坊のようなツルツルの股間が目に入る。
 観客の女たちの笑い声が会場に広がった。
「アソコの毛もない! チョーウケるんですけど!」
「キモー。あの身体でパイパンはありえないよね」
「アハハ、惨めすぎ!」
「人間として終わってるっつうの」
「ねえねえ。頭はオヤジ、鼻は豚、歯と声と胸はババア、股間は赤ん坊……これな~んだ?」
 数百人の観客が声を揃え、「新田美穂!」と叫んで爆笑する。
 恥を掻かされ、馬鹿にされ、笑われる――人生で初めての経験だった。精神的にいたぶられるのがこんなにも
苦しいなんて。観客や由紀子や坂田の一言一言と笑い声が釘のように心に刺さり、痛みが広がった。
 由美子は美穂の下半身側に移動し、大の字に開かれた股ぐらを覗き込んだ。大スクリーンには、美穂の下腹部が
下から舐めるように映し出されている。サーモンピンクの秘裂がつつましく備わっていた。官能的な唇のように――
バージンのように、型崩れもせず閉じている。
「ムカつくくらい綺麗ね」
 当たり前でしょ。私はあんたみたいな下品な女じゃないのよ。最高の男をつかまえるために身体の隅々まで完璧に
手入れしてきたんだから。身体を与えてやってもいいと認めた男は過去に2人だけ。しかも、1度目で満足させて
くれなかったから、数えるほどしかしていない。援助交際や売春で下品な色と形になっているあんたのものとは
違うのよ。欲求不満に負けて自分で慰めるときも、綺麗な色と形を保つために下半身はほとんど触らない。
 私の美貌は禁欲と摂生と努力で磨き上げたものなんだから。
 由紀子は手術台に上り、美穂の両脚の合間から彼女を見下ろした。





138 :名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 22:39:49 ID:mjJA1gt50
僕は水商売をしていたころ、いわゆる名古屋嬢狩りというのを見たことがあります。
名古屋巻きというウェーブのかかった髪型をしたお姉さまファッションに
身を包んだ若い女性達が、それを嫌う暴走族風のファッションの女たちに
路地裏で絡まれてボコボコにされたあと、身につけている高価なアクセサリー
や服などを剥ぎ取られ、動画まで撮られてしまってました。
まあ大抵の被害者はキャバや風俗の女だったりでしたが、中には相当可愛い子
もターゲットにされててほんとに全身ボコボコでしたから可哀想だったかも。
そんなに同情しませんでしたけどねw
このスレ読んで思い出しました。






143 :新田美穂 58:2009/11/24(火) 07:52:05 ID:4hDSUMsq0
「ホント、ムカつく」
 由紀子は汚れた靴の裏で美穂の秘部を踏みにじった。敏感な粘膜がねじられ、激痛に襲われた。美穂は「あうう」
とうめき声を漏らした。
「ひゃめへよ! かたくすれしたらひょうすんのよ!」
「何言ってるか分かんないわよ、おばあちゃん」
 悔しい。こんな女にまで馬鹿にされるなんて。
 しかし、言い返せないのも事実だった。確かに今は老婆と赤ん坊を足して2で割ったような声だった。声を
出すたび、自分の奪われた美声にショックを受け、惨めったらしい声に動揺してしまう。だから喋りたくても
ためらってしまう。でも、何も言わないまま低俗な連中のオモチャにされるなんて耐えられない。
「ひょんなことひて、ただじゃしゅまないわよ!」
「だから分かんないって、おばあちゃん」
 由紀子は笑いながら言うと、さんざん性器を踏みにじった。痛みを与えるように靴の裏を左右に動かした。
神聖な場所を穢す喜びに満ちた顔で。
 やがて由紀子は手術台から飛び降りると、美容整形外科医の指示を受けながら、豆粒サイズのクリトリスに
注射器を突き刺した。
「ひぐうっ!」
 躊躇なくポンプを押し込む。豆粒が枝豆サイズに剥き上がり、肥大化しはじめた。ピンク色のナメクジが
身を伸ばすように大きくなっていく。
「な、なな、なな……」
 衝撃的な光景に言葉も出ない。
 由紀子はナメクジ状態のクリトリスに変形させると、満足げに笑い、美穂のラビアを両手で掴んだ。力任せに
左右に引っ張る。つつましく閉じていたサーモンピンクのつぼみが花開くように広がった。
「ひ、ひたいっ! ひゃめへよ! あんひゃとちがってだいじにひてきたんだはら!」


144 :新田美穂 59:2009/11/24(火) 07:53:17 ID:4hDSUMsq0
 中年オヤジも寄ってきた。「私にも協力させてほしいね」と言いながら、ラビアを掴んで引っ張る。男の力は
凄まじい。陰唇は3、4センチは伸びている。
「ちぎれりゅう~!」
 美穂は叫び声を上げた。目を合わせる価値もない男に嬲られるのは屈辱だった。私を抱かせてやった二人の男は、
私の裸を見たとたん、ガラス細工を扱うように丁寧に扱ったのよ!
 中年オヤジと由紀子は20分以上、ラビアを引っ張り続けた。
二人が手を離したときには、サーモンピンクの襞がたるんだゴム状態になり、食虫花のように唇を大きく醜く
広げていた。美青年が感涙するほど綺麗に整っていた襞は、今や下品でビロビロになっていた。2匹の桃色の蛭が
張りついているようにも見える。
 由紀子が指先でピンッと弾くと、ユルユルに伸びきった襞がプルプルと震えた。2匹の蛭が生き物めいて震えた。
下品すぎる光景だった。
「キャハハ、きもい形!」
 美穂は大スクリーンに映った自分の女性器を見つめ、大きなショックを受けた。二人の男しか受け入れていない
アソコは――オナニーのときもめったに触れないアソコは、援助交際常習者のようなヤリマン女のものみたいに
醜く変形している。伸びたゴムと同じく、もうもとの形には戻らないだろう。こんな形になるのがいやだから、
鍵付きの宝石箱に保管したダイヤのように大事にしてきたのに。
 こんなんじゃ、男が触れたいとも思わなくなってしまう……。
 下着姿になったときの光景が目に浮かぶ。ショーツの股間部は、2匹の体長10センチの蛭でも隠している
かのようにいびつに膨らんでいる。それを見た男は何て思うだろう。水着にもなれない。股に蛭を隠し持ったような
水着で人前を歩くなんてできない。下品な性器の形が丸分かりだ。
 美は正義なのに。中高時代、程度の低い問題の山に嫌気がさして宿題をしてこなくても、先生は咎めなかった。
無謀にも告白してきたダサい男子を手ひどい言葉で――気弱な性格ならトラウマになりそうなほど厳しい言葉で――
切り裂いても、取り巻きの人間は「美穂の言うとおりよ。分をわきまえなさいよね」と同調した。


145 :新田美穂 60:2009/11/24(火) 07:54:46 ID:4hDSUMsq0
 中学校でも高校でも、今通っている大学でも、全男子の3分の1をこっぴどくふった。残りの3分の2は
高嶺の花に恐れ多くて告白できない身をわきまえた連中だ。告白してきた連中の中でやんわりと断ってもいいと
思った男は毎年2、3人しかいない。大半の者は、学歴はあっても顔面の偏差値が低かったり低身長だったり、
未来の負け組人生が透けて見えているような男ばかり。そんな連中は、程度を教えてあげるためにも――相手の
今後のためも思い――厳しい言葉でふるようにしている。『告白の前に鏡を買うことからはじめたら?』『豚が女神に
恋するなんて滑稽だと思わない?』『身長を後15センチ伸ばして、身体を鍛えてから来てね。そうしたら今度は
やんわりとふってあげるから』
 言い返せた男は一人もいない。
 完璧な美貌――腰まで流れる絹糸のごとき長い黒髪、整った眉、二重で大きな瞳、鼻梁が通った鼻、官能的に
濡れた唇、真珠を思わせる輝く歯、女神の歌声のような美声、張りがある88センチの完璧な美乳、くびれた
ウエスト、ツンと盛り上がったヒップ、伸びやかな脚、染み一つない白磁器のような肌、身体にまとった花のような
かぐわしい香り――を持った女に言われたら、誰もが口をつぐむしかない。反論なんてできない。
惨めになるだけだから。
 それなのに、今の私は大事な宝石を次々に奪われている……。
 自分の身体の惨状が信じられず、美穂は大スクリーンから目をそらした。
 ああ、最高の男にこそ相応しい最高の身体だったのに。
 美穂は恨みを込めて二人を睨みつけた。
「ひゃにんをおとひめなきゃ、じびゅんをへいとうかできないやつってしゃいてい! ひょんなだから、じんせいの
らくごひゃになるのひょ!」
 短い言葉を口にするときはまだしも、長い台詞を口にしたら、その意味不明さがはっきりと分かった。自分の
耳に入ってくる音は、日本語の体をなしていない。しかし言わずにはいられなかった。自分を磨く努力をしない
ズボラ人間だから人生の落伍者になるのよ。一山いくら、みたいなバーゲンセール品になるのよ。高級なブランド
服を安物に貶めるなんて最低。


146 :新田美穂 61:2009/11/24(火) 12:43:00 ID:4hDSUMsq0
 人間としての精神を疑う。そんな連中は生きていても何の価値もない。一級の彫刻を壊すような人間が社会に
何をもたらせるっていうの?
 中年オヤジは舌打ちした。
「私を落伍者にしたのは誰だと思ってる? 痴漢冤罪に巻き込まれなきゃ、昇進して妻子を喜ばせ、幸せな人生を
生きていけたんだ!」
 だからそれは自業自得でしょ。痴漢に疑われたのは脂ぎった下品な顔が原因だし、無実を信じてもらえなかった
のは、日ごろの行いが悪かったからでしょ。
 中年オヤジは憎しみに満ちた目でレーザーガンを掲げた。
「さあ、真っ黒クロスケにしてやるからな」
 何て最低な奴! 産業廃棄物以下の存在の癖に!
 世の中には、踏み台にされる人間と、それを”階段“にして天まで上る人間がいる。私は後者だし、この会場に
いる低能たちは間違いなく前者だ。それなのに私を最下層の”階段“に貶めようとしている、誰もかれもが。
 美穂の価値観は幼少期の母親の影響だ。母の口癖は「男は利用するだけ利用するのよ。決して利用されちゃ駄目。
学歴、職業、資産、外見、性格――その全てが備わってる男以外に存在価値はないんだから、安売りしちゃ駄目よ」
だった。しかし母には娘のような美貌はなかった。だから金持ちの老人たちを騙し、資産をいただいて狡猾に生きる
しか道はなかった。介護ヘルパーとして働き、健康にいいと騙して塩分やコレステロールの多い不健康な食事を
食べさせ、体調を崩した老人を優しく介護して感謝を引き出し、遺言書の仲間に入れてもらう――究極の自作自演。
30人以上は騙したという。おかげで子供のころから何不自由ない生活を送ることができた。小学校のころには
月に8万円もお小遣いを貰ったし、登校するときの服装もお洒落な高級服ばかりだったし、美容品も専門店の
高級品を使っていた。母は事あるごとに言ったものだ。「老人には服が2着あれば事足りるし、美容品も不要だし、
私がお金を遣ってあげて何が悪いの? だいたい、死んだら資産なんてクソの役にも立ちゃしないんだから、
私が有効活用してあげてるだけよ。だから私もあんたには何の資産も残さないわ。いいわね。18歳になったら
自分で生きていくのよ」


147 :新田美穂 62:2009/11/24(火) 12:48:31 ID:4hDSUMsq0
 美穂はその教えを守っていたが、年頃になると母親を見下すようになった。美と金を価値観にしている癖に、
容姿は場末のホステスが関の山。だから、そんな母親を見るたび、思った。類稀な美貌がある私は、母のように
”犯罪スレスレ“の手段を用いなくても、母の何十倍もの幸福を得られるわ。
 事実、笑顔一つで男は言いなりだった。嫉妬する女も私を前にしたら何も言い返せず、惨めにすごすごと舞台裏へ
引き下がった。完璧な美貌。それが最大の武器だった。
 母は、不健康な食事で寿命を縮めたであろう老人たちの呪いを受けたように、病気で早々に他界した。
18歳になる前に死んだから遺産は残っているはず、と思ったが、最低の母はすでに貯金を遣いきっていた。
死を予期した母は、最期に海外旅行先で金をばら撒いて美貌の青年たちをはべらせたのではないだろうか。
思えば、奇跡の美貌に産んでくれたことと、幼少期に充分な生活費を与えてくれたこと以外には、何の役にも
立たない母親だった。
 結局、勝ち組人生を続けるために、高校生のころから大学生や大人を利用し、貢物で生活するはめになった。
バイトは考えたことがない。下働きは底辺の人間がすることだし、女神は他人に仕えたりはしないものだから。
この美貌さえあれば誰もがかしずく。なのに今は、生まれたときから勝ち組人生を歩むことが決まっていた女に、
心も顔も貧しい負け組連中が嫉妬し、徒党を組み、女神を天空から地に堕とそうと躍起になっている。何てことなの。
 ああ、底辺の人間なんかと関わるんじゃなかった。金持ちで高学歴で外見の整った勝ち組の男たちなら、自分の
人生に余裕があって自信もあるから、女神をねたむなんてことは絶対にない。私の美貌に宝石の価値を見出し、
さらに美しさを引き出してあげようと考えるはずだ。
 中年オヤジが下半身のほうに歩み寄ってくると、美穂は両目を剥いてもがいた。
 自分の人生の責任を私に押しつけないでよ!




150 :名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 09:25:34 ID:GKwseJnQO
アメリカの映画だと思うけどこういうのは萌えないか?
金髪美人のほうも防戦一方じゃなくやり合ってるしコスチュームもエロくない?
最後、あっさりやられ軽々と吊り上げられフックに引っ掛けられて失神してしまってる。
クイーン・ラティファの力強さも興奮した。
やはり金髪美女は弱さが目立つ。
黒人女には勝てない金髪美女....
これは俺のお気に入りのオカズ。




153 :新田美穂 63:2009/11/27(金) 17:54:57 ID:lMEArNyr0
 そもそも人生は不公平なものだ。私みたいに天が二物も三物も与られることもある。私には美貌、知性、
運動神経――全てが備わっていた。その一方、美貌も知性も運動神経も人並みかそれ以下の由紀子みたいな女もいる。
社会に何の貢献もしていない中年オヤジもいる。そんな不公平を受け入れて分相応に生きなきゃいけないのよ、
人間は。恵まれた人間を蹴落とそうなんて、絶対に許されない!
 中年オヤジは照射器を股ぐらに差し込み、スイッチを入れた。赤黒い可視光線が照射された。女性器目掛けて
一直線に発射されている。
「ひ、ひい! ひゃめへよ! おんなにとっへひょれがどんなにひょっくなことか、わかっへるの!?」
「分かってるよ。だからやるんだよ」
 中年オヤジは平然と言い放った。
「ひゃ、ひゃめ……ひゃめなさいよ!!」
 観客たちが「いいぞ、やっちまえ!」と歓声を上げる。会場は異様な盛り上がりを見せていた。
 美穂は可視光線から逃れようと腰を左右に揺り動かした。革製のベルトで大の字に拘束されているため、動かせる
範囲に限度があった。懸命に腰を振る。
「頑張れ~、タマちゃ~ん!!」観客から野次が飛んだ。
 一呼吸の間を置いて爆笑が広がった。美穂は遅れて気づいた。サザエさんに登場する猫だ。オープニングだか
エンディングだかで猫がリンゴの中から現れ、リンゴの上半分を持ち上げながらクネクネと腰振りダンスを披露する。
私の必死の抵抗をそんな滑稽なものに例えて笑い者にするなんて……。
「逃げるのやめちゃったのかな?」
 中年オヤジに言われ、腰を止めていたのに気づいた。美穂は一瞬ためらったものの、笑われるのを承知で再び
クネクネと腰を左右に揺り動かし始めた。大スクリーンでは、ビロビロにされた襞がプルンップルンッと揺れている。
赤黒い可視光線は容赦なく女性器を追いかけ、照射してきた。


154 :新田美穂 64:2009/11/27(金) 17:55:41 ID:lMEArNyr0
「ひやよ、ひや! ば、ばひゃなまねはひゃめて! ひろが、ひろが……」
 赤黒い光線の中でも、襞にどす黒い色が沈着しはじめているのが見て取れた。もどらなくなっちゃう。私の大事な
部分が……綺麗なサーモンピンクだったアソコが黒くなっちゃう。
 美穂はますます速く大きく腰をくねらせた。はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、と荒い息が鼻と口から漏れる。
「スゲー腰使い!!」
 美穂は秘部の色を守ろうとただ必死だった。
 はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ――。
 中年オヤジは追跡を楽しむような顔でレーザーガンを小刻みに動かし、秘部を照射し続けた。腰を大きく左右に
揺り動かしても、レーザーは最小限の動きで――手首をわずかに動かすだけですむのだから、最初から勝負に
なるはずがなかった。10分も経つと、美穂の全身には汗の玉が浮き出ていた。息はセックスの最中みたいに乱れ、
顔は上気していた。
 しかし、観客は誰一人として興奮の声を上げず、ただ、醜く変わり果てた女の滑稽で必死な腰振りダンスを
笑っているだけだった。
 疲労に負け、腰の動きが緩慢になりはじめた。レーザーを逃れるために必死で動かしているつもりでも、実際は
クネッ……クネッ……クネッ……クネッ……クネッ……とスローモーションになっていた。激しい腰の動きを
続けたせいで脇腹はズキズキ痛み、背骨はひび割れそうだった。
 さらに10分が経過したとき、美穂はぐったりと息絶えたように腰を動かせなくなった。ナマコ状態にされた
乳房が張りつく胸だけが上下している。
「も、もう……はあ、はあ、はあ……ひゃ、ひゃめ……はあ、はあ……ひゃめて……」
 中年オヤジは「逃げなきゃ真っ黒になっちゃうよ~」と笑いながら照射を続けた。美穂は再び腰をクイッ、クイッ、
クイッと動かしたが、可視光線を避けるだけの動きはできなかった。


155 :新田美穂 65:2009/11/27(金) 17:56:26 ID:lMEArNyr0
 5分後、中年オヤジが「終了~」と声を上げた。美穂は恐る恐る大スクリーンを見上げた。巨大な画面には、
汚らしい女性器が――自分のものとは思えない女性器が映っていた。ビロビロに引き伸ばされたラビアは、黒墨を
塗りたくったみたいにどす黒く色素が沈着していた。サーモンピンクだった陰唇が完全に変色している。まるで、
黒焦げになった焼肉を二枚、ラビアからぶらんっと垂れさせているような有様だ。豆粒サイズだったクリトリスは
肥大して皮が剥け、黒色のナメクジに見える。下品で、みっともない、最低のおまんこだった。
 乳首と同じく、舐めたらばい菌か毒に侵されそうな色合いと形だ。
 こ、こんなのひどすぎる――。
 永久脱毛された赤ん坊の股間にグロマン……これじゃあ、二度と男の前で服を脱げない。温泉だって無理。
女友達同士で旅行もできない。ああ、一生誰にも見せられないアソコにされてしまった。
 取り返しがつかないという現実に打ちのめされ、美穂は失神しそうなほどのショックを受けた。心に深く
突き刺さる残酷な悪罵を観客が口にする。
「うわっ、臭そう!」
「腐ってるみたい!」
「きたねっ!」
 美穂は耐え切れなくなり、大スクリーンから目をそらした。自分の身体にあんなグロテスクで見苦しいものが
ついていることが信じられなかった。身体の隅々まで――爪の先からまつげまで完璧に手入れし、染み一つ、ニキビ
一つない美貌を保ってきた。それなのに、女の一番大事な部分が……。
「まんこだけじゃなく、ケツ穴も汚くしてやるからな」
 中年オヤジが言い放ち、大きく開かれた美穂の股の間に顔を差し入れた。
「この綺麗な色を二度と見れなくしてやる」
 大スクリーンに映し出される菊門は桜色をしていた。セックスの際に後背位をとったとしても――男の支配欲を
満足させる犬のような体位は一度もとったことがないし、これからもとる気はないが――、恥ずかしくないくらい
鮮やかな色をしている。汚れは全く沈着していない。


156 :新田美穂 66:2009/11/27(金) 18:11:48 ID:lMEArNyr0
「も、もうひゃめてよ」
 中年オヤジは聞く耳を持たず、桜色の菊門に照射をはじめた。アナルの皺の隙間に墨を流し込んでいるように
だんだんと色素が沈着し、肛門が薄汚れていった。
 15分後、尻の穴は、どす黒いウンチを排泄し続けてその色に染まってしまったようになっていた。
黒い菊門からは、茶色い排泄物ではなく、便秘で熟成してガチガチに固まった塊がひり出されそうに見える。
「スカトロ女優以下のケツ穴になっちまったなあ、ククク」
 中年オヤジは満足げに笑い声を上げた。
 美穂はショックと絶望感と惨めさのあまり、反論もできなかった。
 由紀子は痛快で仕方がないという顔で笑っている。
「あ~あ、これじゃあもう一生男は無理じゃない? どうすんの? もう勉強だけで生きてくしかないね~」
 由紀子は便所虫でも触るような顔で美穂のビロビロのラビアを弾いた。
「何かあんたみてると、生きてく元気がわいてきたなあ。ちょっと胸が小さいくらい、あんたに比べたら何の
ハンデにもならないもん」
 由紀子は美穂の身体を上から順に眺めた。他人がコンプレックスに思っているだろう部分を見抜いて優越感に
浸る女特有の表情で、横山ノック状態に永久脱毛された頭、全剃り永久脱毛された眉、豚鼻に整形された鼻、
全抜歯された口、脂肪吸引でナマコがへばりついたようなしわしわの垂れ乳にされた乳房、焦げ茶に色素が沈着
したブツブツの巨大乳輪、肥大化した焦げ茶の乳首、永久脱毛されたパイパンの恥丘、ビラビラで真っ黒くされた
グロマン、黒く変色した肛門を、楽しむみたいに眺めていく。
「もう二度と美人面できないね。可哀想。私なら死んじゃうなあ。こんなになったら生きてけな~い」
 何も言い返せなかった。取り返しのつかない身体。もうどうしていいのか分からない。誰もがうらやむ女神の
美貌は永遠に戻らないの? 天から誰もを見下ろしてきた私が、誰からも見下される女に成り下がってしまうなんて。
悪夢としか思えなかった。


157 :新田美穂 67:2009/11/27(金) 18:12:28 ID:lMEArNyr0
 茫然自失の状態でショックを噛み締めていると、沈黙を嫌うように観客たちが残酷なリクエストを始めた。
女たちの嫉妬と敵意に満ちた声が会場に広がる。
「どうせなら臭い身体にもしてやってよ!」
「美人らしいいい香りしてるのが気に入らないからワキガにしちゃえ!」
「やっちゃえ、やっちゃえ!」
「アソコも臭くしてほしい!」
「そうしたらとことん惨めになるはずよ!」
 何を言い出すの? 私から香りまで奪い去ろうというの? 目に見える美貌だけじゃ満足できず? なぜ観客たち
は一人の人間をここまで貶めることに賛成し、盛り上がれるのだろう。一体何が楽しいの? 私が惨めな気持ちに
なったらそんなに嬉しいの? なぜ私を惨めにしたいの?
「肌が綺麗なのが気に入らないから、ブツブツのニキビ面にしてやって!」
「賛成! 顔も身体もブツブツだらけになればいいのよ!」
「ニキビや吹き出物だらけにしちゃえ!」
 男の観客たちも、「いいね。肌を汚くしてやるのは大賛成!」と同調する。
 美穂は、男たちが同調したことにショックを受けた。なぜ? 私の肌を汚れ物にして何の得があるのよ! 男は
誰でも美人を見たら喜ぶものでしょ。テンションが上がるんでしょ。私みたいな絶世の美女と言葉を交わしたら、
それだけで何日か幸せ気分ですごせるんじゃないの? なのになぜ? なぜ私の美貌を奪いたがるの? 私が
毎日毎日磨いてきた白磁器のような肌をブツブツにして何が嬉しいの? ブスは存在自体が罪のはずでしょ。
美人は正義でしょ。ブスがやったら不快で迷惑で鬱陶しいことでも、美人がやれば嬉しくてありがたいものになる
でしょ。今の世の中、ブスが忘れ物したら『最低限の能力が欠如した馬鹿』で、男も忘れたものを貸すなんて
迷惑極まりないからウザがるけど、美人が忘れ物したら『おっちょこちょいで愛嬌のある可愛い子』で、男は我先に
と忘れたものを貸して仲良くなるきっかけを作ろうとする。誰もが美人を望んでいる。ブスは世界から一掃されれば
いいと思っている。なのに、最高の美人を醜くする意味なんてあるの?


1

176 :新田美穂 68:2009/12/02(水) 10:43:09 ID:l50ihOqA0
 観客の提案に対し、一人の美容整形外科医が困った顔でマイクを持ち、説明した。
「うーん、これは弱りましたね~。リクエストを実行したいのは山々なんですが――」
 美容整形外科医がそう言ったとき、美穂は『そこまでは現代医学でも不可能なんです』と続くものだと思った。
「――匂いや肌となると、一朝一夕ではいかないんですよね。今実施しても、効果が出るのは数週間先なんですよ」
 予想した台詞とは違ったものの、安堵した。その場で効果を見られないなら観客が賛成するはずがない。連中は
目の前で罰ゲームを受ける被害者を見て楽しみたいだけなのだから。
 しかし、観客たちは「それでもいいよ!」と一斉に叫んだ。「臭く汚くなるなら全然オッケー!」
 美穂は信じられない思いで観客の声を聞いていた。連中はその場かぎりの罰ゲームを見たいんじゃなく、
勝ち組人生を歩んできた私が永遠に不幸になればいいと思っているのか。
 そんなことして何の得があるの?
「早くやっちゃって!」
「二度と美人面できないようにしちゃえ!」
 観客の中に聞き覚えのある声が混じっている気がした。大学の同期生の女たち数人の声にも思えた。
「じゃ、ま」美容整形外科医がアタッシュケースを取り上げた。「せっかくだから観客のみなさんのリクエストに
応えましょうか。成果が見られないからつまんないでしょうし、施術はさっさと終わらせちゃいますよ。大丈夫。
病気なんかにはならないから。ただ臭くなるだけ」
 ただ? 女にとってアソコが匂うってことがどれだけつらいか知ってるの? 冗談じゃない。グロマンに相応しい
悪臭が漂っていたらどうなる? 男は萎えるだろう。性器の形が奇怪でも、女の穴だから自分で処理するよりは
ましだろう、と思う男ですら、穴を使いたいと思わなくなるんじゃないの? そんな程度の男にすら避けられる
アソコにされたらもう生きていけない。
「即効性はないんで、しばらくは美しい匂いと肌で生活できますよ。それに、施術したからといって必ず
効果が出るわけじゃなく、発生のリスクが30倍くらいに高まるだけなんです」


177 :新田美穂 69:2009/12/02(水) 10:46:41 ID:l50ihOqA0
 別の美容整形外科医がゴム手袋をはめ、ガラス製の小瓶を取り出して蓋を開けた。傾けて液体を指に垂らす。
茶色いクリーム状の液体が指先に盛り上がる。
「これはね、膣内のデーデルライン桿菌っていう善玉菌の働きを低下させる薬剤と、ガルドネレラみたいな細菌を
混ぜ合わせたものでね。早い話、デーデルライン桿菌が減少したら雑菌を殺せなくなるから、悪臭のもとになる
細菌が繁殖するってわけ。あっ、洗っても無駄だよ。洗ってどうにかなるくらいなら、細菌が原因の膣炎だって
洗うだけで治せることになっちゃう」
 美容整形外科医が指先を股の間に近づけてくると、美穂は叫び声を上げた。
「ふざへないへよ、ばかっ! ゆ、ゆるしゃないから!!」
「強力な雑菌だから薬でも死なずに何年も常駐し続けて、日々繁殖するんだ」
 美容整形外科医の指が容赦なく膣内に挿入された。
「ひっ!!」
 菌入りのクリームを塗られる不快感――生理的な嫌悪感があった。
 膣内の壁をまさぐるように指が動いている。まんべんなく塗り込めるつもりだろう。
「ひゃ、ひゃめへっていっへるでしょ! ころふわよ! ぜっはいころひてやるんだから!」
 一通り塗り終わって指が抜かれると、美穂は肩で息をしながら美容整形外科医を睨みつけた。男はひるんでも
いないようだった。こんな貧弱な体の中年男、手足さえ自由なら両腕の骨くらいマッチ棒みたいにへし折って
やるのに!
「じゃあ、次は脇だね」美容整形外科医はしれっとした顔をしていた。「ワキガはね、アポクリン汗腺が分泌する液体
を細菌が分解することで起こるんだよ。だから薬でアポクリン汗腺の分泌力が過剰になる体質に変えてしまう。その
後は細菌をすり込むだけ。手術治療でも完全に治すことはできないからね。アポクリン汗腺をできるだけ切除して汗
の量を減らして、悪臭を軽減させるのがせいぜいだから」


178 :新田美穂 70:2009/12/02(水) 10:48:12 ID:l50ihOqA0
 恐怖心やショックを煽るように言うと、注射器に液体を吸い上げ、静脈に針を刺した。腕は二人の美容整形外科医
に押さえられているせいで動かせない。ポンプが押し込まれ、正体不明の液体が体内に消えていく。
「ば、ばひゃなまねはひゃめて!」
 抵抗もむなしく液体は全て静脈に流し込まれた。
「効果は抜群だからね~。これで多汗体質に変わっちゃうよ」
 美容整形外科医は別の容器から粘着質の液体を掬い取り、スベスベで綺麗な脇に塗り始めた。脇を締めようと
腕に力を込めるも、革製のベルトで大の字に拘束されているため、無駄な足掻きだった。
「皮脂腺に入り込んで増殖するから洗っても駄目だよ」
 美穂は美容整形外科医を睨みつけた。美が台無しになるリスクを高める施術なんて信じられない。発症したら
私は一体どうなってしまうの?
「さてと、最後のリクエストだね。肌、か」美容整形外科医は懐中電灯にも似た照射器を5つ取り出した。「ニキビの
原因って何か知ってる? 肌の質も影響してるけど、薬の連用や洗いすぎも原因になるんだよね。でも一番悪影響が
あるのは細胞を傷つけるレーザー照射なんだ。医療行為でよく使われるあれ。正常な肌機能が低下するんだよね」
 だから何なのよ。私にそんなことしたら絶対許さないから。私の頼みなら喜んできいてくれる男たちに命じて
復讐してやるから!
 美容整形外科医はマイクを持ち、「施術に興味がある人はいますか!?」と観客に呼びかけた。大勢の人間が
名乗りをあげ、5人が選ばれた。全員が女だった。女子高生から中年女までと年齢層が広い。誰もが男から
告白された経験もなさそうな顔立ちだ。こんな下品な顔した連中に嬲られるなんて……。
 照射器を受け取った5人は、クリスマスプレゼントを貰った子供の顔をしていた。
「これで光を当てるだけで汚い肌になるんでしょ? 面白そー♪」
「吹き出物ができるリスクが30倍だって」
「染み一つないこの脚、見てると何だかムカつくのよね~」
「肌もホント綺麗。私なんかさ……」


179 :新田美穂 71:2009/12/02(水) 11:11:24 ID:l50ihOqA0
 努力もしないで他人に嫉妬する人間は最低! 私は、寝転んでお菓子を食べながら漫画を読んでばかりいるような
ズボラ女とは違うのよ。自分の美貌を自覚してからの10年間、合計20000時間近くは美容に費やしてきた。
毎日毎日、一日も欠かさず美を磨いてきた。ぐうたら食っちゃ寝、食っちゃ寝してきたあんたたちとは身体の価値が
違うのよ! ドブの中の石ころと、ショーウインドーの中の宝石くらい違うんだから!
 悔しさを噛み締める間もなく、女たちがスイッチを入れてオレンジの光を照射はじめた。
「私、顔をいただくわ」中年女が愉悦に満ちた顔で言う。
「じゃあ、私はこの太もも!」
「え~、じゃ、私は肩で我慢する」
 ひいっ、よってたかって何よ! 何すんのよ! 
「ひゃ、やめなしゃいよ! あんひゃたちにわはしのはだのかちがわはるっへいうの?」
「もう充分幸せな人生を満喫したでしょ」中年女は才能と努力不足で不幸になった自分の人生を呪うような口調で
美穂の顔に照射を続けた。「あたくしは下民とは違うのよ、みたいな顔してさ」
「あんひゃたちみたいなたにんをきずつけるにんげんにそんざいかひなんへないのよ!」
「あんたに言われたくないわよ」
「わはしはね、あるひてるだけで、みちゆくひとたひをしあわへなきぶんにしてきはのよ!」
 女たちはますます敵意と嫉妬にあふれた顔をし、光を顔に、胸に、腹に、脚に、当てていく。
 美穂は照射から逃れようと身体をよじり、顔を背け、脚を揺り動かした。女たちは「きゃはは」と笑いながら、
血統書付きの猫をいたぶる野良犬の顔で照射を続けた。中年女は二重顎を震わせながら陰険に冷笑している。
自分には永遠に取り戻せない”若さ“を持つ女に――自分には生まれたときから与えられなかった”美貌“を持つ
女に、嫉妬しているのだろう。
「ほ、ほんひょにひゃめてよ!」
 嫌がれば嫌がるほど、女たちは陰湿な笑みを浮かべ、光を縦横に動かした。


180 :新田美穂 72:2009/12/02(水) 11:12:23 ID:l50ihOqA0
 オレンジ色の光の輪が頬を襲い、胸元を襲い、へその周りを襲い、腰元を襲い、太ももを襲う。腰を浮かして身を
ひねると、丸みのあるヒップに光が当てられる。もう逃げることはできなかった。
 15分後、女たちは満腹の表情でスイッチを切った。
「これだけ照射したら、どこかには効果が出るでしょ」
「いい気味だわ」中年女は豚みたいに鼻を鳴らした。「ざまあみろよ。ああ、爽快!」
 私の輝く人生に嫉妬するなんて最低。あんたみたいな日陰の女は、まぶしい太陽から目をそらすようにして
分をわきまえながら生きていればいいのよ!
 美穂にとってニキビや吹き出物のリスクを背負うことは、HIVと同じようにショックなことだった。陽性に
なったらいずれ訪れる災厄に怯えながら生きていかなければならない。それは幸せを掴んだとたんにやってくる
可能性だってある。
 大の字に拘束された美穂は、息も絶え絶えだった。

「そろそろ敗者への罰ゲームも許してやろうかな」
 利尿剤を盛って勝った久恵が、チャンピオンベルトを腰に巻きながら言った。
 ああ、これで開放されるのか……。
 取り返しのつかない罰ゲームを実行されたにもかかわらず、美穂は安堵を覚えた。永遠に続くように思えた
ブス整形のリンチ。ようやく開放される。安堵したら反抗心や気力は全て消えうせてしまった。
 屈強な男3人が皮製ベルトを外すと、美穂はしばらく大の字になったまま動かなかった。いや、動けなかった。
全身を打ちのめす疲労感、絶望感、そんなものがない交ぜになり、身体を起こすのさえ億劫だった。
「ほら、美穂。最後よ。私と戦った元チャンピオンとしてポーズをとりなさいよ」
 美穂は久恵を見た。一体何を言っているの?
「自慢のポーズも忘れたの? リングインしたときと勝ったときとするでしょ」


181 :新田美穂 73:2009/12/02(水) 11:13:35 ID:l50ihOqA0
 久恵に二の腕を掴まれ、強引に立たされた。
「ほら、しゃきっとしなさいよ」
 命じられるまま、数え切れないほどとってきたポーズをとった。両手をウエストに添え、腰を右側に少しスライド
させ、なだらかな体のラインを強調する。いつもの決めポーズだった。グラビアアイドルさながらの絵になると
自覚していたポーズ。しかし今は違う。
 スラリと伸びたモデル同然の美脚、丸みを帯びた鮮やかなラインのヒップ――完璧なスタイルを下から順に
見上げていくと、黒く変色したビロビロのグロマンと無毛の恥丘があった。引き締まったウエストと可愛らしい
へその上には、醜い惨めな垂れ乳があった。肌色のナマコ状態の二つの乳房は真下に垂れ、腹にへばりつき、
焦げ茶色の肥大化乳首が矢印のように地面を指し示している。悲惨な胸が圧倒的な存在感を示しているせいで、
非の打ち所のない身体もくすんでいた。シャープな顎のラインと、二重で大きい瞳が綺麗な美顔には、豚の鼻と
歯抜けの口、波平頭があった。
 足元には、いまだ光り輝く美髪の絨毯が敷き詰められている。背中全面を覆うほど豊かに流れ落ちていた自慢の
黒髪の死骸だった。それは10年の人生を終え、リングに無残な死に様を晒していた。失ったものの大きさに
悲しみが突き上げてくる。
 格好いいポーズと醜い身体のアンバランスさに観客が爆笑した。リング下からはフラッシュが焚かれる。
 女として最も光り輝いていなくてはいけない部分――長い黒髪、筋の通った鼻、真っ白い歯、美しい声、
豊満で形のいい乳房、桃色の乳首、整った陰毛、サーモンピンクの女性器――を全て奪い尽くされ、惨めな醜女に
貶められてしまった。
 ああ、私はこれからどうしたらいいのだろう。
 醜い身体でグラビアポーズをとりながら、美穂は漠然と考えていた。



200 :新田美穂 74:2009/12/06(日) 15:40:11 ID:Lb2f4RDw0
 男なんて高級和菓子にたかるハエのように群がってきた。和菓子の価値が落ちたら困るから、何十匹もハエ叩きで
叩き潰してきた。私以外の女なんて大半はそんなハエがお似合いのブサイクな連中だった。女神の美貌の前では
誰もが霞んでいた。それなのに高級和菓子はたかるハエに汚く貶められてしまった……。
 開放された美穂は控え室に駆け込んで服を着込み、顔にシャツを巻いて容貌を隠し、逃げるように会場を出た。
タクシーを拾い、運転手から奇異なものを見る目を向けられながらも、マンションに帰った。
 住み慣れたマンションの自室に入ったとたん、現実に引き戻され、動揺した。試合会場は異様な雰囲気だった。
誰もが麻薬中毒者さながらハイになり、敗者にはどんな罰でも許されるような空気が充満していた。だから、
信じがたいほど非人道的な目に遭わされても、どこか非現実世界の出来事みたいに感じていた。しかし、自室に
戻ると、失ったものをいやでも実感させられた。
 部屋には数多くの表彰状やトロフィーや写真が飾ってある。栄光の軌跡だった。中学で優秀な成績を収めて
表彰され、空手の大会で優勝し、高校のミスコンで優勝し、地区対抗の水泳大会で準優勝し、テニスの県大会で
ベスト4。完璧な人生のハイライトがここにある。絶世の美女が金色の王冠を頭に載せている写真、空手着姿でも
女らしい見事な肢体が想像できる姿で表彰台に立っている写真、水着姿で銀メダルを掲げて笑っている写真、
引き立て役にすらならない部活仲間たちとテニスウェアで写っている写真――どれもが過去の栄光で、今後は一生
手に入らないものだった。
 高校の教師が殺されたというニュースを聞いたとき、周囲の目をひきつけたくて涙を流したことがあった。
そんなときは、顔の造作を全く崩さず、長いまつげを伏せ、目元から真珠のような涙を一粒、流して見せた。
新聞記者が迷わず写真を撮り、翌日の一面を飾った。『教え子の悲痛』という見出しとともに。
 一時的に学校に問い合わせの電話が――あの美少女は誰かという電話が相次いだという。当然のことだから、
私の崇拝者が盛り上がっても気にせず、澄まし顔で椅子に座っていた。
 常に美しい私。そんな私はもういない。


201 :新田美穂 75:2009/12/06(日) 15:46:14 ID:Lb2f4RDw0
 今日はもう寝よう。今は何も考える気になれない。
 洗面所へ行き、超ミクロの特殊スポンジが先端に付いている歯ブラシと、亜塩素酸ナトリウム配合の専用液を
習慣で取り出し、美穂はあっと声を漏らした。そうだった。毎日朝昼晩と磨き続けてきた輝く歯はもうないんだ。
自業自得で私に鼻をへし折られた男の逆恨みで全抜歯が提案され、観客30人に次々と抜かれたんだった。
 ああ、私の輝く歯が……鏡の前で笑顔を作るたび、蛍光灯の光にきらめいた真っ白な歯が……私にはもうない。
一生ない。この超ミクロの特殊歯ブラシも専用液ももう使うことはない。
 怖くて鏡を見ることができなかった。
 美穂は疲労感に打ちのめされた。寝室に行き、ベッドに倒れ込むと、泥のように眠ってしまった。
 目覚めたのは昼の4時だった。長い悪夢を見ていたようだった。上体を起こしたとき、枕の上方から
引き連れられてくる黒髪の重みがなかった。いつもなら起き上がったとたん、背中一面にファサッと美髪の感触が
あるのに……頭は不自然に軽い。
 美穂は動悸を覚えながら、恐る恐る自分の頭部に手をやった。20年間、あって当たり前だった感触がない。
極細の絹糸を梳くような感触の代わりに、ゆで卵を撫でたような感触があった。
「ひっ、ひいっ!」
 悪夢の記憶がよみがえる。椅子に拘束され、久恵が近づいてきた。背中全面を覆いながら腰元まで流れ落ちる
黒髪をニヤニヤ見つめながら、バリカンのスイッチを入れる。凶悪なモーター音が頭に迫る。頭髪のど真ん中に
刃が滑り込み、長さ1メートルの髪の束がバサバサと足元に落下する。ハサミがサイドの髪も短く切り刻む。
ショックから立ち直る間も与えられず、ドイツ製の永久脱毛剤が塗られた。刻一刻と時間が過ぎ、他人の気持ちを
想像できない無神経な観客たちが楽しむようにカウントダウンする。5分後、髪は毛根から脱毛し、青白かった
頭部が肌色のハゲ頭になった。耳にこびりついて離れない爆笑、嘲笑。
 自慢の美髪は永遠に奪われてしまった。


202 :新田美穂 76:2009/12/06(日) 16:04:18 ID:Lb2f4RDw0
 美穂は重い腰を上げ、鏡台の前に立った。勇気を振り絞って鏡を覗く。豚鼻で眉なしの波平頭があった。目も
輪郭も肌も美顔を保っているのに、鼻は真正面を向いて大きな穴を主張し、頭はサイドに黒髪を残して無残に
禿げ上がっている。
 信じられない姿だった。
「ひひゃあああっ!」
 美穂は絶叫し、鏡の前から逃げ出した。髪が……髪が……私の髪が……こんなの私じゃない。
 しかも惨めなことに悲鳴も舌足らずだった。美穂はショックに打ちのめされ、ベッドに突っ伏した。一人で自室に
いながらまともに喋れない――それは、別世界のような会場にいたときより怖かった。これは現実だった。
「わひゃひのこへはどうなっへるの?」
 声に出してみた。赤ん坊と老婆を足して2で割った声。喋れない。誰にも意思を伝えられない。これが毎日毎日、
死ぬまで続くの?
 心臓が苦しくなり、息も満足にできなくなった。
 悲しみやショックは次第に怒りに変わった。会場にいた全員を憎く思った。許せない。
 久恵や坂田や中年オヤジや女子高生たちは、面白半分の復讐心と嫉妬で私の美貌を奪った。観客たちは一時の
ノリで私を惨めな姿にすることを望んだ。誰もが、楽しければいいや、勝ち組女の不幸は痛快だ、という醜い
興奮を満たすために好き勝手を言い、残酷なアイデアを次々に提案したけど、それらを実行された私はその姿で
これからも生きていかなきゃならない。
 観客の誰もがもう私のことなんか忘れて日常に戻っているだろう。ああ、勝ち組女の惨めな姿を楽しんだ、と
一日に満足しながら。せっかく罰ゲームに参加できるんだから参加しなきゃ損だ、みたいなノリで名乗りを上げた
連中は、抽選に当たると、1人1本ずつペンチで私の歯を抜いた。商店街の掴み取りで商品をゲットしているような
気軽さで。
 私の歯を面白半分で抜いた連中は、今ごろ楽しく友達と遊んでいるのだろう。だけど、私の人生はあの一日では
終わらない。誰も思い至らなかったのだろうか、私の人生はずっとずっと続くことに。


203 :新田美穂 77:2009/12/06(日) 16:10:33 ID:Lb2f4RDw0
 悔しかった。観客たちのたった一日のストレス解消のために自分の一生が――未来が――希望が、全て
踏みにじられ、台無しにされたことが。それとも何? 観客の誰よりも恵まれた人生を20年間も送って
きたんだから、残りの人生は誰よりも惨めで悲惨に生きろ、それが公平だろ、とでも言いたいの?
 勝ち組の人生に選ばれた女神が勝ち組のまま生きて何が悪いのよ! 生まれたときから人生の勝運に見放された
醜い人間たちは、本当に最低。心まで醜いなんて。
 美穂は空腹を覚え、冷蔵庫を開けた。美容のために毎日食べているリンゴが4つ切りにしてある。一切れ取り出し、
齧った。柔らかな歯ぐきと歯ぐきがリンゴを挟んだだけだった。噛み切れない。何てことなの。
 美穂はショックを受けた。
 冷蔵庫から伊勢海老を取り出し、ナイフで身を切って口に入れる。身が口の中で軽く押し潰されただけだった。
 美穂は思わず海老を壁に投げつけた。激突した瞬間、殻が砕け、そして床に落下した。好きなものもおいしいもの
も食べられない。以前は、朝は野菜中心の食事を軽く食べ、昼は学食ではなく男の奢りで大学裏のイタリアン
レストランに行き、夜は同じく男の奢りで老舗の日本料理店に行った。カロリーや栄養を気にしながらも、最高の
食事をしてきた。なのに今はリンゴ一つ海老一つ齧れない。
 惨めすぎる。私をうらやむ連中もこんな惨めさは経験したことがないはずだ。低俗な連中が今の私の姿を見たら、
一体何と言うだろう。いい気味? ざまあみろ? 可哀想?
 悔しさに唇を噛み締めたいのに、歯がない。
 美穂は夕方まで呆然としてすごした。空腹に耐え切れなくなると、帽子を目深にかぶり、マスクで顔を隠し、
コンビニへ行った。豆腐やウィダーインゼリーを購入した。噛まずに食べられるものを買うしかない。
 部屋に戻ってウィダーインゼリーを吸うと、袋がしわしわに縮んだ。自分の口元や乳房を連想してしまい、
吐き気を覚えた。


204 :新田美穂 78:2009/12/06(日) 16:11:49 ID:Lb2f4RDw0
 一番惨めな気持ちになるのは、お風呂に入るときだった。服を脱ぐと、黒く変色した性器やナマコみたいに垂れた
乳房が嫌でも目に入る。眉毛の先から爪の先まで完璧に手入れし、磨いてきた身体の成れの果て。私を見た男全員を
魅了し、私を見た女全員を嫉妬させた身体だったのに。
 浴室の鏡は取り払ってあるが、胸や股間は鏡がなくても見えてしまう。最悪の気分だった。誰もが女神扱いした
私の美貌が奪われてしまった。ゴミ箱に捨ててもいくらでも代わりがいるような連中の嫉妬のせいで。
 入浴時には細心の注意が必要だった。足の指の爪を剥がされた部分にお湯がかかると、剥き出しの神経にハンダ
ゴテを当てられたような激痛に襲われるため、足をビニール袋の中に入れて足首の部分をゴムで縛り、即席の防水
対策をしなければいけなかった。浴槽に浸かるときも大変だった。まず大理石の両縁を両手で掴み、体操競技の
平行棒をするみたいに全身を支え、下半身を持ち上げる。真横から見たらV字だ。その体勢のまま徐々に体を沈め、
腰からお湯に浸かる。両足のふくらはぎから先はお湯から出していないといけない。
 美穂は垂れている乳房を持ち上げてみた。びろーんという感じで張りがない。手を離すと、ナマコ乳房はペタッと
腹に落ちた。
 何で私がこんな目に――。
 お風呂に入るたび、そう思ってつらくなる。以前は時間をかけて丁寧に洗っていたのに、今は適当に終わらせて
いる。美肌を保つためのケアを頑張って続けても、豚鼻や垂れ乳が治るわけでもましになるわけでもない。醜い
身体をいくら磨いても、人間には及ばないのだから――こんな卑屈な考え方をする自分がいやだった。惨めだった。
 勇気を持ち、愛用の洗顔クリームで顔を洗った。手のひらが撫でた感触――豚鼻の感触にショックを受け、
顔に泡をつけたままベッドに駆け戻り、布団に潜り込んで泣いた。
 女神の美貌が……グラビアアイドルすらうらやむ私の美貌が……。
 化粧品類、美容グッズ、ブランド物の衣服やバッグ――全てがガラクタに見えた。これらは美人にこそ似合う
品々だ。高級な衣服も化粧も美人が身に着けるから映える。世界の華となる。なのに……。


205 :新田美穂 79:2009/12/06(日) 17:15:24 ID:Lb2f4RDw0
 人間としての自信を奪われ、鏡を見るのに耐えられない。前は化粧しているときが一番楽しかった。自分が最も
美しく見える角度を探し、決め顔を作る。なのにもう今は無理。どんな表情も滑稽に見えるだけだ。そうか、ブスは
こうやって笑顔が死んでいくのか。
 翌日になると、専門店で毎月購入している『薬用バージンピンク』を取り上げた。これは、メラニンの生成を
抑制し、乳首と乳輪を桜色に保つ製品だった。7年間の愛用品だ。中学に入学したころから、汚い乳首の女に
ならないよう、毎日、乳首と乳輪とアソコに塗っていた。
 美穂は乳房を見た。腹にへばりつく垂れ乳の先端には、肥大化した乳首と巨大化したブツブツの乳輪があり、
焦げ茶色の色素が沈着している。下品な色と形に変わり果てている。毎日毎日、欠かさず手入れして綺麗な桜色を
維持してきたのに、一日にして――陰湿な器具で十数分照射されただけで台無しにされてしまった。
 自慢の身体だったのに……。
 久恵が整形の希望を募る投票用紙を観客に配ると、リクエストには、『桜色の乳輪を大きくして焦げ茶色のブツブツ
乳輪にしてやれ。そうしたら気持ち悪いはず』とか『乳輪も乳首も色素を沈着させて焦げ茶色にしてほしい』とか
『乳輪も大きく色も汚く!』とか書かれていた。私が悲しむ姿を見たいサディストの男か、私の美貌に嫉妬する
女か、いずれにしても、生徒が作った粘土細工の女神の彫刻に醜いパーツを付け足す悪戯でもするような気軽さで
書かれたリクエストだった。
 私が7年間、桜色の乳首を保つためにケアを続けてきた事実を知っていたら、連中はリクエストしただろうか。
 投票用紙には、『ついでにオマンコもヒダをビロビロにして色素を沈着させ、真っ黒くして』と書かれていた。
“ついでに”って何よ。ケーキを注文した後に果物を一個つけてほしい、と頼むような軽さじゃない。おまけ
みたいなノリで私のアソコは黒く変色させられたの? 他の投票用紙には、『まんこもケツ穴も汚くしてやって
くれ!』とか『オマンコと肛門を黒くするのもいいな』とか書かれていた。誰もが私の毎日の努力を知らず、
そんなことをされたら私がどれだけショックを受けるか想像もできず――いや、それとも、私がどれだけショックを
受けるか想像できたからこそリクエストしたのだろうか。


206 :新田美穂 80:2009/12/06(日) 17:18:29 ID:Lb2f4RDw0
 観客のリクエストを実行してレーザー照射したのは、自分の冴えない人生を私に責任転嫁する痴漢の中年
オヤジだった。最低の人間だった。女の美を傷つけるようなクズだから、そんな性根を見破られて疑われ、
同僚や妻子から嫌われ、捨てられるのよ!
 美穂は悔しさを噛み締めた。
 7年間の地道な努力がたった十数分で台無しにされるなんて。
 悪夢としか思えなかった。
 美穂は苛立ち、『薬用バージンピンク』を壁に投げつけようと振りかぶった。そこで思いとどまる。
 一縷の望みを抱き、無意味と知りながらも焦げ茶色の乳首と乳輪と黒いアソコにクリームを塗り始めた。
『薬用バージンピンク』は綺麗な色を保つためのクリームであって、茶色くなった色をピンクに戻す薬ではない。
それは分かっている。分かっているけど、塗らずにはいられなかった。
 焦げ茶色に変えられてしまった乳首と黒く変えられてしまったアソコ。
 私の7年間の努力は一体何だったの?

 今はとにかく悲惨な部分を隠す方法が必要だった。
 美穂はパソコンを起動させて専門店のHPへ行き、理想のウィッグを探した。背中の真ん中まである人毛の
フルウィッグは10万円だった。
 アデランスのようなところに行けば良質のカツラが作れるかもしれないが、スタッフに頭を見せたくない。以前の
私からしたら雑草にしか見えない容姿の女に対応され、哀れみと優越感のチラつく顔で診察されたくない。エステ
でも主導権を握るのは私だった。エステティシャンは私の美貌に感嘆し、ガラス細工を扱うように私の身体に恐る
恐る指を触れる。それなのに、カツラや育毛の専用店に行き、見下されながら治療されるなんて絶対に耐えられない。


207 :新田美穂 81:2009/12/06(日) 17:20:20 ID:Lb2f4RDw0
 3日後、眉を描くと、届いたフルウィッグをかぶった。手のひらで鼻と口を隠し、恐る恐る鏡を覗き込んだ。
そこには以前の顔があった。流れる黒髪、弓なりにカーブする眉、アーモンド型の大きな目、シャープな顔の
ライン――残念ながら、髪は、毎日の絶え間ないケアで磨き上げた美髪には及ばない。昔の私が一日入浴を
怠った後で鏡を見たらこうなっているだろう、という髪質だ。でも、輝く髪を毎日見てきた私だから差に
敏感なだけで、他人の目には以前と同じに見えるだろう。
 美穂は垂れきった乳房を二つに折り畳むと、パッド入りブラの中に押し込んだ。外見上は美乳に見える。
 最低限の体裁は整えられた。
 美穂はマスクで鼻と口を隠すと、歯科医院を訪ねた。総入れ歯を作るためだった。受付の女にも口は見せず、
来院目的を書いたメモを見せるにとどめた。50歳くらいの歯科医は、美穂の口を見たとたん、驚きの顔で固まった。
一体どうされたんですか、との質問には、事故に遭ったの、と説明した。口から出た声は、『ひこにあっはの』と
聞こえた。それでも意味は通じたらしい。
 20歳の女子大生の身で総入れ歯――これほど惨めで情けないことはないだろう。自分の歯で何も噛めない。
二度と輝く真珠の歯は戻らない。ショックな現実だが、総入れ歯は必要なことだった。
 美穂は顎関節の徹底した検査を受け、治療方針を聞き、カウンセリングを受けた。
「製作には時間がかかりますよ」
「さいたんでつふって。こんひゃこえじゃ、せいかふもできはい」
「うーん、最短だと1週間、ですね」
 妥協するしかなかった。1週間なら大学を休んでも留年することはない。

 それからの1週間、美穂は電話にも出ず、チャイムも無視して引きこもってすごした。大学の友達数人が
『大丈夫? 病気か何かなの?』と訊いてきたメールにだけ返信した。
『風邪をひいただけ』




212 :新田美穂 82:2009/12/08(火) 17:53:38 ID:7fGAFFwl0
 夜になると、自然にため息が漏れた。
 今日もお風呂に入らなきゃ……。
 今まではお風呂が大好きだった。体を綺麗にし、美を保つための入浴。しかし、今は違う。入浴には一日分の
勇気を振り絞り、決意しなくてはいけない。
 美穂は浴室の電気を消し、スチール缶に入った細いアロマキャンドルに火をともした。
 真っ暗な浴室内を炎が淡く照らしている。蛍光灯の豆電球よりも暗いため、最低限の視界しかない。腕や足の
先は薄闇の中に溶け込んでいる。垂れた乳房やビロビロにされた性器をはっきり見ずにすむようにだった。
自慢だった身体は――日々磨きがかかる身体は毎日見ても見飽きなかったのに、今では電気を消した部屋でしか
服を脱げない。悲惨すぎる。悲しすぎる。
 その場かぎりの興奮のために私の輝く人生を奪った観客たち。本当に最低。私はあなたたちとは違うのよ。
毎日毎日光の世界の中心になって生きてきた。それをこんな姿にするなんて……。
 美穂は暗いバスルームで衣服を脱いだ。ブラを外すと、二つ折りにしていた乳房が垂れて腹にペタッとへばりつく
感触があった。極力身体の惨状は想像しないようにした。ウィッグを外し、全裸で浴室に入る。
 暗闇の中だと、少し気分が落ち着いた。鏡がないから無毛の頭は見えないのに、蛍光灯の明かりに晒しているのが
耐えられなかった。明るい中だと、無防備で惨めで恥ずかしい。“暗くて見えない”という事実がいくらかの安心感を
与えてくれる。
 美穂は浴槽には浸からず、身体を洗い始めた。以前は入浴がリラックスタイムだった。マロニエエキスや
ヒアルロン酸配合の入浴剤を入れ、お湯でほぐれた肌の角層深くに成分が浸透して蜜肌を作る湯に30分は
浸かった。蜂蜜のようになめらかで輝く肌を生むために。優美なローズの香りを身にまとうために。でも、今は
違う。全裸は最も惨めで屈辱的な状態だ。1分でも早く服を着たい。ウィッグをつけたい。髪のない頭や垂れた
乳房を隠したい。


213 :新田美穂 83:2009/12/08(火) 17:55:42 ID:7fGAFFwl0
 暗闇の中で目をそらしながら性器を洗った。焼肉用の生肉が二つ垂れ下がっているような感触があった。
手のひらでボディーシャンプーをこすりつけるたび、ビラビラのラビアが左右にめくれた。醜く変形した陰唇を
いやでも実感させられた。
 涙をこらえながら洗うと、今度は泡立てた専用タオルで胸を洗った。パッド入りブラの中で二つ折りにしていた
乳房は、折れ目の部分に汗が溜まって汚れているだろう。触るのさえいやでも丁寧に洗わなくてはいけない。
 ナマコ状態の乳房を持ち上げ、腹部にへばりついていた裏側をタオルで洗った。脂肪が吸引されたせいで皺に
なっている部分も汚れが溜まりやすい。そこも丁寧に洗った。触っているだけで涙がこぼれ落ちそうになる。
 全身を洗い終えると、毛穴に詰まった汚れも落とせるマイクロバブルシャワーで泡を流した。
 美穂は惨めさを噛み締めながら、50mlで5万円の天然ハーブのシャンプーを手のひらに出した。こんな
高級なシャンプーで何を洗うっていうの?
 卑屈な気分になりながらも、手のひらで泡立てて頭に“塗った”。ツルツルした感触だった。石鹸のせいで
小鳥も足を滑らせそうなほどだ。死にたい気分になる。
 以前の20分の1の時間で髪が洗えてしまう。その事実がショックだった。
 シャワーで流し終えると、もう何度目かも分からないため息をついた。セクシーに見えた私の濡れ髪はもう一生
見られない。感触で頭の状態が想像できてしまう。今は肌色の頭皮に水滴が散らばっている光景があるだろう。
風呂上りに鏡を見て悦に入ることはもうできない。
 私はもうずっとこんな惨めな思いを噛み締めていかなきゃいけないの?
 美穂は一度浴室から出ると、ウィッグを持って戻ってきた。
 これも洗わなきゃ――。
 美穂は薄闇が漂う浴室でタイルにペタンと尻を落とすと――正座に近い格好だ――、水を入れた洗面器にダメージ
ヘア用シャンプーを溶かし、真っ黒の人毛ウィッグを浸した。タイマーをセットし、10分経つまで身じろぎせず、
洗面器の中のウィッグを見つめ続けた。


214 :新田美穂 84:2009/12/08(火) 18:08:04 ID:7fGAFFwl0
 タイマーが鳴ると、ブラシを使い、泡立った洗面器の中でウィッグを溶かし洗いした。アロマキャンドルの揺れる
炎が美穂の影をタイルに刻んでいる。サッカーボールを真後ろから照らしているように真ん丸い頭の影が炎に
揺らめいている。バリカンで刈られ、永久脱毛剤でツルツルにされた頭の形だった。
 全裸の美穂は、薄暗い浴室で一人、自分の惨めな頭の影を見ながら、ただ黙々とウィッグを洗い続けた。

 ウィッグを流水ですすぐと、リンスを溶かして1、2分待った。そして、雑巾を絞るように黒々としたウィッグを
絞った。
 3日に1度はこんなふうにウィッグを洗わなくてはいけない。1年で120回、10年で1200回、私は
ハゲ頭を晒しながらウィッグを洗い続けなくてはいけない。惨めすぎる。
 毎日楽しみにしていたお風呂がこんなにも苦痛な時間になるなんて……。
 以前の私はスポットライトや太陽のまばゆい光が似合う絶世の美女だった。華やかさの象徴だった。なのに今は
薄暗い場所のほうが安心する女に成り下がってしまった。輝いていた美貌の身体はもはや存在せず、闇の中に隠して
おきたい醜い身体が残っている。
 風呂から出ると、さっさと身体を拭いた。頭はあっという間に乾いた。毎日30分はかけてケアしていた美髪は
もうなく、剥き出しの地肌はタオルで撫でただけで水気が消えた。パッド付きブラの中に折り畳んだ乳房をしまい、
丸首のロング丈Tシャツを着て、白のショーツと膝丈の灰色のスカートをはいた。普段なら入浴後は堅苦しくない
服を着るのに、今は自分の身体に自信がないせいで外見だけでも着飾らなくては精神の安定がはかれない。
 人毛ウィッグを乾いたタオルで包んで水気を取り、ドライヤで乾かしてかぶり、禿頭を隠した。眉を描く。
これで豚鼻と歯抜けの口以外は昔の美貌をある程度取り戻している。
 美穂は豆腐とおかゆで夕食を終えると、サプリを飲み込んで最低限の栄養を補給した。
 尿意を覚え、トイレに入った。ショーツを下げて太ももの先に絡ませ、洋式便器に腰を下ろす。欲求のままに
膀胱を緩める。次の瞬間、小便がピピピピピッと前後左右に飛び散った。
 嘘!?


215 :新田美穂 85:2009/12/08(火) 18:09:15 ID:7fGAFFwl0
 反射的に腰を上げてしまい、小便が辺り一面に飛散した。
「な、ななななな……」
 慌てて腰を下ろした。
 何が起こったのか分かったのは、排尿を終えてからだった。由紀子や中年オヤジに伸ばされたラビアのせいだ。
尿道を包むように2枚の陰唇が垂れているため、小便が壁に乱反射するみたいに飛び散ったらしい。信じられない
状態だった。シミ一つないモデル然とした太ももに小便の水滴が付着し、膝に絡むショーツまで流れ落ちている。
個室の中にも液体が飛び散り、アンモニア臭が漂っていた。
 おしっこも満足にできないなんて……。
 あまりの惨めさに愕然とした。
 美穂は濡れたショーツと、液体で黒く変色したスカートを脱いで汚物箱の上に置いた。丸首のロング丈Tシャツ
だけの下半身裸でトイレットペーパーを引き出し、太ももを拭いた。陰部の周囲も汚く濡れそぼっている。
 大量のトイレットペーパーを便器に捨てると、一度水を流した。それから便座の周囲やタイルの掃除をはじめた。
誰もがうらやみ憧れる女神のような存在だった私。世界は自分のものだと思って生きてきた私。そんな私が
下半身裸で便器に飛び散ったおしっこを掃除している――自分の滑稽で惨めな姿を思い知らされ、泣きたくなった。
人間としての尊厳は? 
 トイレ掃除には30分以上かかった。それでもアンモニア臭は取れていない。今度、消臭剤を買ってきてトイレに
撒かなくてはいけない。
 次から用を足すときは、両手でラビアを引っ張って尿道を開放しよう。そうしないと、またおしっこが一面に
飛び散ってしまう。
 もう、疲れた。
 今日は寝よう。


216 :新田美穂 86:2009/12/08(火) 18:10:53 ID:7fGAFFwl0
 ウィッグをつけたまま寝ると、髪を痛め、元通りに戻すのに手間隙がかかるという。枕との摩擦でも痛むらしい。
 寝るときは仕方なくウィッグを外してベッドに入った。頭部に枕カバーのザラザラと冷たい感触が触れる。
ツルツルの後頭部に枕カバーがペッタリと張りつくようだった。
 気持ちいいはずの就寝の時間まで惨めさを噛み締めなきゃならない現実に、涙がこぼれそうだった。少し身じろぎ
しただけで頭部に吸いついた枕の生地が追いかけてくる。
 不快感からなかなか眠れなかったが、疲労のせいか、すぐに睡魔に屈した。
 夢の中では、美人で美髪をきらめかせていたころの自分の姿が何度も出てきた。踵を返すたび、陽光に輝く
豊かな黒髪が宙に舞い、音も立てず腰まで流れ落ちてくる。容姿に恵まれない女たちの羨望と嫉妬の眼差し。
男たちの感嘆の声。髪同様に輝いている瞬間だった。
 目覚めると、夢の余韻を引きずり、以前と同じように髪があると錯覚してしまう。だから、身を起こして豊かな
黒髪が背中に覆いかぶさってこなかったとき、半ばパニックに陥ってしまう。夢か現実か。夢が現実であるように
祈りながら頭を触り、昨日と変わらない剥き卵の感触を感じてショックを受ける。
 毎日毎日その繰り返しだった。
 夢の中で髪があるだけに、希望の世界から絶望のどん底に突き落とされる。これなら、夢の中でも髪がないほうが
何倍もましだ。
「も、もうひやああっ!」
 朝が来るたび、現実を否定しようとしても否定しきれず、叫び声をあげた。舌足らずな叫び声を。
 久恵に奪われた自慢の美髪。罰ゲームはその人間が一番大事にしているものを奪うから面白いのだろう。
ゴミ箱に捨てる予定のものを壊しても盛り上がらない。久恵にはそれが分かっていた。だから、私が以前から
人々に見せつけるように翻していた豊かな黒髪を真っ先に狙った――。


217 :新田美穂 87:2009/12/08(火) 19:06:57 ID:7fGAFFwl0
 でも、想像できなかったのだろうか。髪切りデスマッチで選手の大事な髪を剃るのは一瞬。盛り上がるのも
バリカンがうなっているあいだだけ。一日が終わって観客が解散したら、誰もが一時の興奮は忘れてしまう。
髪を失った選手を見て盛り上がることはもうない。丸坊主にされた選手は、試合後もその頭で生活しなきゃ
いけないのに。何ヶ月も、何年も。
 それなのに久恵は永久脱毛剤まで塗布した。そんな行為に何の意味があるの? どっちにしろ観客たちが盛り
上がるのは当日だけなのに。解散したら誰もが興奮を忘れてしまうのに。残されるのは、悲しむ期間が数年から
一生に延長された私の苦しみだけ。
 久恵は私に永遠の苦しみを与えたかったの? だとしたら最低。顔も心も醜い最低女よ。
 そのとき尿意を覚え、トイレに入った。習慣でそのまま排尿しそうになり、慌てて尿道を締めた。
 美穂は両腕を股間の前から回そうとしたが、骨格の構造上、無理があった。前からでは両手を差し入れられない。
仕方なく洋式便器の上で腰を15センチほど浮かし、中腰になると、両手を両太ももの外側から回して左右の
ラビアを掴み、ビロビロの陰唇を横に引っ張った。くぱあっと性器が広がっているのが分かる。
 他人に見られたらあまりに滑稽な格好のまま、美穂は用を足した。
 最悪の気分だった。これからはトイレのたびにこの姿勢をとらなくちゃいけない。

 約束の日になると、美穂は歯科医院を訪ね、色んな説明を受けながら総入れ歯を嵌めた。元通りになったと思い、
診察室の鏡を覗き込んだ。相変わらずの豚鼻だったが、美顔が戻っている。唇や口元の細かい皺は消え、以前の
美しさをほとんど取り戻している。感動のあまり目頭が熱くなった。
「これで私は喋れる。元通りに喋れる」
 声が復活した。喋る際に多少の違和感を覚えるものの、赤ん坊と老婆を足して2で割る声からは解放された。
まともな日本語を喋れるのがこんなに素晴らしいことだったなんて!
 醜いながらも、少しだけ自分の世界を取り戻したことが嬉しかった。


218 :新田美穂 88:2009/12/08(火) 19:08:55 ID:7fGAFFwl0
 笑顔を浮かべてみた。
 ――あれ?
 違和感があった。四角い歯が隙間なくびっしりと並んでいるため、作り物めいている。歯に表情がない。
100万ドルの笑顔は戻っていない。
 喜んだ分、不満足にショックを受けた。でも、仕方ない。そう思わなくてはいけない。歯抜けの老婆顔よりは
100万倍ましなんだから。
「――聞いてますか?」
 美穂は鏡を見たまま「何?」と訊いた。
「唇を必要以上に引っ張ったりすぼめたりしないでくださいね。唇の使い方に注意しないと、入れ歯が浮き上がって
しまいますから」
「何言ってんの?」美穂は振り返った。「もう元通りに使えるんでしょ?」
「入れ歯は魔法の歯じゃありません。必要な注意はあるんです、どうしても。例えば、強く噛む場合は前歯を
使わないで奥歯を使ってください。前歯を使うと入れ歯が外れる可能性がありますから」
「あなた、ヤブ医者? それでお金を取る気?」
「あのねえ、前歯ってのは笑ったときに見える歯なんですよ。不恰好だとまずいでしょ。だから、噛む機能は
二の次にならざるをえないんですよ。優先すべきは外見との調和ですから」
 まあ、確かにそうかもしれない。前歯で噛めてもブサイクな歯になっては意味がない。
「……分かったわ」
 美穂は他にも何点かの助言を受けると、健康保険を適用してもらって2万を支払い、マンションに帰った。
 夜になると、デパートで購入した刺身を食べてみた。
 噛めた!
 美穂は嬉しくなり、味わうように食べた。


219 :新田美穂 89:2009/12/08(火) 19:11:13 ID:7fGAFFwl0
 ――何これ?
 味が変だった。鮮度も質も見極めて買ったのに何で? 冷蔵庫から他の食べ物を取り出し、食べた。同じく味が
変だった。入れ歯のせい?
 美穂は歯科医院が閉まる前に電話し、問いただした。
「あ~、それはですね、総入れ歯の弊害なんですよ。口蓋粘膜や歯ぐきも味を感じる上で重要な働きをしている
んですが、総入れ歯はその部分をすっぽりと覆ってしまいますからね。微妙に味や温度が分からなくなるんです」
「何よ、ヤブ医者!」
 怒鳴って電話を切った。怒鳴らずにはいられなかった。
 入れ歯をしたのに私は一生味わう楽しみを奪われたままなの? 男の奢りで食べたイタリアン、懐石料理、
フレンチ――どれもおいしかったなあ。あの美味は二度と味わえないの?
 美髪を奪われ、歯を奪われ、美貌を奪われ、食事や入浴の楽しみまで奪われた。失ったものの大きさを実感した
とたん涙が出てきた。
 私はこんな仕打ちを受けるようなことを何かした?
 ただ、神様からひいきされて与えられた才能を磨き、相応の幸せを掴んできただけじゃない。
 輝く人生のレールから放り出され、真っ暗なトンネルの中に取り残された気分だった。それも出口の見えない
トンネル。人生の終着点まで闇の中……。
 美穂はお箸で刺身をつまみ、涙の塩味とともに噛み締めた。
 食事が終わると、美穂は浴室から洗面器を持ってきた。水を入れてテーブルに置く。
 歯科医に言われたケアをしなければいけない。
 美穂は右手の親指と人差し指で『C』の字を作ると、口内に差し入れて歯を掴み、上下に揺らすようにして
引き抜いた。カポッと滑稽な音がして総入れ歯が外れた。唇に皺が寄って歯ぐきにへばりついたのが分かった。
美穂は惨めさに打ちのめされながらも、専用の歯ブラシで総入れ歯を磨き始めた。






228 :新田美穂 90:2009/12/10(木) 16:30:11 ID:AAfQ79+d0
 ゴシゴシゴシゴシ……物音一つしない部屋に総入れ歯を磨く音だけが響いていた。
 総入れ歯をひっくり返し、歯ぐきの裏側や歯と歯の合間を歯ブラシで磨く。
 他人には死んでも見せられない姿だった。
 会場に集まっていた観客たちに対する怒りが抑えられない。私の真珠の歯を1本1本抜いていった観客たちは、
コメディ漫画みたいに次の日になったら何もかも元通りになっているとでも思っているんじゃないの? 歯は
抜けたら一生生えてこないって理解してる? それなのに引っこ抜くってどういう神経?
 農家の体験学習で見事に大根を引っこ抜けて喜んでいるような顔ではしゃいでいた女子高生の顔を思い出すと、
両肩を揺さぶって問いただしたい気分になる。私の歯を抜いたことも忘れて友達同士でチョコレートでも齧っている
女たちに言ってやりたい。
 私の今の惨めな状況を知ってる? この総入れ歯を見なさいよ! あなたたちのしたことの結果よ! 私は一生
これと付き合っていかなきゃならないのよ! 分かってるの!?
 観客席から私の全抜歯を提案した低レベルなナンパ男なら、何て答えるだろう。あの下品な負け組男なら、
『せっかくだし俺のモノでもしゃぶれよ』くらい言うかもしれない。私の肘鉄で全ての歯を叩き割ってやったら、
歯を失った私の悲しみの100万分の1でも理解できるだろう。
 逆恨みで私の歯を奪うってどうなの?
 美穂はため息をついた。
 総入れ歯を洗い終えると、水を満たした蓋付きの容器に沈め、保管した。
 本当なら寝るときもつけておきたかった。そうすれば自然の歯がある気になる。でも歯科医に忠告されている。
水中に保管せず乾燥させてしまったら、入れ歯が変形したり変色したりひび割れたりするという。歯肉を休ませる
ためにも夜は外したほうがいいらしい。就寝中も入れていたら細菌が繁殖し、口臭の原因になるとか。


229 :新田美穂 91:2009/12/10(木) 16:31:43 ID:AAfQ79+d0
 美穂は総入れ歯に別れを告げ、寝室に行った。歯ぐきにひっつく唇を意識しながらベッドに入った。
 寝ているあいだに顎の筋肉が衰え、口元が老けていったらどうしよう。
 そんなことを考えていたら朝方まで眠れなかった。

 翌日、美穂はあることを閃き、大会の主催者に連絡をとった。刈られた自分の美髪はどうなったのか、もう
捨ててしまったのか、問いただした。
「運がいいことにまだ残ってますよ。スタッフが掻き集めて保管してましたから」
「取りに行くから絶対捨てないで」
 なぜもっと早くに思いつかなかったのだろう。同じ人毛ウィッグを使うなら、長年磨き続けて輝きを放つ自分の
美髪で作ったほうがいいに決まっている。
 美穂は主催者を訪ねて髪を受け取ると、専門店に足を運んだ。不幸中の幸いか、バリカンで根元から刈られた髪は
1メートルの長さを保ったまま残っていた。以前と変わらない質と長さの髪を取り戻せるだろう。応対した男には、
規定の料金の5倍を払うから、高品質のウィッグを最短で作ってほしいと頼んだ。
 後日、自分の美髪で作られたウィッグをかぶると、質の低いウィッグは捨てた。そして、ありったけの勇気を
掻き集め、有名な美容整形外科を訪ねた。
 鼻や乳房や性器を元通りにできないか相談した。
 しかし期待外れの――最も聞きたくない台詞を聞かされた。
「軟骨や鼻骨が完全に削られていますから、普通の鼻にするのは不可能です。鼻そのものを付け替えるしか方法は
ありませんが、そうすると、フランケンシュタイン博士の怪物みたいな顔になってしまいますよ」
「胸は?」
「皮膚が癒着していますからね。残念ですが、脂肪注入はできません。スペースがないんですよ」
「じゃあ、その……アソコは?」


230 :新田美穂 92:2009/12/10(木) 17:24:29 ID:AAfQ79+d0
「パンツだってゴムが伸びたら買い換えますよね。それと同じなんです。伸びたラビアはもうもとにはもどらない
んです、残念ながら。現代医学では性器の交換までは行われていませんから」
 他にも数軒の美容整形外科を訪ねたものの、答えは変わらなかった。
 美穂はため息をつきながら帰宅した。アイドルもうらやむ美顔なのに、鼻が豚。真正面から見ると、台形の
小山に二つのトンネルが並んでいるように見える。胸も性器も醜い形のまま――。
 これじゃあ、大好きだった海水浴にも温泉にも行けない。
 私の人生の楽しみの大半が奪われてしまった。下品な連中の手によって。

 大学を休み続けるわけにはいかない。醜い身体にされたあげく、留年したら経歴まで汚れてしまう。
 取り柄が何一つない女に成り下がるのだけはごめんだった。
 美穂は覚悟を決める意味を込め、友人に電話で宣言した。
「月曜日から大学に行くから。みんなによろしィく言ってェおいて」
「え?」
「えってェ何? おかしいことォ言った?」
「ううん。聞き取りにくかったから」
「大学に行くって言ったァのよ」
「ああ、了解」
 美穂は電話を切ると、違和感に思い至った。試しに独り言を喋ってみた。声は戻っているのに微妙に変だった。
何だか『サ行』と『タ行』が発音しにくい。やっぱり入れ歯が悪いの?
 再び歯科医院に電話すると、歯科医が「またあなたですか」と鬱陶しそうに答えるのも無視し、症状を説明した。


231 :新田美穂 93:2009/12/10(木) 17:25:28 ID:AAfQ79+d0
「それはですね、総入れ歯を入れると、口蓋や歯ぐきに義歯床をかぶせるわけですから、どうしても口の中が狭く
なってしまうんですよね。だから自然の歯だったときのようには舌を自由に動かせないんです。サ行やタ行の
発音の際は、舌を下の歯の裏に当てて発音するでしょ。微妙な舌の動きが必要なんです。そういうわけで、サ行や
タ行は発音しにくいんですよ」
 信じられない。これじゃ得意の英語もフランス語ももう満足に喋れない。ネイティブ顔負けだったのに。
「本当役立たァずね!」
 再び怒鳴って電話を切った。
 総入れ歯をしたら、全て元通りになると思っていた。なのにまさかこんなに不便が多いなんて……。
 大事な真珠の歯の全抜歯を提案した鼻骨骨折の最低男と、真珠の歯を一本一本抜いていった負け組集団に対する
憎しみが沸き上がった。あんな底辺の人間たちに私の美貌を壊されるなんて。
 悔しさを噛み締めていると、携帯が振動した。『貢ぐ君』専用の携帯ではなく、本命候補専用の携帯だった。
隆裕からのメールだ。ニューヨークに旅行したときに知り合った26歳の青年。モデルか映画俳優のように整った
容貌の持ち主だ。高級スーツを隙なく着こなせるお洒落な青年。大企業の御曹司で時期社長候補。一流レストランに
通い慣れているタイプだった。
 本命候補専用の携帯には、海外や日本の一流企業で活躍する勝ち組53人のアドレスが登録してある。隆裕は
ダントツの一位だった。
 美穂は胸の高鳴りを抑えながらメールを見た。
『父が社長職を退くことが決まり、半年後には僕が跡を継ぎます。念願の瞬間がやってきました。僕の社長就任式
にはぜひ美穂さんをパートナーとして招待したいと思っています。あなたはパーティーの華になれる女性です。
気品があり、思いやりがあり、美貌もある。同僚やアメリカ人たちが僕の幸運をうらやましがる光景が今から目に
浮かぶようです  隆裕』
 興奮にますます胸が高鳴ったものの、自分の惨状を思い出して気分は沈んだ。
 私はパーティーの華になれない身体にされてしまった。醜い連中のせいで。


232 :新田美穂 94:2009/12/10(木) 17:26:26 ID:AAfQ79+d0
 美穂は深呼吸して気持ちを落ち着けると、返信を書いた。
『おめでとうございます、隆裕さん! あなたなら社長に相応しいと前から思っていました。輝くばかりの未来が
広がりますね。そんなあなたのパートナーとして選ばれてとても光栄です』
 3週間前に撮影した自分の笑顔の写メを添付し、送信した。
 最高の男を逃すわけにはいかない。
 本命候補者たちには礼儀を知り尽くしたお嬢様を演じていた。53人とのメールには、一流の男たちが恋人の
理想像として思い浮かべるであろう完璧な美女として返信している。
 一人一人の趣味や性格を把握し、まめに褒め、『彼女とのメールは楽しい』と思われる努力をしてきた。
勝ち組は勝ち組を求めるものだから、欠点のない女としてメールを続けている。『貢ぐ君』専用の携帯のように
相手を見下すような文章は決して書かない。だから、53人全員が私を好いてくれている。
 スタイルもよく、上品で優雅な美女――男の前で簡単に裸を見せない生真面目な美女として見られている。
変わり果てた今の姿を知られるわけにはいかない。彼らの心を繋ぎとめておくために写真が必要なときは、完璧な
美貌を持っていたころの写メを送ってごまかし、そのあいだに何とか美貌を取り戻す方策を考えよう。
 メールなら醜くされた外見を知られることは決してないのだから。
 本命候補専用の携帯は、美穂が最も大事にしているものだった。
 彼らにだけは嫌われたくない――。

 美穂は翌日に備え、美を磨くことにした。悲惨な身体にされたあげく、美肌まで失ったら目も当てられない。
残されている部分こそ輝かさなくては。
 ニキビやシミやソバカスを防ぐ『薬用美尻ジェル』は、入浴時に塗って洗うだけだった。シミやくすみのない
お尻を作るジェルだ。


233 :新田美穂 95:2009/12/10(木) 18:09:24 ID:AAfQ79+d0
 金属繊維で編まれ、微弱電流が流れる特殊な手袋で全身をマッサージし、毎分7000回転の振動を肌に与えて
美肌を磨くビューティーローラーも使った。毎秒350万回の超音波&イオンで張りと艶を出すビューティー
ソニックも使う。海塩やパパイン酵素やコラーゲンが配合された高級パックをする。
 以前から行ってきた努力だった。
 肌が自慢の女優にも負けない美肌は、日々の努力の賜物だ。

 月曜日。美穂は腰まで流れる美髪で作ったウィッグと総入れ歯を装着し、乳房を折り畳んでパッド入りのブラに
しまい込んだ。金属製のアクセサリーが映えるベージュのタンクトップと、ヒップの丸みを強調するミニスカートを
身につけた。脚を長く見せる黒のブーツを履く。バッグも衣服もブランド物で揃えた。
 美穂はコンパクトを開き、男を惑わせる得意の表情を作って鏡を覗き込んだ。そこには分をわきまえない
豚鼻の女がいた。心臓がカッと熱くなり、動悸がした。
 ああ、こんな鼻、いや……。
 ウィッグとブラと総入れ歯さえ身につけていれば、女としての輝きを取り戻している。スラリと長い色白の脚、
丸みがあってツンと上向きのヒップ、くびれたウエスト、服を盛り上げる形のいい胸、シャープな顎のライン、
二重でアーモンド型の大きな目、艶やかな唇、腰元まで流れ落ちる黒髪――なのに全てを台無しにしているのが
豚鼻だった。女として完璧な美貌なのに、豚の鼻。台形の鼻が真正面を向き、10円玉サイズの穴が二つ。
 完璧すぎる美貌を許さない神様が唯一の汚点を顔の真ん中に作ったような様だった。
 タンクトップとミニスカートを選び、シミ一つないスベスベの白い腕や脇や太ももを見せているのは、元美人
としてのプライドだ。私は鼻こそ醜くされたけれど、誰もがうらやむ完璧な美脚と美肌を持っているのよ、という
プライド。絶世の美女の唯一の欠点は鼻だけなのよ、と。
 今までは、ジーンズにTシャツ姿でも、2時間かけて着飾った大多数の女たちより魅力的だと自覚していた。
どんな表情でも、どんな仕草でも、どんな格好でも、どんな台詞も、様になり、ドラマの美人女優以上に決まって
見えるのは、日々の努力で磨き上げてきた類まれな美貌があるからだった。


234 :新田美穂 96:2009/12/10(木) 18:10:17 ID:AAfQ79+d0
 でも今は――。
 美穂は悩んだすえ、白いマスクをした。最近は新型インフルエンザが流行っているから不自然ではない。
 覚悟を決めて外に出た。通勤中のサラリーマンや通学中の学生が大通りを行き交っている。
 通行人たちの視線が怖かった。気持ちが後ろ向きになり、以前はあれほど快感だった他人の視線が不安を煽るだけ
のものになっていた。今までは、服を脱いだら完璧なボディがある、という自信が根底にあった。だからどんなに
地味な格好でも、最高に着飾ったモデルなみに堂々と歩けた。でも今は違う。禿げた頭をウィッグで隠し、歯は
総入れ歯でごまかし、胸はパッド入りの硬いブラで偽っている。下着の中の陰部は陰毛がなく、性器はグロテスク。
虚飾だらけの身体。外見をどんなに着飾っても、脱いだら女として最低の醜い身体がある――そんな劣等感が胸の
奥に渦巻き、妙におどおどした気持ちになってしまう。
 他人に視線を向けられるたび、虚飾の下の醜い身体を見透かされているんじゃないか、そう思って不安になった。
他人の視線が怖い。マスクで鼻と口を隠していても完璧なスタイルの美人だと分かるから、誰もが視線を向けて
きているのだろう。でも、怖い。
 ああ、これが惨めということなのか。
 堂々と歩いている人々を見るたび、本当の惨めさを思い知らされる。
 顔をマスクで隠して出歩いていると、卑屈な気持ちになった。空気に素顔を堂々と晒して生きていけない自分。
指名手配犯みたいに顔を隠し、コソコソ人目を気にしなければいけないなんて。隠し事をしている負い目から
こんな後ろ向きな気持ちになってしまうのよ。
 美穂は勇気を振り絞り、マスクを外した。
 通行人たちの視線があからさまに変わった。身体を見て興奮の表情を浮かべ、顔を確認して残念そうにため息を
つく男たち。デブで不細工な女が通りすぎ際、美穂の顔を見て勝ち誇ったように――自分より醜い顔が世の中に
存在することに安堵し、自分の幸せを噛み締めるように、笑みを浮かべた。
 冗談でしょ。何笑ってるのよ。あなた程度が私より格上のつもりなの? 鼻以外のパーツは、アイドルがうらやむ
ほど完璧な造りなのよ。よく見なさいよ。


235 :新田美穂 97:2009/12/10(木) 18:11:29 ID:AAfQ79+d0
 女子高生たちとすれ違ったとき、背後で笑い声が弾けた。
「うわっ、超臭そう!」
「すげえ鼻!」
「鼻毛とかすごそう! 顔から汚臭が漂ってるよね!」
「ああいう勘違い女、マジ痛いんですけど。肌を露出させりゃ、豚面がごまかせると思ってんのかね」
「脚を露出してりゃ、顔がブスでもバカな男が寄ってくるもんね。それを期待してんでしょ」
 拳を握り、唇を噛み、走り出したいのを必死で我慢した。逃げたら負けだと思った。私は生まれながらのブスじゃ
ない。試合に負けてひどい罰ゲームで豚鼻にされた美人なのよ。そんなプライドだった。
 あんなの負け惜しみよ、負け惜しみ。私が完璧な美肌とモデル同様のスタイルを持っているから、嫉妬したのよ。
そして、完敗を認めるのが悔しくて何とか私の身体に欠点を探し、豚鼻を見つけた――ただそれだけよ。毎日磨いて
きた私の自慢の身体を見て唖然としたからこそ、連中は私の鼻を非難して自分たちのプライドを保とうとした。
 だから私は毅然としていればいい。10代で早くも肌が死んでいる女子高生の言葉なんて聞くに値しない。
どうせ20代後半には、子育てが生きがいの中年女さながらの肌になるような連中の言葉なんだから。
 美穂はフィギュアスケートの女子選手にも負けない美脚をさらけ出しながら歩いた。シミ一つない完璧な脚。
170センチの身長のおかげで伸びやかな自慢の脚。
 今度は男子高校生二人組がすれ違いざまにつぶやいた。
「女でブスとか、マジいらねえんだけど」
「何のために生きてんの」
 何? まさか私のことを言ったの? 鼻を豚にされただけでブス扱い? 他のパーツをよく見なさいよ!
 心の中で怒鳴ってもむなしいだけだった。完璧な美貌も鼻をフックで縦横に広げられたら台無しになってしまう。
アイドルが可愛らしさを保ったまま鼻を自分で持ち上げて見せるのとは違って、低俗な女のお笑い芸人かAV女優が
フックで作られるような醜い豚鼻――。


236 :新田美穂 98:2009/12/10(木) 19:21:10 ID:AAfQ79+d0
 気分はどん底だった。
 フックで作られた豚鼻なら見た者も一時的に笑うだけだし、豚鼻にされた女もフックを外してもらえば美人に
戻る。でも、私は整形で豚鼻にされてしまった。見る者たちは私が生まれながらの豚鼻女だと思って笑い、蔑み、
見下すだろう。それが何よりも惨めで悔しかった。
 雑草に馬鹿にされるなんて耐えられない。悪意を持った人間たちに踏みにじられた薔薇のほうが雑草より
惨めなんて思いもしなかった。
 以前は街を歩くことが快感だった。男たちは誰もが振り返り、地上に降り立った女神を見る目を向けてきた。
女たちは誰もが羨望か嫉妬の目を向けてきた。特に痛快だったのは、カップルの男の視線を集めたときだ。私に
彼氏の心を奪われた女の悔しそうな顔といったら。そんな顔を見るたび、優越感を覚えたものだった。
 彼女を捨てて声をかけてくる男には、こう言うことにしていた。
『これからさみしく一人で服を買いに行くところなの』
 すると十中八九男は『一緒に行くよ』と言い、高級ブティックについてくる。店の雰囲気を見て物怖じする男には、
その時点で、はい、さようなら。躊躇せず入店できる男は役に立つ。後は無言で気に入った服を見つめるだけ。
男は美人のご機嫌をとるために高い服を買ってくれる。褒美に笑顔をプレゼントし、別れる。服の一着や二着で
女神を裸にできると思っている相手は冷淡にはねつけてやる。
 人生の勝ち組として輝く日々を謳歌していた。
 それなのに……私の人生に何の責任も持たない連中が面白半分で残酷な罰ゲームを次々に提案し、実行した。
髪、眉、鼻、歯、乳房、性器。私の美貌は奪い尽くされた。年収1千万程度の稼ぎも得られない男たち、異性から
告白もされない女たちの嫉妬によって。
 女は顔だとよく言われる。私は美貌、知性、若さ、運動神経と4拍子揃っていた。男なら誰もが空想の中でしか
相手にされない最高の女として生きてきた。女なら誰もが代わりたいと思う人生を歩んでいた。負け組連中は
そんな私を惨めに貶めた――本当に最低。許せない。


237 :新田美穂 99:2009/12/10(木) 19:22:22 ID:AAfQ79+d0
 駅に着き、電車待ちをしていると、一人の男が声をかけてきた。枯れ木みたいに貧弱な身体で天然パーマ。
全身でがり勉ですよと主張しているような眼鏡。背も私より2センチほど低い168センチ程度。
「あ、あの、新田さん」男はいきなり薔薇の花束を取り出し、言った。「僕、同じ大学の山下充です」
「誰も名前なんてェ聞いてないわよ」
「す、すみません、ただ、僕、前から新田さんのことが好きでした」
 カチンときた。外見も冴えないうえに、何の工夫もない小学生なみの台詞。似合わない薔薇の演出。
「う、受け取ってください」
「花が欲しけりゃ自分で買うわ。花を贈ったァら女が喜ぶと思ったら大間違いよ。世の中にはね、花束を贈るだけで
女を喜ばせられる一流の男と、実益になる物を貢がなきゃ女の笑顔も引き出せない二流以下の男がいるの。
あなたは一流なの?」
「え? え? そ、それは……」
「これだけは世界中の誰にも負けないって胸を張って言えるものがある?」
 男はますますおどおどし始めた。
「そ、そこまではちょっと……」
「ないなら告白なんてまね、しないで」
「でも、その、気持ちを伝えたくて……」
「あなた、私を傷つけて平気なの?」
「え? ぼ、僕は別に何も……」
「あなた程度の男にも告白できるくらい今の私が安っぽくなってしまったのかと思ったら、泣きたくなる」
 鼻がこんなになった私となら付き合えるとでも思ったわけ? ふざけないでよ。
「付き合うなら同じレベル同士で付き合うべきじゃない? ゴミ箱漁ったらお似合いの女が埋もれてるでしょ」
「す、すみません」


238 :新田美穂 100:2009/12/10(木) 19:23:38 ID:AAfQ79+d0
 何て情けないんだろう。それでも男? 貧弱な身体をしていても、腹を立てて殴りかかってくる度胸はないの?
正当防衛で堂々と殴り倒してのストレス発散もできず、ますます鬱憤が溜まった。
 電車が到着すると、美穂は男を置き去りにして電車に乗った。

 大学に着くと、以前の美貌を知っている学生たちから驚きの眼差しを向けられた。全員の視線が鼻を見つめた後、
いけないものを見たみたいにそれていく。
 大会は衛星チャンネルでしか放送していないし、週刊誌の類の発売もまだだから、専門のスポーツ新聞でも
購入していないかぎり、整形の罰ゲームは知らないだろう。よかった、と思った。髪がなく、胸を垂れ乳にされた
ことまで知られていたら生きていけない。
 取り巻きの百合、洋子、萌、エリカが声をかけてきた。化粧して中の上の容姿を維持している4人だった。
常日頃から私の美貌を褒め、憧れるばかりの存在。
「ど、どうしたの、その……鼻?」と百合が訊いた。
「……試合で強烈なのもらって、手術でも直せなくて」
「ええ!? 可哀想! ひどいよねえ。大事な顔にそんなことするなんてさ」
 他の3人が「ホント、ホント」と同調する。
 美穂は自嘲の微笑を残し、幾何学Ⅱの講義を受けるために教室へ入った。一斉に視線が向けられる。好奇の
視線だった。
 大学内で視線を感じると、ウィッグがずれているんじゃないか、ウィッグだと気づかれているんじゃないか、
そう思って不安になった。心臓が高鳴る。胃がキリキリ痛む。
 入れ歯だと見抜かれたくなくて笑顔も封印した。




241 :新田美穂 101:2009/12/11(金) 04:51:13 ID:hg0OPzZ/0
 横からクスクスと笑い声が聞こえ、振り返った。女子大生二人が慌てて目をそらした。二人の囁く声が聞こえる。
「……ブタが……」
「いるよね……」
「悲惨だよね……だからさ……」
「鼻が……」
 美穂は惨めな豚顔を晒しているのに耐えられず、教科書に視線を落とし、流れ落ちる黒髪で顔を隠した。
何で私がこんなコソコソしなきゃならないの?
 久恵の残酷な仕打ちだった。美貌をねたまれ、気高く筋の通った鼻を豚鼻に整形された。衣服やウィッグでは
決して隠せない場所を整形された。フックで吊り上げられたような鼻を人前に晒す恥辱、屈辱。一生そんなものを
抱えて生きていけというの?
 授業が終わり、廊下に出たときだった。車椅子の女子大生とすれ違った。名前は恭子。茶色い梳き流しの髪と
つぶらな瞳が特徴で、薄幸の美少女という雰囲気だ。中学のころに飲酒運転による事故に巻き込まれ、自分の足で
歩けなくなった女。
 恭子は美穂に非難の目を向けた後、何事もなかったように車輪を漕いで去っていった。
 勘弁してよ。しつこいわね。ミスコンの件を恨んでいるならお門違いよ。
 半年前のミスコンのときだった。エントリーした恭子は、前評判が高かった。自分の不幸も気にしていないような
笑顔をいつも浮かべ、誰にでも思いやりを持って接するから人気があった。偽善者っぽく思えて私は嫌いだったが、
恭子は大勢に好かれていた。ミスコンでは最大のライバルになるだろう。
 美穂は何が何でも優勝し、地位と名誉を獲得したかった。一流商社に勤めないなら女子アナになる、というのが
将来の展望だったから、東大のミスコン女王は必須だった。数千倍の倍率を勝ち抜いて女子アナになるには、
一流大学でミスに選ばれていることが最大の武器になる。


242 :新田美穂 102:2009/12/11(金) 04:52:30 ID:hg0OPzZ/0
 女王になるには恭子の存在は邪魔だった。彼女は卑怯な存在だ。車椅子をこれ見よがしに操って登場すれば、
誰もが憐憫を覚え、同情票を入れる。そんな汚い武器で勝負されたくなかった。だから、主催者を色気で篭絡し、
参加条件をちょっと変更させた。女王は文武両道であるべきだから、エントリーは運動部でそれなりの結果を
残した美女に限るべきだ、と説得したのだ。
 結果、歩けない彼女は参加できず、美穂がダントツで女王に輝いた。
 後日、主催者から裏事情を聞いた恭子は、泣き顔で怒鳴りつけてきた。
「やり口が卑怯よ! 参加を拒否されて私がどんなに惨めだったか分かる?」
「同情票で勝とうとするほうが卑怯だと思うけど?」
「そんなこと思ってない!」
「たとえあなたが思わなくても、周りが同情するのよ。ミスに選ばれたいなら、パラリンピックみたいなものを
作ってもらったらどう? 優勝できるわよ、この大学に参加者は一人しかいないんだから」
「……あなた、最低ね」
「哀れみを武器にするほうが最低じゃない?」
「ふざけないでよ。私は自分に自信が持ちたかっただけなのに!」恭子は涙を振りまきながら叫んだ。「私はこんな
脚だから気持ちが後ろ向きになるの! だからミスコンに出たかったの。優勝できなくてもいい。ただ、出たかった
の! そうしたら、私にも人並みの人生があるんだって思えるから!」
「勘弁してよ、そういう美談ですよ、みたいなアピールは。私はね、ミスコンなんだから、正々堂々と美しさを
競えるようにしただけよ」
「わ、私は……」
「言い返せないでしょ。私の言ってることが正論だからよ。全く。恨むんなら自分の不幸を恨みなさいよね。
私に八つ当たりするなんてお門違いもいいところよ」
「ひ、ひどい……私だって好きでこんな脚になったんじゃ……ないのに……」


243 :新田美穂 103:2009/12/11(金) 04:53:38 ID:hg0OPzZ/0
「前世で悪いことでもしたんじゃないの? 因果応報かもよ」
「な、ななな……」
 恭子は唇を打ち震わせた後、車椅子を操り、去った。その日以来、恭子の友人たちからは恨まれている。
嫌がらせの手紙や不幸の手紙も数多く貰ったし、面と向かって「卑怯者!」と罵られたこともある。でも、
一番許せないのは恭子の偽善者っぷりだった。彼女は最初のとき以来、私を口撃しなかった。ミスコンの話は
もういいの、新田さんの言い分も理解できるから、みたいな顔をして仲間に接している。一人きりのときは
非難の目を向けてくるくせに、聖人君子ぶって気持ち悪い。
 本当は私を殴り倒し、車輪で踏みにじりたいくせに、人前では決してそんなことをしない女。陰で狡猾に私を
陥れようと行動している節もない。おかげで私が悪者扱いされてしまった。一番狡猾な復讐方法だ。自分が
聖女ぶればぶるほど、自然と私が悪女になる。卑劣すぎる。私は純粋に美貌で勝負できる場を作っただけなのに。
 思い出すだけで不愉快になる。
 美穂は嫌な気分を引きずりながら、次の授業を受けるために教室を移動した。

 午前の講義が全て終わると、食堂に行った。硬い食材が混ざっている定食を避け、パスタを注文した。前歯で
噛まないように注意しながら食べる。学生たちの視線が集まっているのが感じられた。みんなが見ているのは、
髪なのか鼻なのか口なのか。
 視線が気になり、落ち着いて食べていられなかった。笑い声が聞こえると、ビクッとして振り返り、何の話題で
盛り上がっているのか耳を澄ませた。
 私のことを笑っているの? それとも昨日のドラマの話題?
 美穂は極力口元を見せないようにしてパスタを食した。
 食事が終わると、女子トイレのドアを開けた。ドアの開いている個室を全て覗き込み、誰もいないのを確認する。
 巨大な鏡を見つめると、ため息が漏れた。完璧な美貌の真ん中に豚鼻がある。鼻さえ隠せたら、以前と同じ女神の
美貌なのに……。




245 :新田美穂 104:2009/12/11(金) 05:14:40 ID:hg0OPzZ/0
 美穂は自分の美髪で作ったウィッグを触り、ずれていないか確認した。それから女子トイレのドアに耳を添え、
足音が近づいてこないことを確かめた。
 緊張の汗が手のひらに滲む。心臓の鼓動が速まる。
 口臭や口内炎を避けるには欠かせない行為――。
 美穂は指で『C』の字を作って総入れ歯をカポッと外した。豊かで官能的な桃色の唇に細かな皺が寄り、歯ぐきに
ぺったりと張りついた。口元にも皺ができている。年齢が一気に老けた。若さを奪われた。
 惨めな顔に泣きたくなりながらも、バッグから歯ブラシを取り出した。毎食後磨かないと、カビの一種である
カンジダ菌が繁殖するという。
 カビだらけの歯なんて冗談じゃない。
 美穂は専用の石鹸をつけ、総入れ歯を磨き始めた。
 髪も歯もある人間が行き交い、生活する大学という場所で、一人、女子トイレで総入れ歯を外して磨く惨めさ。
全ての学生より低い位置に蹴落とされた気がした。
 突然、足音が聞こえた。ビクッとして全身が硬直した。緊張が身体中を駆け抜ける。複数の足音は女子トイレの
前を通りすぎていった。
 心臓はバクバクと高鳴っていた。
 美穂は胸を撫で下ろすと、安堵の息を吐き、再び総入れ歯を磨き始めた。
 磨き終わり、総入れ歯を水洗いしたときだった。複数の足音が女子トイレの前で止まった。ドアの磨りガラスに
女の顔の輪郭が映っている。
 嘘!?
 ちょ、ちょっと待ってよ。
 美穂は女子トイレ内を見回し、迷わず個室の中に駆け込み、鍵を閉めた。女子トイレのドアが開いたのと同時
だった。楽しそうな笑い声が入ってくる。3人のようだった。声に聞き覚えがある。同じ授業を履修している
雅代と瞳とサリナだった。


246 :新田美穂 105:2009/12/11(金) 05:16:02 ID:hg0OPzZ/0
 美穂は総入れ歯を嵌めると、個室の中で立ったまま声を殺していた。
 何て惨めなの。今までの私は堂々と何も恐れることなく生きてきた。なのに人目に怯えてトイレの個室に
隠れなきゃならないなんて。
 3人の女子大生はトイレに入る様子はない。1人じゃ何もできない3人組が鏡の前に並び、化粧直しをしている
光景が目に浮かぶ。
 どうせ大した顔じゃないでしょ。化粧なんて気にしてないで出て行きなさいよ!
 3人の声が聞こえてきたのはそのときだった。
「――ねえ、知ってる? あいつの髪、カツラなのよ」
 心臓が跳ね上がった。まさか私のこと言ってる? 違うよね。数学講究の教員の篠塚のことでしょ?
「マジで!? 嘘でしょ!?」
「マジマジ。美容の薬の飲みすぎでさ、副作用で髪が抜けちゃったらしいの」
「え~、それ悲惨。マジ話?」
「何人も噂してるよ。鼻もさ、整形で作った鼻が崩れてああなったんだって」
「ウッソー。整形だったんだ。最低!」
「胸もさ、脂肪注入で大きくしてたんだけど、無理が祟って脂肪が漏れ出ちゃって、今はしわしわなんだって」
「え? じゃあ、あれ、今、ブラでごまかしてんの?」
「そうそう。らしいわよ」
 誰の話かは明白だった。信じられない。一体誰よ、そんなデマを蔓延させている奴は!
 試合会場に来ていた誰かに違いない。思えば、肌を汚くしてやれ、と叫んだ声の中に、聞き覚えのある声が
混ざっていた。大学の同期生の誰かが来ていたのだろう。



250 :新田美穂 106:2009/12/11(金) 19:51:20 ID:hg0OPzZ/0
 許せない。生まれながらの美人の私が整形女? 美貌で絶対にかなわない相手を貶めるときの常套手段だ。
美人女優にネットで整形疑惑が付きまとうのと同じで。
 噂を広めた奴は、私が反論できないと見越して吹聴したに違いない。整形で作った美貌が崩れたんじゃなく、
試合に負けた罰ゲームで非道な整形をされたんだと主張したら、誰もが専門のスポーツ新聞や週刊誌を探して
購入し、私の変わり果てた裸を目撃する。衣服やウィッグや入れ歯で隠している中身を見られたら、惨めすぎて
もう人前に出られなくなる。
 真実を説明できないのが悔しい。
 美穂は唇を噛み締めた。
「それにしても、あれ、カツラだったんだあ」
 カツラじゃなくてウィッグよ! 個室の中の美穂は心の中で反論した。中年オヤジが縋るカツラじゃなく、
髪がある女でもお洒落でかぶるウィッグなのよ!
 思わず自嘲の笑いが漏れそうになる。カツラでもウィッグでも何が違うの? 髪がないのは変わらないのに。
「キャハハ。もう一生孤独のまま惨めに人生終わるよね、絶対」
「整形女の成れの果てじゃん」
「人工的に顔を変えて美人ぶってた罰よね~♪」
 我慢の限界だった。一流大学に通っていても大した未来がない負け組連中が私を馬鹿にするなんて、許せない。
必死で男に媚び、貢物を持って追いかけなきゃ相手にもされないくせに。
 美穂はわざと水を流して音を出し、毅然と個室を出た。女たちは一瞬ひるんだように一歩後ずさりした。しかし、
踏みとどまり、悪びれもしない顔でニヤニヤと笑い始めた。
「整形女に聞かれちゃったみたい」
「ねえ、やっぱり目や輪郭も作り物なの?」
「私は整形なんてしてないわ」美穂は言った。「生まれながらの美貌なのよ」
「キャハハ、整形女が何か言ってる!」


251 :新田美穂 107:2009/12/11(金) 19:53:06 ID:hg0OPzZ/0
 美穂は見下すようにため息をついた。
「あなた、便器と結婚したらどう? 性格も外見も吐き出す言葉も汚い女には、流してくれる旦那が必要でしょ」
「は、はあ? 何言っちゃってんの、コイツ。ムカつくんだけど」
「告白するなら見ておいてあげるわよ。まあ、振られるかもしれないけど」
「ふざけんな!」
 雅代は顔を真っ赤にして怒鳴っている。
 ご愁傷様。口論ってのは怒ったほうの負けなのよ。
 美穂は勝者の余裕を滲ませた笑みをたたえ、鼻で笑ってやった。頭の悪い低レベルの人間ってのは、口論でも
平凡な言葉しか思い浮かばない。私を言い負かそうなんて100年早いのよ。
「それとも腕力に訴える? 叩きのめしてあげるけど?」
 両拳を握り、ファイティングポーズをとる。雅代はビクッと肩を震わせ、一歩、後退した。
 ふんっ、口でも力でも勝てないくせに調子に乗らないでよね。
 そのときだった。突然、目の前を黒髪が滑り落ちた。一瞬何が起こったのか分からず、美穂は呆然と立ち尽くして
いた。サリナの手に黒髪が流れるウィッグが握られている。
「いやああああっ! 見ないで!」
 美穂は思わずしゃがみ込み、惨めな禿げ頭を両手で隠した。女たちが指を差し、腹を抱えて笑い転げている。
服を着た人間たちの前でただ一人裸を晒しているような羞恥だった。自信も尊厳も木っ端微塵に打ち砕かれ、
絶対的な武器と鎧を奪われた無力感に打ちのめされた。
「うわあ、若さを保つ海外の危ない薬で脱毛しちゃった、って本当だったんだあ」
「悲惨すぎ!」
「欲張った天罰よねえ」
 哀れみと嘲笑混じりの言葉に続き、携帯で写メを撮影する音が聞こえた。
「や、やめ……と、撮らないで……」


252 :新田美穂 108:2009/12/11(金) 20:10:03 ID:hg0OPzZ/0
「ねえねえ、もう一回言ってみてよ。便器と結婚が何とかってさ」
「ファイティングポーズは?」
 美穂は「か、返してよ!」と叫び、ウィッグをクルクル回すサリナに飛び掛った。彼女は美穂の頭越しに
ウィッグを放り投げた。人毛の塊は放物線を描いて背後に消える。振り返ると、瞳がウィッグを受け止めていた。
フライボールをキャッチした野手のように誇らしく笑いながら。
「返してって言ってるでしょ」
 美穂は瞳に踊りかかった。しかし、ウィッグは再び頭上を飛び、雅代の手に渡る。
 美穂は瞳の腹部に拳を叩き込んでひざまずかせ、ウィッグを持つ雅代に駆け寄ろうとした。彼女は個室に逃げ
込んだ。ドアを閉められる前に追いついたとき、美穂は信じられないものを見た。洋式便器の中に人毛のフル
ウィッグが浸かっていた。
「ひ、ひどいっ……私の髪が……」
 美穂は唖然と立ち尽くした。
「ああ、ごめんねえ。もしかして自分の髪で作ったウィッグだった? 洗って使えば?」
 雅代は仕返しとばかりに鼻で笑うと、個室を出た。
 美穂は力なく膝を落とし、洋式便器の水に浮かぶ黒髪を見つめた。背後から写メを撮る音がする。
「や、やめて!」
 両手で頭を押さえた。
「キャハハ、便器と見つめ合う女の図、ゲット!」
「プロポーズでもすんの?」
 突然、背中に衝撃を受け、美穂は洋式の便座に顔をぶつけた。鼻っ柱に激痛が走る。
 私を――足蹴に、した?
 背後で再び写メを撮る音がした。


253 :新田美穂 109:2009/12/11(金) 20:10:57 ID:hg0OPzZ/0
「便器に誓いのキスをする女の図、ゲット!」
 カッとした。殴り倒してやろうと立ち上がったとたん、殺気を察したのか、雅代は逃げ出した。女子トイレの
ドアを開け、廊下に向かって叫ぶ。
「みんな! トイレにすごい女がいる!!!」
「や、やめて!」
 複数の足音が駆けてくる。
 美穂はパニックに陥り、慌てて個室のドアを閉めた。鍵をかける。
 ドアが激しく叩かれる。心臓に直接響く音だった。女が荒々しく叫ぶ。
「おいっ、かくれんぼしてんじゃねえよ!」
 美穂は屈辱と悲しみを噛み締めながら、個室に引きこもり、自分の美髪で作ったウィッグを指先でつまみ、
便器の水の中から引っ張りあげた。背中を覆えるだけのボリュームがある髪は丸まり、黒い塊になっていた。
先端から水が滴り落ちている。
 美穂は髪をトイレットペーパーで拭き始めた。唯一無二のウィッグ。10年間伸ばし、細心の注意を払いながら
ケアしてきた私の美髪で作ったウィッグ。穢されても、これに代わるものはない。
 外から女たちの声がする。
「ねえねえ、隣から覗けるんじゃない?」
「ひっ、ひいっ!」
 慌ててウィッグをかぶる。便水に濡れた髪は肌にへばりつくようだった。薔薇の香りは消えうせ、カルキ臭い
悪臭が鼻孔をついた。
 壁の上部の隙間から雅代とサリナが顔を出している。
「便器の水で洗ったカツラかぶってるよ!」
「ちょっ、ずれてるずれてる!」


254 :新田美穂 110:2009/12/11(金) 20:12:22 ID:hg0OPzZ/0
「コントに出てくる校長先生かっての」
 美穂は、勝者がのぼる台から蹴落とされたショックと屈辱にうめいた。
 頭を押さえながら女子トイレを駆け出ると、午後の授業も放棄してマンションへ逃げ帰った。

 最悪の気分だった。
 ファイトマネーを得ようにも、ウィッグじゃ試合なんてできない。格下に組みつかれ、振りほどく前に長い
髪を握り締められる光景が目に浮かぶ。大勢の前でウィッグを奪われたら、恥ずかしさのあまり戦えなくなる。
頭を抱える私に攻撃を加える対戦相手。華麗に攻撃しようとしても、頭を晒す羞恥に耐えられず、キレもなくなる。
新人にも負けてしまいかねない。
 豚鼻じゃ、CMの依頼もこないだろう。雑誌の表紙を飾ることもない。私の機嫌をとるためにブランド品を
貢いでくる男もいない。
 下働きはごめんだし、じゃあ、どうやって収入を得よう。今はまだ貯金があるけど……。
 一人暮らしをはじめたばかりの高校時代の記憶がよみがえる。高級エステ代や美容品や衣服を自由に得るには、
お金が足りなすぎた。自分を安売りするしか能がない周りの女子高生たちは、援助交際で売春婦を演じていたが、
そんなまねは絶対にできない。
 高校時代の美穂が選んだのは、自分の身体を売らずにすむ方法だった。電車内で中年オヤジの前に陣取った後、
駅に出てから標的の腕を掴む。ひとけのない場所まで連れて行き、「痴漢したでしょ。警察に行きましょ」と脅す。
相手は否定するが、通行人のいるほうに向かって「誰か!」と叫んでやれば、標的はパニックになり、観念する。
 私は頭の悪そうな女子高生じゃない。髪を金髪に染め、ピアスをし、けばけばしい化粧で老けて見える連中とは
違う。流れ落ちる黒髪と整った美貌が輝き、清純に見える。だから標的の誰もが降参する。誤解や冤罪を訴えても、
警察がどちらを信じるか一目瞭然だから。


255 :新田美穂 111:2009/12/11(金) 21:23:05 ID:hg0OPzZ/0
 美穂は、売春婦を2時間演じて2万を得る女子高生と違い、頭脳的に5分で5万を稼いだ。どうせキャバクラ代や
酒代に消えるお金だろうし、私が有効利用したほうがいいと思っていた。逮捕されたら可哀想だから、警察に
突き出したことは一度もない。1日1人を目標にし、荒稼ぎした。おかげで高校生のころから、同級生が年に
1度しか通えないような高級エステに足繁く通えたし、専門店で高価な美容品も大量に買えた。
 男を魅了する美は、高校時代の努力があってこそだった。大学に入ると、男がいくらでも寄ってきたから、
冴えない中年オヤジを相手にする必要はなくなった。
 高校時代みたいに痴漢をでっち上げる? でも、鼻がこんなじゃ、痴漢されたと信じてもらえないかもしれない。
 久恵に美貌を奪われたせいで余裕のある生活が滅茶苦茶になってしまった。

 翌日。大学に着くと、周囲の見る目があからさまに変わっていた。廊下に固まる同期生の集団が美穂を横目で
見やり、ヒソヒソと聞こえよがしに囁いている。
「来たよ……」
「うん。車椅子の子の怪我、あの女が原因なんだって」
「整形だってばれそうになったから、階段から突き落としたって」
「嘘でしょ。そこまでする?」
「最低」
 根も葉もない噂に美穂は唖然とし、同期生の集団を睨みつけた。女たちは、「行こ。私たちも突き落とされるよ」と
足早に立ち去った。
 廊下を進むたび、複数の学生たちのヒソヒソ話が耳に入ってきた。
「ミスコン……投票者にお金をばらまいたんだって」
「……私、枕営業したって聞いたけど」
「……両方じゃない? 卑怯すぎ!」


256 :新田美穂 112:2009/12/11(金) 21:24:20 ID:hg0OPzZ/0
「整形とか八百長とか、虚飾の人生だね……」
「邪魔な車椅子の子……参加させないように手を回したんでしょ」
「その子、ショックで自殺未遂したって……」
「ひどすぎ……」
「昨日もトイレで瞳ちゃんが殴られたらしいよ」
「内臓破裂寸前だったとか」
 馬鹿言わないで。一発みぞおちに拳を叩き込んだくらいで内臓が破裂するわけないでしょ。
 美穂は早足で廊下を抜けると、ひとけのない物置の前に来た。背後から金属がこすれるキーッキーッという
耳障りな音が近づいてくる。
 振り返ると、車椅子を漕ぐ恭子の姿があった。彼女を見たとたん、苛立ちがこみ上げてきた。
「聖人君子気取るなら、真相を公言しなさいよ。怪我は飲酒運転の車のせいでしょ。ミスコンの件は私の言い分が
正論でしょ。あんたが説明すれば噂の大半は収まるのよ」
「……私にそこまでする義務、ある?」
「デマを否定しないってのは、デマの蔓延に協力してるってことなのよ」
 恭子のこういうところが嫌いだった。自分は何もせず、相手が自滅するのを待つ女。
「そんな噂が流れるなんて、前世で悪いことしたんじゃない? 因果応報かもよ」
 半年前に彼女に叩きつけた言葉を返され、カチンときた。恭子は車椅子を操り、背中を向けて去ろうとした。
「待ちなさいよ。連中の噂話はね、私の美貌に嫉妬して私を貶めようとしてるだけなのよ。私に非はないわ」
 無視して車椅子を漕ぐ恭子の首根っこを掴み、引き戻そうとした。彼女の上半身がねじれてかたむき、恭子は
車椅子から転げ落ちた。彼女は背中を押さえた後、右足を抱え込み、うめいた。
「痛いっ! 背中が。あ、脚が……脚が……」
「演技はやめなさいよ」


257 :新田美穂 113:2009/12/11(金) 21:25:30 ID:hg0OPzZ/0
「ほ、本当に痛いの。お、お願い。病院に……」
「悲劇のヒロインを気取らないで。そうすれば誰もが味方になってくれると思ってるんでしょうけど」
 美穂は呆れてかぶりを振ると、叫ぶ恭子を置き去りにし、物置の前を立ち去った。

 実は根気強く毎日リハビリをして最近は一人で立てるようになっていた恭子の脚が悪化し、一生立てないほどの
状態になったと聞かされたのは、2日後だった。また歩けるようになるかもしれないと希望に顔を輝かせていた
矢先の悪化だったという。車椅子から落ちた際、背中を打って神経が圧迫されたことが原因だった。「すぐに病院で
治療できていたら問題なかったのに」と医者が残念そうに言ったらしい。

「蹴り倒して悪化させたんだって」
 恭子が悪評の発生源に違いない。見舞いに来た友達全員に吹聴しているのだろう。
 恭子の入院する病院に乗り込んで彼女の両肩を揺さぶってやりたかった。
 本当は歩けるんでしょ。全部私を悪者にする演技なんでしょ。この卑怯者!
 現象数理Ⅰの教室に行くと、中から笑い声が聞こえた。
 美穂はドアの陰に立ち止まり、恐る恐る中を覗いた。
「新田美穂の物まねしまーす」とサリナが手を挙げる。顎を上げ、気取った口調で言う。「美人にも苦労は多いのよ。
低レベルの男たちが高級和菓子にたかるハエみたいに集まってくるんだから。分をわきまえないバカたちをあしらう
だけでも大変なの」
「似てる、似てる!」と数人が手を叩きながら爆笑する。
 自分の台詞や言い回しが嘲笑のネタにされることが耐えられなかった。




260 :新田美穂 114:2009/12/13(日) 01:53:57 ID:Wp0W0HXh0
 雅代が携帯を仲間に回した。グループの男女が順に画面を見て笑っている。雅代がトイレで撮影した写メだろう。
携帯を見た者は、一様に珍獣でも見た顔をした。
「艶が自慢だったみたいだけどさ、別に今も嘆くことないじゃんね」
「そう? カツラってあまり艶ないけど」
 艶がない? あんたの目は節穴? これは最高に光り輝く自分の美髪で作った人毛ウィッグなのよ!
「違う違う。ウィッグ外したらもう光り輝いてるし!」
 再び教室に広がる爆笑の声。美穂は屈辱に唇を噛み締めた。
「ざまあみろよね」
「個人輸入された未認可の薬で禿げたんでしょ?」
「そうそう。吸血鬼みたいに永遠の若さを手に入れようとして失敗。髪が抜けちゃったの」
「いい気味~♪」
「ホント、ホント。あいつ、私たちのこといつも見下してたもんね。それがさ、美貌の追求のしすぎで脱毛する
なんて痛快!」
「女として終わったよね」
 女たちが笑うと、下品な顔の男たちが携帯のディスプレイを覗き込みながら同調した。
「こんなハゲで豚鼻の整形女、告られても勘弁だよな」
「無理無理。絶対無理。裸になって迫られても逃げ出すね、俺。まあ、全頭マスクで顔を隠してくれりゃ、
同情で抱いてやってもいいけど」
 二人は以前、無謀にも告白してきた男だった。見つめられたら薔薇でさえ枯れそうなほど醜い外見だったから、
『枯葉剤には近寄りたくないの』と振ったのを覚えている。
 そんな二人にすら女として興味を持たれないなんて……。
「でもさでもさ」雅代が言う。「脂肪が漏れて乳がババアになってアソコも型崩れしたらしいよ」


261 :新田美穂 115:2009/12/13(日) 01:54:59 ID:Wp0W0HXh0
「マジで? じゃあ、全頭マスクされても無理だな。勃たねえよ、絶対」
「ならどうしたらヤレる?」
「うーん、そうだなあ。バーチャルゴーグルみたいなものを俺がつけて、誰か“女”が映ってたら、ヤレるかな。
新田以外ならとりあえず誰でもいいや」
 耳を塞いで逃げ出したかった。女神の美貌を持っていた私が女扱いすらされず、底辺に堕とされている。
意識から締め出している自分の今の姿が鮮明によみがえってきた。ウィッグや入れ歯や衣服で隠して忘れようと
必死になっているのに、一皮剥けば現れる本当の身体。髪も眉も歯も失い、鼻は豚鼻にされ、胸はナマコのように
垂れ、乳首も乳輪も茶色く肥大化し、アソコは黒ずんでビロビロ。陰毛もない。
 着飾って鼻さえ隠せば誰にも負けないのに、裸になったら女の最下層に転落する。久恵の罰ゲームに参加した
観客たちの提案で醜く変えられてしまった身体。
 ブス――。
 以前の私には最も遠い場所にあった単語なのに。
 気にしないように気にしないように、忘れたくて忘れたくて必死になっているのに、心ない連中の言葉で
現実を思い知らされてしまう。
「でもさ、あの高飛車な女がこの先無残な身体で生きてかなきゃならないって想像したらさ、何だか興奮するよな」
「するする。ざまあみろって感じ。あのクソ女が死にたいくらい悲しんでるって想像しただけでヌける!」
「私さ、前々からあの女の不幸を願ってたんだよね。事故って顔面大火傷すればいいのにって思ってた」
「あっ、私も私も。ネットの『嫌いな人間を呪うスレ』に書き込んだもん。新田美穂、不幸になれ、って」
 そう言ったのは奈々枝と久美子だった。友達だと思っていた二人だ。
「女王様でございます、みたいな顔してたあの女が惨めったらしい姿を晒してると気分いいよね。調子に乗ってた
天罰って感じ」
「そうそう、世界中の男は私に惚れて当然、って顔してたもんね」


262 :新田美穂 116:2009/12/13(日) 01:56:36 ID:Wp0W0HXh0
 女たちが言うと、二人の男が再び同調する。
「整形だなんて知らなかったからさ、大学の男の半数くらいは告って玉砕したんじゃね?」
「男なんてより取り見取りだったから、何人こっぴどく振っても気にならなかったんだろ」
 全員の悪罵の数々が胸にえぐり込んでくる。昔なら平気だったのに……。
 雑草の中に一輪の薔薇があれば、雑草たちは目立つ薔薇を疎ましく思い、枯れさせようと思うものだから。
そんな雑草たちのねたみは、自分の完璧な美貌を実感させてくれる肥料だった。
 でも、不幸のどん底に落とされた今は、ただただ悔しい。いい気味だと思われていることに耐えられない。
 思わず扉を握り締めたときだった。カタッと扉が音を立てた。同期生たちが振り返る。視線が絡まった。
美穂は反射的に踵を返して逃げそうになったものの、寸前で踏みとどまった。逃げた背中を爆笑が追いかけてくる
状況には耐えられない。
 毅然と振る舞えば、陰口を叩くしか能のない連中なんて黙らせることができる――はずだ。
「あっ、聞こえちゃった?」奈々枝が笑った。「ぶっちゃけ、私、友達のふりしてただけなんだよね」
 久美子がしれっとした顔で言葉を継ぐ。
「前からあんたのこと大嫌いだったんだあ。合コンだってさ、自分ばかりモテるからっていい気になってるしさ、
そのくせ、告ってきた男、全員こっぴどく振るしさ。私がいいなって思ってた男はあんたしか見てないし、なのに、
あんたは『30点の人生を生きてる人間には興味がないの』なんて彼のこと馬鹿にしたんだよ。私がどんなに
惨めだったか分かる? 30点の男に惚れてる女だって言われたも同じ」
「世界中の幸せを独り占めしたみたいな生活して、他人を見下して利用する最低女よ、あんたは」
 友達だと思っていた二人の裏切りだった。欺かれていた悔しさを押し隠し、砕かれたプライドの破片を
守るために何とか毅然と振る舞った。
「ふんっ。引き立て役にうってつけだから友達のふりをしてあげてたのよ。そんなことも分からないなんて。
ご愁傷様。私が本気であなたたち雑草と付き合うわけないじゃない。品種が違うんだから」
 言い負かしたと思った。私に口論で勝てる女なんていない。


263 :新田美穂 117:2009/12/13(日) 02:22:09 ID:Wp0W0HXh0
 一拍の間を置き、女たちがギャハハと爆笑した。
「うわあ、何か言ってるよ、この末期ハゲ」
「毛根もないくせに超エラそう!」
 美穂は動揺した。心臓の鼓動が速まり、息苦しさを覚えた。羞恥と屈辱に全身が熱くなる。めまいがした。
 何て容赦のない言葉を浴びせてくるの?
 下唇をギュッと噛み、奈々枝たちに詰め寄ろうとした。
「うわっ、こっち来んなよ。ハゲが伝染ったらどうしてくれんのよ!」
 足が硬直した。一歩踏み出したまま止まった。残酷な言葉の数々が心をえぐる。何てひどい言葉を平然と
口にするの? 私が髪を失った頭にどれだけ傷つき、どれだけ苦しみ、どれだけ思い悩んでいるか分からないの? 
お風呂に入るたびに受けるショック。自慢の美髪を永遠に失った頭を見るたびに味わう悲しみ。私が毎日毎日
どんなつらい思いをしているか知ったら、そんな残酷な言葉は口にできないはずよ。
 美穂は悔しさを噛み締めながらも、女たちを睨みつけ、負けじと言い返した。
「そうやって口から汚物を吐き出してるから、顔も汚くなるのね。謎が解けたわ」
「キャハハ、睨んでる、睨んでる! 豚が怖い顔で睨んでるよ!」
「ハゲ女きもい。死ね。ハゲ死ね」
「もう一生まともな社会生活や恋愛ができないくせに生意気!」
 一言一言が心に突き刺さる。精神的なダメージは明らかに自分のほうが大きかった。
 何を言っても、『ハゲ』の一言で完璧に言い負かされてしまう。心をズタボロに傷つけられたことが悔しかった。
美貌の鎧を纏っていたころは、無数の矢を射られても平気だった。他人の悪口で傷ついたことなんてない。
絶対的な優位があったから、低レベルな悪罵は負け犬の遠吠えに聞こえたし、そんな悔し紛れの哀れな台詞を
聞くたび優越感に浸れた。堂々としていられた。


264 :新田美穂 118:2009/12/13(日) 02:27:39 ID:Wp0W0HXh0
 でも、美貌の鎧を奪い取られ、素っ裸にされた今は違う。言葉の矢は肌に深く突き刺さり、心までえぐる。他者に
対して抱ける優位性が何もない。美を失ったらここまで心に余裕がなくなるものなの? こんなにもろく無防備に
感じるものなの?
 惨めさに打ち負かされ、涙がこみ上げてきた。
「ちょっ、泣いちゃったんじゃね?」
「もしかして傷つけちゃった?」
「アハハ! 傷ついてる! 傷ついてる! 前は他人の悪口なんてしょせん下等動物の鳴き声よ、みたいな顔で
平然としてたのに!」
 以前の私は他人からどんな悪口を言われても、薔薇に嫉妬する雑草の戯言だと分かっていたから傷つかなかった。
今では逆になっている。薔薇は彼女たちで雑草は私。女なら、中の下の顔に生まれるか、豚鼻のハゲに生まれるか、
選択を求められたら誰もが前者を選ぶ。彼女たちにとっては、自分のコンプレックスとは比べ物にならないほど
大きなコンプレックスを持っている女から口撃されても、痛くも痒くもないのだろう。
 二人の男が前に手ひどく振られた仕返しとばかりに言い募る。
「何、何、泣いてんの? バーカ、誰もお前みたいなブスには同情なんてしねえよ」
「そうそう、人間様は、醜い生き物に感情移入なんてできないからな」
 惨めだった。完全な立場の逆転だ。
「早く出てってよ。一緒にいたら私たちの格が下がるじゃない」
 格が下がる? 信じられない。薔薇に憧れる雑草たちにそんなことを言われるなんて。格が下がるのを承知で
付き合ってあげてたのは私なのよ。
「そんなさあ、ソーセージでも突っ込んで栓をしなきゃ鼻クソがこぼれ落ちてきそうな豚鼻の女、一緒に隣
歩かれたら迷惑なんだよね。男もどん引きして声かけてこないだろうしさ」
 残酷な言葉の矢に胸を射られ、美穂は瞳に涙を溜めながらつぶやいた。
「……私が悲しむ姿がそんなに愉快なの? 私が惨めな気持ちになったらそんなに嬉しいの?」



267 :新田美穂 119:2009/12/14(月) 06:44:44 ID:i3H8fBPX0
 男二人は、何当然の質問してんのこいつ、という顔で答えた。
「愉快に決まってんじゃん。メシウマってやつ? もう最高」
「もっと苦しめよ。笑ってやるから」
 美穂は我慢できず、拳を男の顔面に叩きつけた。男の鼻骨がひん曲がり、鼻孔がスプリンクラーになったように
鼻血が噴出する。男は悲鳴を上げながら倒れ、鼻を押さえながら悶えた。
 美穂は自分の行動に唖然としていた。口論に負けて先に手を出してしまった。
 口論は怒ったほうの負けなのに。言い負かされて暴力に訴えるのは負け犬なのに。
 女たち数人が悲鳴を上げると、中年の女教師が駆け込んできた。
「何やってるの、あなたたち!」
 細面の女教師は白髪を染めており、口元と目元に苦労皺が刻まれている。人生の勝利を諦めたような顔だ。
最近は懸命に婚活に精を出していると聞く。
「中野君が新田さんに殴られたんです」雅代が言った。
「どういうことなの?」
「この女たちが悪いのよ」美穂は正当性を訴えた。「私を……その、だから……」
「はっきり言いなさい!」
 言えるわけないじゃない! 禿げた頭を笑われたから腹が立って殴ったなんて! 怒った理由として惨めすぎる。
「……だから、その、わ、私の頭を笑いものにするから……」
「頭って何なの?」
 美穂は自分の口から屈辱的な言葉を言えず、黙り込んだ。そうすれば、女たちの誰かが言うだろう。しかし、
そんな期待を見透かしているのか、女たちは何も言わなかった。
「頭って何なの?」
「……その、私、だから、ウィ、ウィッグだから」


268 :新田美穂 120:2009/12/14(月) 06:45:37 ID:i3H8fBPX0
「ウィッグ?」
「カ、カツラみたいなものです。それを笑いものにされて、つい……」
 中年の女教師は女たちを睨み、「本当なの、あなたたち?」と尋ねた。
「違いまーす。新田さんのカツラが脱げて転がってきたから、拾ってあげたんですけど、そうしたら、
『返しなさいよ』とか叫びながら中野君を殴ったんです。彼、渡してあげようとしただけなのに」
 美穂は「白々しい嘘をつかないで!」と叫んだ。「ウィッグが簡単に外れるわけないでしょ」
 中年の女教師は、皺が伸びるくらい大きな口を開けてピシャリと言った。
「新田さん、早く謝りなさい!」
 何よ、最低。私のほうが正しいって分かるでしょ? 嘘ついてるのはこのバカ女たちだって分かるでしょ?
それとも、前にあなたの授業中に間違いを指摘して恥を掻かせたことを逆恨みしてるわけ? 教師のくせに生徒を
教えるだけの知識がないあなたが悪いんでしょ。
「処分を受けたいの?」
 どうあっても私を悪者にしたいのね。
 美穂は救いを求めて教室を見回した。以前なら大多数の男が無条件で同調し、手を差し伸べてくれただろう。
今は誰一人として味方してくれない。尾ひれがついて広まったせいで、『整形した人工の顔と身体で男を欺いた
卑怯な女』として憎まれている。
「……悪かったわよ」美穂は、鼻を押さえている中野に言った。「これでいいでしょ」
「あなた謝り方も知らないの!? 頭を下げてすみませんでしょ!」
 中年の女教師はヒステリックに叫び、美穂の頭を荒っぽく鷲掴みにした。
 髪を引っ張られ、ウィッグがズルッと滑り落ちた。永久脱毛剤で髪を奪われた頭が開陳され、美穂は「いやあ」と
叫びながらへたり込み、床に落ちたウィッグを拾ってかぶり直そうと必死になった。教室がざわめいた。雅代の
写メで見たのと同じ頭を実際に見て誰もが衝撃を受けている。


269 :新田美穂 121:2009/12/14(月) 06:51:16 ID:i3H8fBPX0
 爆笑や嘲笑に沸く教室の中、美穂は前後も乱れたままウィッグをかぶり、床まで垂れる長い黒髪の合間から
中年の女教師を睨み上げた。彼女は哀れな女を蔑む目をして鼻で笑っていた。何よ、こんな頭の女よりあたしの
ほうが幸せね、みたいな顔は!
 私の輝く肌を見なさいよ。シミもホクロもない蜜肌なのよ。もうすぐ老人斑が浮き出るような女とは違うのよ。
 ウィッグだと知り、恥を掻かせてやろうとわざとやったのは間違いなかった。そんな陰険な性格だから結婚も
できないのよ。あんたなんか、どうせ男に貢いで貢いで貢いだあげく、捨てられる程度の女じゃない。ううん、
40歳が間近だからもう女ですらない。
 今の美穂には、相手を見下し返して教室で大恥を掻かされた屈辱をほんの少しでもやわらげるしかなかった。

 次の授業のために教室を移動しようと廊下を歩いているときだった。曲がり角の先から『美穂』という単語が
聞こえてきた。思わず足を止め、壁から様子を窺う。
 知らない女子大生3人が噂話に花を咲かせていた。
「知ってる? 新田美穂ってさ、ミスコンのライバルたちを男友達にレイプさせたんだって」
 な、何よ、それ。そんなことしてないわよ!
 美穂は根も葉もない中傷にショックを受けた。ミスコンの女王は実力で勝ち取ったものなのに……。
 どんな噂にも最初に言い出した嘘つきがいるはずだが、それが誰かは分からない。噂の発信源となっている
人間は、こう言うだけでいい。『ねえねえ、新田美穂ってこれこれらしいよ』するとそれを聞いた人間がまた別の
人間に広める。今度はより事実っぽく。『新田美穂ってこれこれだって』そして次。『新田美穂ってこれこれ
だから最低!』伝言ゲームも数人目になると、嘘から出た誠でデマも真実になっている。
「美奈ちゃんっていたじゃん。彼女が大学やめたのって、そのレイプが原因なんだって」
 美奈ちゃんって誰よ。聞いた覚えもない。大方、家庭かお金の事情でやめたんでしょ。噂に真実味を加味する
ために誰かがその女の名前を持ち出したに違いない。


270 :新田美穂 122:2009/12/14(月) 07:21:54 ID:i3H8fBPX0
 悪意ある噂を広めているのは誰だろう。私の輝きの影に隠れて不遇の時をすごした女が、今こそ好機だとばかりに
中傷をばら撒いているの? それとも、ミスコンで敗れた女が美貌で負けたという屈辱的な現実を否定するため、
女王は卑怯な行為をしたから優勝した、と吹聴しているの? あるいは、どんな荒唐無稽で無茶苦茶なデマでも
真実になるのが面白くて好き勝手言っている愉快犯がいるとか?
 美穂は3人組がたむろする廊下を避け、目的の教室に向かった。
 以前の私なら、陰口の現場に遭遇したら堂々と澄まし顔で出て行って一言、冷淡な口調で言っていただろう。
『日の当たらない場所でしか生きられない人間って、そうやって日陰でコソコソ悪口言うしか脳がないのね』
 陰口を叩いていた連中は決まり悪そうに口を閉じ、反論を考えるものの、欠点のない完璧な美貌を前にしたら
何も責めるべき部分が見当たらず、結局はすごすごと尻尾を巻く。しかし、今は無理だった。豚鼻の女が毅然と
登場しても笑い者になるだけだし、どんな冷徹な台詞を口にしても、『ハゲ女』の一言で打ち負かされてしまう。
口論では絶対に勝てない。
 情けない気分だった。
 美穂は教室に入り、授業の準備を始めた。突然サリナが現れ、目の前に分厚い本が突き出された。図書館の奥に
長年眠っていたように埃まみれの本だ。彼女が埃叩きで本の表紙をはたくと、白煙のように埃が舞う。
「な、何すんの……よっ」
 手のひらで埃の幕を払ったときだった。真正面を向いた大きな鼻孔が埃を大量に吸い込み、ムズムズした。
鼻を押さえる間もなくくしゃみが出た。鼻の穴から鼻水が前方に飛び出す。粘着質の物体は1メートル先の床に
ペチャっと着地する。
 サリナの企みを知っていたのだろう、ワクワクした表情で遠巻きに様子を窺っていた学生たちが爆笑した。
「キャハハ、ミサイルが飛んだ!」
「きたなーい」
「教室汚すなよな」


271 :新田美穂 123:2009/12/14(月) 07:23:05 ID:i3H8fBPX0
 美穂は言い返すこともできず、くしゃみを繰り返した。ポケットティッシュを取り出す余裕もなく、鼻孔を
押さえる両手のひらが鼻水でベチョベチョになる。
「掃除機が咳き込まないでよ~」サリナが笑っている。「せっかく大きな吸い込み口が二つもあるんだから、埃を
全部吸引してよね」
 日常生活でまで笑いものにされるのは耐えられなかった。
 くしゃみが収まると、美穂は悔しさを噛み締めながらも、サリナを一睨みした。ミニスカートから伸びる
蜜肌の脚を組み替え、女王は下民なんて相手にしないのよ、という態度をとった。唯一残されたプライドは、
誰にも負けない美肌を見せびらかすことくらいだった。

 美穂は惨めな気持ちのまま帰宅した。
 一つのコンプレックスだけでも人間としての自信を失うのに、多重苦のようにいくつもコンプレックスを
作られたら、外出することにも躊躇してしまう。今の私を相手にする男なんているの?
 天国から地獄へ急転直下。女神のように誰もがあがめた私が最下層に堕とされてしまった。
 美穂はデスクトップ型パソコンを起動させると、育毛関連のサイトをネットサーフィンした。毛髪のサイクルに
関する説明を読み込んでいると、チャイムが鳴った。ウインドを閉じ、パソコンをスリープさせ、ドアを開ける。
同期生の女4人が立っていた。百合、洋子、萌、エリカだった。取り巻きの連中だ。私の美貌を見て感嘆し、
褒め称えるしか能のない連中。
「何なの?」
「新田さんが元気ないから、元気付けようと思って。上がってもいい?」
 元気づける? うぬぼれないでよ。あなたたちは私の髪を生やし、歯を生やし、胸を元通りにできるの?
あなたたちにできることなんて何もないのよ!


272 :新田美穂 124:2009/12/14(月) 07:40:57 ID:i3H8fBPX0
 以前なら容赦なく追い返しているだろう。でも、今は躊躇した。冷淡に扱ってソッポを向かれたら、味方を
失うことになる。デマの蔓延のせいで数少なくなってしまった味方を。
「入って構わないわ」
 リビングに招き入れると、4人は各々が楽しい話題を喋り始めた。暗い話題を避けているのは分かるが、
芸能人の恋愛がどうの月9のドラマがどうのと話されても、相槌に困る。
 美穂は適当にあしらった。
 30分ほど経つと、百合が立ち上がった。
「あの、トイレ貸してくれない?」

                ♯♯♯♯♯♯♯♯♯

 百合はトイレに入ると、鍵を閉めた。
 みんなで練った復讐計画だった。
 百合は7年間付き合ってきた彼氏を奪われた。正確には、美穂を紹介したら彼氏がのぼせ上り、彼女に高級品を
貢ぐようになってしまったのだ。美穂は友達の彼氏だと知りながら品々を受け取り続けたあげく、彼氏の貯金が
底をつくと、「すぐ女にプレゼントもできなくなる程度の男に価値はないの」と切り捨てた。
 百合自身も惨めな思いをさせられていた。絶対の美貌を持っていた美穂から、事あるごとにコンプレックスを
非難された。口元にニキビができたら、『肌の手入れが悪いのよ』と責められた。下手に出て対処法はないかと
訊いたら、「私の肌にニキビは一つもないもの。対処法なんて知るわけないでしょ」と鼻で笑われた。
 百合は素早く行動を起こした。ポーチの中から超小型の隠しカメラを取り出し、換気扇のフィルターの中に
設置した。洋式便器全体が盗撮できる場所だ。他にも台の下部に仕掛け、下からも映せるようにした。


273 :新田美穂 125:2009/12/14(月) 07:44:19 ID:i3H8fBPX0
 浴室の換気扇のフィルターの中にも設置する。レンズの直径は1ミリだから絶対に分からない。浴室全体が
鮮明に映るように角度を調整した。無線LANで半径3キロまで電波が飛ばせるタイプだ。高性能だからカラーで
くっきり盗撮できるし、赤外線機能付きだから暗闇でも問題ない。
 トイレと浴室に隠しカメラの設置を終えると、百合は便器にトイレットペーパーを押し込んだ。水が流れない
ようにしてから、トイレのドアを開けた。
「ごめん、美穂!! トイレ、詰まっちゃった!」
 美穂は鬱陶しそうにため息をつくと、トイレに入ってきた。便器を見て再び大きなため息を漏らす。
「ちょっと、勘弁してよね。私の部屋を汚しに来たわけ?」
 百合は「ごめん」と両手を合わせた。

 洋子と萌とエリカは、百合が美穂をトイレにおびき寄せると、すぐさま動き始めた。散開し、各々が持参した
超小型隠しカメラをリビングと寝室に設置し始めたのである。ソファが映るテレビの下、テーブルが映るキッチンの
隙間、部屋全体が映るトレーニング器具の上部――。
 洋子の恋人は美穂の色香に惑わされ、衝動的に肩を抱き寄せてキスしようとした。瞬間、肘鉄砲を鼻に食らって
鼻骨骨折。整形してもひん曲がった鼻は治せなかった。しかも、肘鉄砲だけで充分だっただろうに、急所への
痛烈な一撃のおまけにより、股間が潰されて勃たなくなってしまった。洋子はそれでも彼をまだ好きだったから、
やりすぎだと美穂に訴えた。すると美穂は冷淡に言った。
「私の唇は安くないのよ。勃たない男なんて男として用を成さないんだから、別れたら?」
 結局、彼は男としての自信を失い、自ら洋子の前から姿を消した。大好きだった彼。幼馴染で友達関係を長く
続けながらも、淡い恋心を消し去れず、友達歴16年目に思い切って告白し、恋人歴を刻み始めた矢先の
出来事だった。誠実で優しかった彼が浮気するなんて信じられず、美穂に何度も問い詰めたら、真相が分かった。
「彼が本当の愛を持ってるか確かめてあげたのよ。駄目ね、あんな浮気男は。私がちょっと胸元を見せて思わせ
ぶりな台詞を口にしたらクラッとしちゃって」


274 :新田美穂 126:2009/12/14(月) 08:28:31 ID:i3H8fBPX0
 大好きだった彼は美穂に誘惑され、気の迷いを起こして迫ったら鼻と急所を潰された。ひどすぎる。
 洋子は美穂の知人の中では綺麗なほうだった。だから、美穂は自分のほうが魅力的だと証明するため、そんな
口実を掲げて誘惑したのではないか、と疑った。
 萌は同い年の友達にパシリ扱いされることが好きじゃなかった。美穂と二人で買い物に行き、帰りに金払いの
よさそうなイケメンにナンパされると、必ず彼女に言われる。
「袋、預かっておいて。夜11時なら帰ってるから、届けて」
 人がいい萌は嫌な顔一つ見せず従った。11時に美穂のマンションを訪ねてまだ留守だったら、美穂が
帰宅するまで部屋のドアの前で待った。入れ違いになって、買ったものを取り出す時間が遅れたら可哀想だと
思ったから、深夜2時になってもドアの前で座って待っていた。真冬のことだった。寒風に晒され、身体を
震わせながら、かじかむ両手をこすり合わせた。
 帰宅した美穂の第一声は、「あんた、人の部屋の前で何やってんの?」だった。女王様の住居の前に居座られたら
邪魔なのよ、という口調だった。
「あ、あの、これ、袋……」
 おずおずと買い物袋を差し出すと、美穂は「ああ」と思い出したように受け取り、他には何も言わず部屋に消えた。
萌は閉まったドアを何分も見つめ続けた。美穂が温かいコーヒーでも持って出てきてくれるんじゃないか、と
期待して。
 期待はかなわなかった。15分後、美穂の部屋の明かりは消えた。
 寝室担当の萌は、ベッドが4方向から盗撮できる位置に超小型カメラを設置した。罪悪感に悩まされながらも、
本棚やタンスの上に仕掛ける。
 エリカは4人の中で唯一美穂を中学時代から知る女だった。美穂の悪質なやり口はよく知っている。彼女は決して
自分に被害が及ばないように立ち回る。高校時代、美穂が生徒会長に立候補したときだった。内申書のために立派な
経歴が欲しかったのだろう。美穂は形勢が不利と見るや、不良タイプの男友達に言った。


275 :新田美穂 127:2009/12/14(月) 08:33:35 ID:i3H8fBPX0
「比呂美が辞退してくれると嬉しいんだけど」
「どうすればいいんだ?」
「自分で考えてよ」そして、さも今思いついたばかりのように言う。「あっ、彼女、遅くまで学校に残ってるから、
毎日帰宅は夜9時ごろになるみたいよ。帰りはひとけのない夜の公園を1人で通るんだって」
 男は“自分の頭で”何をすべきか考え、仲間と一緒に対立候補の比呂美を輪姦した。バージンだった彼女は、
ショックのあまり、高校を中退した。噂によると、リストカットを繰り返し、今でも実家に引きこもっているという。
 大学に入ったころの美穂は、完璧な美貌を手に入れていたから、中高時代のように裏側で小細工をしなくても、
望むものが何でも手に入るようになっていた。だから、大学入学後は卑劣な行為をしていない。そのせいか、誰もが、
美穂は高飛車で言葉は厳しいけど悪女というわけではない、と思っている。だが、中高時代の美穂を知ったら、
イメージはひっくり返るだろう。美穂は、どんな小汚いことをしていても中高時代なんて過去の話だからもう
無関係、時効だから私には何の罪もない、みたいな顔をしているけど、当時ひどい目に遭った人間は決して忘れない。
 エリカは、真面目で頑張り屋の比呂美が好きだった。彼女が友人たちの押しに負けて立候補したときは、美穂と
対決するはめになることを気に病んでいた。まさか輪姦事件に発展するとは……。
 美穂と不良の会話を聞いていたエリカは、危機を比呂美に伝えたかったが、美穂に『分かってるわね』という
目で睨まれて何も言えなかった。美穂を敵に回すということは、高校の男の半数を敵に回すということだ。
美穂が不機嫌になると、男たちは元凶を責める。美穂に心酔するワルたちに恨まれたくない。命令されなくても、
連中は彼女の心情を察して行動するから。
 今では後悔している。夜の公園を通らないよう比呂美に忠告していたら、彼女は無事だったのに……。
 美穂は絶対の美貌を持っているからワガママなのだろう。何を言っても、何をやっても、咎められることがない。
ブスが言ったりやったりしたら非難轟々でシカトの対象になる行為でも、美人だから許される。そんな毎日を
送ってきた美穂は他人から嫌われるという経験がない。全世界から好かれて当然という顔で生きている。


276 :新田美穂 128:2009/12/14(月) 08:39:11 ID:i3H8fBPX0
 だから、ひどい目に遭った人間の気持ちを思い知ればいいと思う。
 昨日、雅代やサリナたちが『新田美穂を傷つける会』を結成した。会員は15人。会の趣旨は単純明快だ。美穂を
悲しませれば悲しませるほど点数が高い。一番傷つけることができたら優勝。
 エリカは百合や萌や洋子と一緒に会に加入した。会の趣旨を聞くとイジメの加害者集団みたいで嫌な気分に
なるけど、女王だった美穂に4人で仕返しする勇気はなかった。悲しいことに従者根性が染みついてしまっている。
それに、彼女の味方は減っているとはいえ、どこにどんな信者がいるか分からない。ひ弱な4人じゃ、裏切りに
気づいた美穂の命令でどんな目に遭わされるか……。
 会に加入したのは、ウサギが雌豹に立ち向かうために仕方なくだった。
 リビング担当のエリカは、机に置かれたデスクトップ型パソコンの電源が入っているのを確認すると、
スリープモードを解除し、キーボードを操った。あるサイトに行き、スパイウェアをダウンロードした。
 隠しカメラを設置中の洋子が「何してんの?」と訊く。
「スパイウェアのインストール。これで美穂がパソコンで何をしているか全部確認できちゃうの」
 ネットの利用状況を監視するタイプだ。企業が社員のパソコンを監視するのに使っている。これをインストール
しておけば、美穂がどんな検索単語を入力したか、どんなサイトを見ているか、どんな順でそれぞれ何分ずつ
閲覧したか、ネットでどんな商品を購入したか、メールで誰とどんなやり取りをしたか、24時間監視し、エリカの
パソコンに逐一送信する。しかも定期的に画面をキャプチャし、全操作のログを記録する機能もある。
 このスパイウェアは存在を隠す機能があるため、第三者のパソコンに一度仕込んでしまえば、ネットワークを
通して標的の全操作が盗撮できる。パソコンはプライバシーの宝庫だから、標的の考えや望みや趣味嗜好を
知ることができる。
 例えるなら、透明人間になって美穂の背後に立ち、パソコンの画面を覗き見ているのと同じ効果があるのだ。
 謀反を起こすには女王の弱みを知らなくてはいけない。
 仕掛けには1分もかからない。インストールが終わると、履歴を消して証拠隠滅をした。


277 :新田美穂 129:2009/12/14(月) 09:08:46 ID:i3H8fBPX0
 次に目をつけたのは、美穂のパソコンの上部に設置されている目玉型の黒いWEBカメラだ。ビデオチャットを
するときに利用するカメラである。
「これ、ハッキングしちゃう? 高性能なWEBカメラだから綺麗に映ると思うよ」
「そんなことできるの?」と洋子が訊く。
「うん。WEBカメラとマイクをスパイウェアで乗っ取っちゃうの。パソコンの電源が切れてても、WEBカメラを
起動させちゃうんだよね。接続してないと起動しないはずのWEBカメラが常時作動状態。監視カメラに早がわり! 
美穂もまさかビデオチャット用のWEBカメラが盗撮してるなんて思いもしないと思う。盗撮した映像は転送されて
私のパソコンで見れるの」
「それいいじゃん!」
 エリカは慣れた操作でWEBカメラのハッキングを終えた。仕事を全て終えると、二人は小さく笑い合った。
「これで美穂のプライバシーはゼロだね」と洋子。
「プライバシーも私生活も丸裸だよね。24時間監視できるし」
「……でも、何だか私たち、集団ストーカーなみだよね」
「そんな考えはやめようよ。これは正義なんだから。独裁者を倒すためにスパイしてるの、私たちは。
そう考えようよ。私たちが罪悪感を覚える必要なんてないはずなんだから」
「うん、そだね」洋子はうなずいた後、両手を叩き合わせた。「あっ、そうだ。みんなでさ、美穂が1週間以内に
オナニーするかどうか賭けをしようよ」
「それ、面白そう!」
「私はするほうに賭ける」
「私も! みんなはどうかな?」
「後で聞いてみよ」







284 :新田美穂 130:2009/12/16(水) 14:41:26 ID:/l+SQuln0
 押しかけてきた取り巻き連中が帰ると、ようやく落ち着けた。
 低レベルな会話を繰り返したあげく、トイレまで詰まらせるなんて本当どうしようもない連中ね。役に立たない
なら立たないなりに迷惑だけはかけないでよ。私を褒め称えるしか脳がないくせに。
 午後10時になると、美穂はバスルームで裸になり、明るい浴室に入った。乳房が腹に垂れ下がっている。
相変わらず肥大化した焦げ茶色の乳首は床を指していた。裸で一歩を踏み出すたび、引き伸ばされたラビアが
内股でこすれる感触があった。最低の不快感だった。
 裏切った付き人の卑怯な利尿剤のせいで動きが鈍り、久恵に敗北したあの日から、女神としての人生が180度
変化してしまった。完璧な人生を悠々と送ってきたのに……。
 美穂はふと1年前のことを思い出した。海水浴場でナンパしてきた男がいた。
「一ノ瀬アメリよりスタイルのいい女、初めて見た!」
 ブ男だったから即座に切り捨てた。後日、一ノ瀬アメリというのが誰だか分からなかったので、ネットで
検索した。『ROOKIE'S』というAVのパッケージが最初にヒットした。大勢の前で股を開くしかお金を稼ぐ手段が
ない人間と比較されたと知り、腹立たしく思った。何より、こんなAV女優なんて比べ物にならないくらい
私のほうが完璧なスタイルと美肌を持ってるでしょ、と男を探し出して言ってやりたかった。
 でも、今の私なら、そのパッケージの彼女くらいのスタイルが取り戻せたら満足できる――そう本気で思った。
 誰もがうらやむ美貌を持っていたのに、会場に集まった嫉妬と悪意によって髪も鼻も胸もアソコも醜くされた。
 前は水着が大好きだった。バストアップ効果やウエスト引き締め効果のある下着やインナーをつけられない分、
体のラインがもろに現れる。人工的に外見を偽っていた女たちの欺瞞が暴かれ、自分は小細工なしで完璧な
肢体をアピールできる。歩くだけで世界の視線を集められる女だった。男全員の思考を停止させられる美貌だった。
でも今は……。
 日が経つにつれ、下品なリクエストをしたゴキブリみたいな連中に対する怒りが沸きあがってくる。
 私にこんな惨めな思いを味わわせるなんて何様のつもりなの!


285 :新田美穂 131:2009/12/16(水) 14:45:02 ID:/l+SQuln0
 ゴキブリは容赦なく踏み潰し、殺虫剤で息の根を止めてやればよかった。ブスなんて相手にしない、という態度で
放置し続けたから、わらわらと繁殖し、徒党を組んで羽音を立てながら襲い掛かってくるのだ。よってたかって
私の美貌を穢すなんて。
 ブスは生きているだけで迷惑なのよ!
 美貌を奪って同類を作ろうというやり口が気に入らない。
 屈辱と怒りに唇を噛み締めながら、自分の美髪で作ったウィッグを外した。タイルの壁に丸型の鏡を貼りつける。
恐る恐る鏡を覗き込んだ。両サイドに3センチほどの黒髪を残し、前頭部から頭頂部まで禿げ上がっている。
永久脱毛剤のせいで毛根は死滅していた。
 ああ、最低の、頭――。
 不細工な女が自分の顔に抱いているコンプレックスよりも強いコンプレックス。ブスは大勢いても、髪がない女
はまずいない。円形脱毛症の女か抗がん剤の副作用に苦しむ女か。少なくとも大学の女たちには髪がある。
街中を歩いている女たちにもある。私はそんな女たちより悲惨な状態にされてしまった。
 こんな滑稽な頭を負け組連中に見られたのだと思うと、恥ずかしさで胸が苦しくなる。
 ハゲオヤジの頭そのものだった。久恵の陰険なアイデア。尼さんみたいなスキンヘッドなら色気を感じる物好きも
いるだろうけど、波平状態にされたら滑稽で惨めで笑いものになるしかない。
 以前は、吐息で舞い上がる長い絹糸のごとき黒髪に同性の誰もが嫉妬し、感嘆のため息を漏らし、背中一面を
覆う豊かな髪に触れたがった。そんな女たちは今、私の黒髪が永遠に失われたことに溜飲を下げている。
 今後、ハゲ頭を隠す男のカツラを奪う悪戯をするみたいな軽い気持ちでウィッグを奪われないともかぎらない。
警戒していても不意打ちでひったくられたらどうにもならない。そんなとき、ウィッグの下から波平頭が
飛び出したら、爆笑と嘲笑の的になる。
 それならいっそ――。
 思い切って全部剃ってしまおう。


286 :新田美穂 132:2009/12/16(水) 15:16:07 ID:/l+SQuln0
 中途半端な状態よりましかもしれない。
 美穂は深呼吸して気持ちを落ち着けた。しかし、心臓の音は皮膚を突き破りそうなほど高鳴っている。自分の髪を
自分で剃る――生まれてから一度も想像したことがない行為だった。
 でも、ウィッグを奪われて惨めな頭を晒し、低俗な連中の笑いものになるのは耐えられない。覚悟を決めよう。
 美穂は夕方に百貨店で購入した電動バリカンを取り上げ、スイッチを入れた。ウィィィィィンというモーター音を
聞いた瞬間、脳の奥底に埋めていた悪夢がよみがえった。身動きできないように椅子に拘束され、久恵がニヤニヤと
勝ち誇った顔で迫ってくる。バリカンという凶器が雄たけびを上げている。10年間伸ばした自慢の美髪に刃が
食い込む。目の前を雪崩落ちる黒髪の束。喉から飛び出す悲鳴。命より大事な髪を奪われていく絶望感。
皮ベルトのせいで逃げたくても逃げられない無力感。私が泣き声を上げるたび、爆笑する観客たち――。
 忘れたかった記憶が押し寄せてきて身体が震え始めた。トラウマめいた動揺が胸を襲う。
「いやあああっ!」
 叫びながらバリカンを投げつけた。バリカンは壁に跳ね返り、タイル張りの床に落ちた。それは凶悪なうなり声を
上げながら、タイルの上で振動を続けている。陸に打ち上げられたピラニアがしぶとく生きようともがいている
ように見えた。
 美穂はかぶりを振りながら立ち上がり、壁際まで後ずさった。
 バリカンに対する恐怖心は、胸の奥深くに食い込んでいた。
 私の命を奪った凶器――。
 息は乱れ、全身に脂汗が染み出す。
 駄目、バリカンは使えない。
 震える指を伸ばし、スイッチを切る。
 息を整えながらT字カミソリを見つめた。
 直接剃ってしまおう。


287 :新田美穂 133:2009/12/16(水) 15:18:24 ID:/l+SQuln0
 美穂はシェービングクリームを手のひらに出すと、両手でこすり合わせて泡立てた。頭を挟み込むようにして
泡を側頭部に塗りつける。鏡を見ながらT字カミソリを3センチの黒髪に寄せる。刃が触れるか触れないかの
距離に近づいたとたん、T字カミソリが小刻みに震え始めた。
 本能が――美人だった女としての本能が躊躇させる。
 なぜ? なぜ私がこんなまねをしなくちゃいけないの?
 10年間伸ばし続けてきた髪は、身体の一部だった。今は3センチの短髪にされているとはいえ、それを剃ると
いうことは、肌を傷つけるに等しい。自分で自分の肌を切るようなまねはできない。したくない。
 でも――。
 美穂は震えが収まるのを待ち、覚悟を決めた。
 T字カミソリを這わせると、シャリ、シャリと音がした。二枚刃には剃られた黒髪が詰まっている。側頭部には、
刃に集められた白いクリームの山の中に黒い塊が見え隠れしている。
 美穂は蛇口をひねり、お湯でT字カミソリを洗った。綺麗にしてから再び刃を黒髪に走らせる。頭皮を傷つけ
ないように細心の注意を払いながら、剃った。普段は避けていた鏡を直視しなければならない屈辱。無毛にされた
頭から目をそらせない状況に胸が痛む。
 美人というだけで醜い連中から嫉妬され、美貌を奪われるなんて……。
 浴室で全裸になり、命より大事な自分の黒髪を剃っていると、惨めで屈辱的な気分になった。
 一時間以上かかった。以前なら美容に費やしている時間を剃髪に使わなくちゃいけないなんて……。
 美穂はシャワーで泡と毛を洗い流した。命同然だった髪の亡骸が排水溝に吸い込まれていく。
 喪失感を覚えながらも、美穂は鏡を見た。とたんに激しく後悔した。
 思っていたのと違う……。
 側頭部は青白くなっており、毛根が死滅した前頭部から頭頂部の肌色と差が浮き彫りになっていた。禿げた
部分と剃った部分の境界線がはっきり分かる。もともと髪が豊かだったから、剃っても青々としている。これじゃ、
ハゲを隠すために剃ってますよ、とアピールしているみたい。


288 :新田美穂 134:2009/12/16(水) 15:19:42 ID:/l+SQuln0
 尼さんや海外の女優のような綺麗なスキンヘッドじゃない。不自然なハゲ頭だった。
 剃ってから気づいた。髪を剃った女優や尼さんがそれなりにセクシーに見えるのは、全面に毛根があるからだ。
同じスキンヘッドでも統一感があるから、髪がないならないなりに格好良く見える。でも、私は違う。永久脱毛剤で
前頭部から頭頂部まで毛根を殺されてしまった。色の違いが醜く見える。
 こんな頭、いや……。
 豚鼻以外は完璧な美貌がある私なら、髪を剃ったその辺の女優よりセクシーに見えるのだと思い込んでいた。
でも現実は違う。みっともないだけだった。中年オヤジみたいに未練がましく伸ばしているよりはましという
程度だ。
 何をしても駄目なのね。ハゲ頭にされた女は一生コソコソ隠し続けろってわけ?
 だからといって、脱毛剤を買ってくるようなまねは絶対にできない。横も前も後ろも完全に毛がないほうが
見た目がよくなると分かっていながらも、自分の手で残りの髪を脱毛するなんてできない。そんなことをしたら、
何日も経ってから後悔してしまうだろう。
 惨めな気持ちでたたずんでいると、尿意がこみ上げてきた。夏場だからといって裸ですごしすぎた。
 美穂は内ももをすり合わせると、全裸のまま隣のトイレへ駆けた。垂れた乳房を揺らしながら。
 漏らす前に洋式便器に座る。間一髪だった。しかし、次の瞬間、小便がピピピピピッと飛び散った。反射的に
腰を上げてしまい、以前の二の舞になった。小便が個室内に飛散したのだ。
 美穂は慌てて両手を後ろから回し、中腰の姿勢で、ビロビロにされたラビアを広げ、排尿した。
「ああ、最低……」
 尿を出し終えると、美穂はトイレットペーパーを引き出した。太ももの周りを拭き、股を拭き、全裸のスキン
ヘッド姿で汚れたトイレの掃除をはじめた。尿の悪臭は個室に立ち込めている。
 何で私がこんな目に……。
 美しいというだけで私を恨み、私を貶めた連中なんて、産業廃棄物と抱き合わせにして海に沈めてやりたい。






294 :新田美穂 135:2009/12/17(木) 23:52:24 ID:WyC8gLOj0
 翌日、学年主任から呼び出され、恭子の脚の怪我の件で事情を聞かれた。
「彼女がバランスを崩したものだから、支えようと両手を差し出したんです。でも、私が下手に車椅子の取っ手を
掴んでしまったせいで、彼女、背中から落ちてしまって。私は助けを呼ぶためにその場を離れたんですけど、
私が人を連れてくる前に彼女を見つけた生徒が119番してました」
 大学の評判を重視して事なかれ主義を貫く大人たちは、その説明を信じた。信じたふりかもしれないが、それで
納得し、お咎めなしだった。
 責任を追及されるとしたらそのほうが異常だと思う。実際、恭子の後ろ襟を掴んだだけで彼女は倒れ、勝手に
脚を悪化させたのだから。マッチ棒みたいにやわなんじゃないの? 健康な人間だと思って肩を叩いたら相手が
骨粗しょう症で骨が折れた――これで罪に問われる人間がいる?
 学年主任の判断は正しい。私が非難される理由なんて何もないもの。
 残念だったわね、恭子。大袈裟に騒いで自分の過失を私のせいにして私を転落させようなんて、無理なのよ。
聖人君子面して狡猾な女ね、全く。
 正義が勝ったという喜びも、日に日に尾ひれがついていく噂の悪質さには辟易した。
 廊下で女子大生3人が話している。
「あのくびれ、脂肪吸引で作ったらしいよ」
「うわっ、最低! 私たちなんて、昼ごはん少なめにしたり、デパートで階段使ったり、努力して頑張って
ダイエットしてるのにさ」
 その程度は努力って言わないのよ! 太りすぎたおばさんじゃあるまいし。
「掃除機で吸い取るのって反則だよね。楽して綺麗になろうとか、性格いやしすぎ」
「整形してない場所ってあるのかな?」
「目玉くらいだったりして」
 日々の努力で磨き上げた美貌を整形扱いされるのは屈辱だった。


295 :新田美穂 136:2009/12/17(木) 23:54:32 ID:WyC8gLOj0
 昔から美は正義だと思ってきた。でも、醜い女たちにとって美は罪だった。美しすぎるという理由でねたまれ、
憎まれ、あげく罪に相応しい罰として美を奪われた。連中の理屈で言うなら、罪=美なのだから、美を失った時点で
罪は消えてなくなるはず。なのに好機とばかりに誹謗中傷を繰り返す。
 何て低俗なの。
 美しかったことがそんなに憎いわけ?
 陰湿なセクハラを精神的なレイプというなら、連中がしていることは精神的なリンチだった。最低の人間たちだ。
美貌ゆえに憎まれるなんて、醜い女たちの世界の常識は狂っている。
 美穂は噂話が聞こえないふりを装い、3人から離れたところを通った。一人が聞こえよがしに「人造女」と
吐き捨てた。美穂は唇を噛みながらも無視を決め込んだ。
 突然、背後から小さな足音が聞こえた。ビクッとして振り返る。恥を掻かせるため、誰かがウィッグを奪おうと
足音を忍ばせているのではないか。そんな疑念が胸をよぎる。
 足音の主は、教室に向かう教授のものだった。
 美穂は安堵の息を吐いた。
 敵兵の接近を許したら命を奪われる兵士の気分だった。私にとっては、文字通り命を奪われるに等しい。
衆人環視の場で惨めな頭を剥き出しにされることは。

 帰宅した美穂は、デスクトップ型パソコンで育毛関連のサイトをネットサーフィンした。見ていると涙目になる。
踏みにじられた雑巾みたいに自分の顔が惨めに歪んでいるのが分かる。
 育毛剤の販売サイトにたどり着くと、適当なハンドルネームをつけて掲示板に書き込んだ。
『無駄毛の処理の最中に誤って永久脱毛剤が前髪についてしまい、10円玉くらいの広さが禿げてしまいました。
毛根がなくても効果がありますか? 教えてください。切羽詰ってます』
 女神同然の生活をしていた私がこんな書き込みをしている――想像しただけで惨めさが増した。


296 :新田美穂 137:2009/12/18(金) 00:09:52 ID:QT9juetw0
 パソコンにメールが届いたのはそんなときだった。確認すると、スポーツインストラクターの青年からだった。
 パソコンのメールには、一流の男たちの名前が並んでいる。スポーツ選手や俳優、モデル、大企業の御曹司。
出会った人間とメアドを交換するのと違い、本人のHPにメールを送り、知り合い、長い月日をかけて親交を
暖めてきたのだ。
 スポーツインストラクターの青年は、今夜ビデオチャットをしたいと書いてきていた。美穂はパソコンの上部の
WEBカメラを見つめた。目玉型の黒いカメラが光っている。
 WEBカメラは、海外や遠くの県で活躍する勝ち組たちと話すときに利用している。でも、今は無理だ。ビデオ
チャットをしたら、相手に豚鼻を見られてしまう。負け組連中とは違い、勝ち組との交友は大事にしているのに、
嫌われたくない。だからビデオチャットの誘いは巧みに断った。
 美穂はしばしパソコン画面を見つめた後、スポーツインストラクターの青年が1ヶ月前に送ってきたメールを
開き、添付されている写真を見た。ジムのトレーニングマシーンを背景に青年が笑顔で写っている。タンクトップは
ギリシャ彫刻なみの肉体美に盛り上がっていた。
 彼になら私の身体を与える価値があると前から思っていた。だけど、今の私は人前で裸になれない。
 美穂はネットで検索し、引き締まった身体の男の下半身が写っている画像を探した。誰のものかも分からない
立派なペニスの無修正画像を画面の下方に配置し、スポーツインストラクターの青年の顔写真を上方に配置する。
そして、彼の裸を妄想し、椅子に座ったままミニスカートの下からショーツに指を差し入れた。
 脂肪吸引された胸は揉んでも快感を得られないため、自然と下半身を選択した。
 美穂は椅子に座ったまま脚を開き、パソコン画面の2つの写真を見つめながら、自分を慰め始めた。
 感触で中指がビラビラの陰唇に包まれているのが分かる。指先を折り曲げ、小刻みに動かしていると、息が
乱れだした。目を半分閉じ、桜色の唇を半開きにし、画面のペニスを陶然と見つめながら、自慰を続けた。
 静かな部屋に、淫靡な粘着音だけがいつまでも響いていた。


297 :新田美穂 138:2009/12/18(金) 00:11:11 ID:QT9juetw0
 日曜日。
 美穂はマンションを出ると、ワインレッドのポルシェ限定モデルに乗り込んだ。ファイトマネーやCMの出演料の
大半を注ぎ込んで購入した1000万の車だった。自分の稼いだお金で買った数少ないものがこれだ。他人から
貢がれても愛着が湧かない。だから、自分で買った。自分の身体と同じくらい手間隙をかけて整備し、大事にして
いる最高の愛車。
 美穂はポルシェで遠出をして休日をすごした。自慢の車を走らせていると、日々の鬱屈もやわらいだ。
 美貌を奪われた今、プライドのより所は知性と何不自由ない暮らしとこの愛車だけだ。
 新たな面倒事がドアをノックしたのは翌日だった。
 恭子が刑事告訴したらしく、検察庁に呼ばれて事情を聞かれたのだ。
 美穂は事実無根だと主張し、それが認められて起訴されなかった。恭子に暴力を振るった証拠が何もないから、
検察官も有罪をもぎ取るのは難しいと判断したのだろう。
 事情聴取に呼ばれたこと自体が不本意だった。
 しかし、罪の追求が不可能と分かるや、恭子は民事裁判を起こし、損害賠償請求をしてきた。
 1年かかろうと2年かかろうと、美穂は理不尽な“暴力”には徹底して争う気だった。

 美穂は裸で浴室に入ったとき、勇気を振り絞って鏡を見た。知らないうちに横の髪が伸びていた。
側頭部の毛根は必死に頑張り、3ミリの坊主頭程度に黒くなっている。髪が伸びる姿を見ると、無意味なのに
嬉しくなってしまう。でも、黒く伸びたせいで再び滑稽なハゲ頭になっていた。
 手のひらで撫でると、徹夜した男の無精髭みたいにジョリジョリしていた。
 また、剃らなきゃ……。
 美穂はT字カミソリを取り上げ、側頭部にシェービングクリームを塗りつけた。
 せっかく伸びてきた髪だけど、剃るしかない。伸びれば伸びるほど禿げた部分との対比で惨めに見えるのだから、
綺麗に、綺麗に、剃らなきゃ。


298 :新田美穂 139:2009/12/18(金) 00:12:34 ID:QT9juetw0
 美穂は涙をこらえつつ、T字カミソリを側頭部に当てた。
 1ミリでも伸びていたらみっともない。これからは毎日剃らなくてはいけない。
 最低の気分だった。毎日お風呂に入るたび、自分の髪を剃らなきゃいけないの?
 憂鬱な気分のまま剃髪を終えると、シャワーで洗い流した。昔のような濡れ髪はなく、鏡には剥き卵状態の頭が
光っており、付着した水滴がキラキラしていた。信じられない光景を見続けていることに耐えられず、浴室の電気を
消し、アロマキャンドルに火をともした。薄暗くして自分自身の目から惨めな身体を隠すと、冷たいタイルに尻を
落とし、自分の毛で作ったウィッグを洗剤入りの洗面器に浸けた。3日に1度の欠かせない作業だった。
 タイマーで10分をはかり、ブラシでウィッグを溶かし洗いした。真ん丸い頭の影がタイルに揺れている。
 全裸の美穂は、薄暗い浴室で一人、頭の影を見ながらウィッグを洗い続けた。
 作業を終えると、身体を洗い、風呂を出た。
 肌触りのいい生地のパジャマを着ると、コンビニで買ったパスタで食事をした。水を入れた洗面器を持ってきて
習慣をはじめる。C字にした指を口内に突っ込み、上下左右に揺らしながら総入れ歯を抜いた。カポッと間抜けな
音がする。桜色の唇に皺ができ、歯のない歯ぐきに吸いつく感触があった。
 負け組連中が面白半分で全抜歯したせいで、食事のたびに味わわなくてはいけない屈辱感だった。
 美穂はテーブルに置いた洗面器の上で総入れ歯に歯ブラシをこすりつけ、作り物の歯を一本一本磨いた。
 ウィッグの洗髪も総入れ歯の歯磨きも、決して人には見せられない姿だった。優雅に勝ち組の暮らしをしていた
私が部屋でこんな作業をしているなんて、負け組み連中に知られたら死んでしまう。
 変わり果てた身体のことは忘れたいのに、毎日強制されるケアがそれを許してくれない。
 惨めな思いを噛み締めながら作業を終えると、ウィッグを専用の台に掛け、水の入った容器に総入れ歯を保管し、
ベッドに入った。





300 :新田美穂 140:2009/12/18(金) 02:50:00 ID:QT9juetw0
 翌朝、美穂は鏡を見てショックを受けた。睡眠は髪を伸ばす。夜10時から深夜2時までが最も成長ホルモンを
分泌する。そのせいで、昨夜はお風呂で綺麗に剃ったのに、朝起きたらもう青さが目立っている。
 嘘でしょ。
 今は伸びる髪が恨めしかった。
 美穂は服を脱ぎ捨てると、浴室に入り、再びT字カミソリとシェービングクリームを用意した。今後は毎朝毎朝、
大学に行く前に剃らなきゃいけない。自慢だった私の黒髪。それを毎朝毎朝――。
 でも何よりつらいのは、日の当たる世界へ出て行く前に、鏡で自分の頭を見なきゃいけないことだった。
目を閉じて剃ることはできない。髪を剃りはじめる前までは、浴室から鏡を排除し、自分の顔を見るときは
ウィッグをつけているようにし、髪を奪われた頭を見なくてもすむように工夫していた。だけど、これからは
毎朝毎朝直視しなきゃいけない。
 現実から目をそらせないほどつらいものはなかった。
 以前なら朝起きて身なりを整えると、全世界を手中に収められそうな自信がみなぎった。でも、今は違う。
朝が来るたび髪のない頭を直視し、長かった美髪を惜しみながら髪を剃り、ウィッグなんてものをかぶらなきゃ
人前にも出れない頭だと思い知らされる。人間としての自信や尊厳を根こそぎ奪われる。
 こんな気分のまま外出したら、人目が怖くなる。惨めになる。
 久恵は私が毎日こんなに惨めな思いをしているなんて想像もできないだろう。ただ、敗者から自慢の髪を
奪ってやれ、くらいのノリでバリカンと永久脱毛剤を使ったのだから。

 さらに翌日。美穂は服を着替えようとして目を疑った。
 自慢の美脚に――左太ももに、赤色の米粒を撒き散らしたようなニキビができている。恐る恐る鏡を覗くと、
右頬にも5つ6つの吹き出物があった。美穂にとっては、悪魔の侵食だった。
「いやあああっ!!」


301 :新田美穂 141:2009/12/18(金) 02:51:02 ID:QT9juetw0
 プライドのより所を失った瞬間だった。
 蜜肌が……毎日ケアしてきた輝く肌が……。
 会場で無責任に好き勝手を叫んでいた観客たちの声が聞こえてくる。
「肌が綺麗なのが気に入らないから、ブツブツのニキビ面にしてやって!」
「賛成! 顔も身体もブツブツだらけになればいいのよ!」
「ニキビや吹き出物だらけにしちゃえ!」
「いいね。肌を汚くしてやるのは大賛成!」
「早くやっちゃって!」
「二度と美人面できないようにしちゃえ!」
 美穂は幻聴に耳を塞ぎ、悲鳴を上げながらしゃがみ込んだ。
 これじゃあ、誰もがキスすら嫌がる。気持ち悪い。自分でも触りたくない。
 ニキビや吹き出物とは無縁だったから、できてからどうしたらいいのか分からなかった。衝動的に軽石で
ブツブツを削り取ってしまいたくなった。しかし、そんなことをすれば肌がどうなるか、想像できるだけの冷静さは
持っていた。
 ああ、こんな肌でどうしたらいいの?
 残された唯一の武器――陶磁器のように輝く肌――を奪われると、自分に何の自信も持てなくなった。
 私の人生は終わった――そんな思いが胸を突き上げてくる。
 大学に行きたくない。でも、行かないと留年してしまう。美貌を失い、未来を失い、学歴まで失ったら、
他人に誇れるものがなくなってしまう。
 美穂はこみ上げてくる涙をこらえ、ジーンズと長袖のシャツで大学に行った。自慢だった肌まで隠さなくては
いけない屈辱感は、言葉で言い表せない。豚鼻を晒している惨めさを跳ね飛ばすため、美脚と美肌を見せびらかし、
美人としてのプライドを保っていたのに……。


302 :新田美穂 142:2009/12/18(金) 02:52:39 ID:QT9juetw0
 大学に着くと、同期生たちが美穂の顔を見て「ぷっ」と吹き出したり、見下したりした。赤いブツブツが数個
散った頬は醜かった。取り巻きの百合も笑いを噛み殺しているように見える。思い返せば、彼女のニキビを
冷笑したことがあった。私の悲しみを少しでも思い知った? という気持ちだろう。
 サリナと雅代が「汚い。何かの病気? 私たちに感染さないでよ」と蔑みながら離れていった。
 美穂は泣き喚きたい気分になりながら、一日を耐え忍んだ。帰宅すると、ネットの検索でニキビや吹き出物を
治療する薬を探し、何種類も購入した。
 幸いにも、治療薬を塗りまくっていると、1週間で肌は元通りになった。
 安堵より恐怖心のほうが強かった。
 会場の女たちは、輝く蜜肌に嫉妬し、身体全面にレーザーを照射した。顔なんて特に念入りに照射された。
もしかしたら、数日後には全身が吹き出物だらけになるかもしれない。赤色の米粒を体中にぶちまけたような
有様になるかもしれない。
 イスラム教の女みたいに顔を隠して生活しなきゃならないはめになったら?
 最悪の未来像を想像し、眠れない日々が続いた。眠れても全身がブツブツだらけになった悪夢で目が覚めた。
寝汗がパジャマを濡らしていた。

 大学に行くのが億劫だった。
 嫉妬に狂った一部の連中が嘘を蔓延させたため、今や『整形で作った美貌でみんなを欺いていた人造人間』扱い
されている。恭子を蹴り倒して介護生活を余儀なくさせた『極悪女』扱いされている。
 そんな最低女が相手なら苦しめてやるのが正義だと誰もが思い込み、正義感で責めてくる。誰もが私を苦しめれば
苦しめるほど、正義にかなっていると信じている。
 冗談じゃない。恭子は自業自得でしょ。



305 :新田美穂 145:2009/12/18(金) 03:42:17 ID:QT9juetw0
 美穂は未知の快感に飲まれ、指で肥大化クリトリスをしごきあげた。
「くふうっ……ううっ……うくっ……」
 一度しごくたび、身体が海老反りになる。陰核は徐々に勃起し、少女の小指くらいに存在を主張し始めた。
美穂は仰向けに倒れこむと、美脚をM字に開いたまま、右手でクリトリスを上下にしごき、左手でツルツルの頭を
撫でながら快感をむさぼった。日々のストレスを弾き飛ばすように。
 10分も起たないうちに息も絶え絶えになり、絶頂の大波が身体の内側で渦巻いていた。
 撫でただけでこんな気持ちいいなら、男に頭を舐められたらどんな感じがするんだろう……想像しただけで
身震いし、子宮が収縮した。
 イ、イクッ――。
 美穂は甘い鼻息を漏らしながら全身を打ち震わせた。ビラビラになったラビアが痙攣しているのが分かった。
 しばらく余韻に浸った後、息を整え、ナイトテーブルの引き出しを開けた。分厚い文庫本を取り出し、開く。
本の中心部が四角形にくり貫かれており、ピンクローターが隠してあった。
 美穂にとって自慰は羞恥の対象だった。男やセックスの話題をあけすけに話す女たちも、オナニーの話題だけは
口にしない。自分で慰める行為に惨めさを感じるのか、セックスの相手もいないことを知られるのがいやなのか。
だからローターは完璧に隠していた。
 美穂はローターのスイッチを入れると、肥大化したクリトリスと乳首を交互に痺れさせ、二度目のオナニーを
はじめた。




349 :名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 02:35:49 ID:27TZH61o0
バシッ
(え?)

一瞬、エリカには何が起こったのか理解ができなかった。
だが頭頂部が熱を持つにしたがい、自分が頭をはたかれたのだと気付いた。
理解すると同時に怒りがこみ上げ、感情のままに叫ぶ。

「何をするの!? 暴力を振るうなんて最低よ!」
「あ゛?」

ミホは何を言われているのか分からない、といった表情でこちらを睨む。
その圧迫感に自然と足が震えだすような恐怖にとらわれる。
自分はもしかして、とんでもないことをしてしまったのではないかと弱気にすらなった。
だが、持ち前の正義感を鼓舞し、再びミホに怒鳴りつける。

「アナタね、お友達が騒いでいるから注意した私を叩くなんてそんなこと」
「ミホ、このオバサンのほうがうるさいから黙らせてよ」
「あ゛」

エリカの言葉をさえぎり、少女の一人がミホに指示を出すと、エリカの体が浮き上がった。
ミホがエリカを持ち上げ、首を絞めたのだ。

「な、ぐ、うげぇ!」
「あ゛~」


350 :名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 02:51:35 ID:27TZH61o0
頚動脈が絞められ、意識が薄れていく感覚に恐怖する。
また、気道も塞がれているのか呼吸も満足に行えず、口を金魚のようにパクパクと開閉してしまう。
なんとかミホの手から逃れようと必死でもがくが、首に絡まる太い指はピクリともしない。
足もバタつかせても床の感覚が得られず、さらに恐怖を加速させるだけだった。

(死ぬ、死んじゃう、そうだ、誰か助けてくれるはず……)

横目で周囲を確認すると、エリカは驚愕した。
店内に少なくない数がいた客は、そそくさと逃げるように立ち去りだしたのだ。
残っている客や店員すらも、見てみぬフリを決め込んでいるようだ、通報する素振りすらない。
無論、目の前の席についている少女達は笑ってこちらを見ているだけだ。
エリカは絶望に心を支配された。

(うそ、苦しい、死ぬ、本当にしんじゃう!)

助けをまったく期待できないと知るや、さらに動きを大きくする。
だが、ミホの丸太のような腕は微動だにせず、無駄に体力を消耗するだけだった。

(なんで、なんで正しいことをしてる私がこんな目に!)


351 :名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 03:01:37 ID:27TZH61o0
肺の空気を搾り出したのか、息苦しさに目眩を覚える。
それでも必死に空気を取り入れようと鼻を膨らませて、呼吸を行おうとする。
だが、慣れない動作に焦ったのか、ブピュッと鼻水を噴出してしまう。

「あははは、このババア、鼻水ふきだしてるよ!」
「割と美人だと思ったけど、台無しじゃ~ん」
「いい気になってるからそうなるんだよ」
「ミホ、もっと締め上げてやりなよ!」
「あ゛」
(う、嘘でしょ、これ以上やられたら)

ミホは観客の声援に応えるかのように、指に力を入れていく。
完全に気道をふさがれ、エリカはパニック状態に陥った。
なんとか酸素を吸入しようと口を動かすが、ヨダレを撒き散らすだけに終わる。
あまりの屈辱と死への恐怖で、涙が溢れ出し、真っ白になった顔を伝っていく。
エリカの顔は汗と涙と鼻水と涎で、ビショビショになっていた。


352 :名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 03:12:16 ID:27TZH61o0
「だはははは、すごい、すごい顔になってる!」
「マジウケル~」
「これ死ぬんじゃね? 死んじゃうんじゃね?」
「大ジョブだよ、ミホは力加減分かってるもんな、なぁミホ!」
「あ゛~」

とても何かを理解しているとは思えぬ白痴の笑みを、巨躯の女性は浮かべた。
エリカは本当に殺されると思い、恥も外聞も捨てて命乞いをしようとする。

(わ、私が悪かったです、だから、どうか命だけは)

勿論、声に出したつもりのその言葉は少女達には届かなかった。
絶望が心に押し寄せ、エリカは死を覚悟した。
腋に大量の汗が浮かんできているのが分かり、シミにならないかな、と暢気にそんなことを思った。
それ以後は何も考えられず、全身から力が抜けていく。
股間に大量の水流があふれ出していくのを理解したのは数瞬後だった。


353 :名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 03:27:10 ID:27TZH61o0
スカートの間を黄色い水滴が落ちたかと思うと、それは奔流になった。
大竹エリカは二十三歳にして、ファミレスの店内で失禁してしまったのだ。
じょばばばばば、と恥ずかしい音が耳に届くと思考が戻り、脳内が羞恥に染まる。
スーツ姿の女性のスカートに恥ずかしいシミが広がっていく。

(あ、い、いや、オシッコ、オシッコ漏らしちゃった)

鼻水を噴出したときよりも激しい羞恥がエリカの胸中に満ちた。
社会人として、女として最も恥ずかしい恥をさらしてしまった。
店員や残りの客の視線を感じて、血の気の引いた顔に羞恥の熱が戻ってくる。

(見ないで、お願いだからオシッコ漏らすの見ないでぇ)
「ぶひゃははは、ションベンたらしたぞ、この女!」
「偉そうに説教してたくせにはずかし~」
「マジウケル~」
「ミホ、ババアのオシッコついちゃうから、放せよそんなゴミ」
「あ゛」

必死に願っても、少女らはここぞとばかりに囃し立ててくる。
内心でバカにしていた少女達にバカにされ、悔しさがあふれてくる。
ミホが手を離すと、エリカは垂直に、自分の出した黄金水の上に落下した。

「ぶえっ」

顔から落下したエリカは、顔面に自分の体液を浴びて、体中をオシッコまみれにした。




363 :名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 02:58:43 ID:BHCrcMcM0
大竹エリカは顔や全身が尿にまみれるのも構わずに、ぜぇぜぇと呼吸を繰り返している。
強烈なアンモニア臭も同時に吸い込んでしまうが、必死に酸素を取り入れようとしている。
手足ががくがくと震えて立ち上がることもままならず、産まれたての子馬のような状態だ。
早く床の尿水から顔を離したいのに、それすらも今のエリカには困難な作業だった。
そんな滑稽な様子を見て、また少女達がゲラゲラと笑い出す。
なんとか腕の力で上体を起こし四つんばいの状態になったとき、エリカの口から何かがこぼれた。
その白い小石のようなものは、ポチャンと音を立てて黄色い水溜りに落下した。

(あ、あ、嘘、嘘よね、そんな)

尿の味がする口内を探ってみると、いつもあるはずの存在が感じられない。
オシッコに落ちたのは紛れもなくエリカの前歯だった。
顔から地面に落とされたショックで歯が抜けてしまったのだ。

「ぎゃははは、前歯が抜けちゃったよ」
「間抜けな顔だなぁ」
「マジウケル~」

自身のあった美貌すらも汚されて、あまりの屈辱に尿まみれの顔の上を涙が伝う。
そして、状況が分かってくると同時に怒りが湧き上がってきた。


364 :名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 03:06:16 ID:BHCrcMcM0
「こ、こんなことしてただで済むと思っているの?」
「あん?」
「これは立派な傷害罪よ、訴えてやるわ、貴女たち、みんな刑務所行きよ!」

エリカに法律の知識などさらさらなかったが、勢いから怒りをそのまま吐き出してしまう。
不良少女らは息を荒げて興奮する女性に対し、嘲笑を浮かべて言い返す。

「はぁ? みんな~オシッコ漏らしちゃった女がなんか言ってるぞ」
「くっせぇ、くっせぇ、そんな姿でまだ説教かよ」
「歯抜けが大口開けてだせぇんだよ」
「おいミホ、このババァまだ懲りてないみたいだから黙らせろよ」
「あ゛」

顔からぽたぽたと尿水をたらした自分の格好を指摘され、羞恥が沸きあがる。
自分はこんな頭の悪そうな女の子達にすら、バカにされる存在になってしまった。
そう自覚してしまうと、エリカは恥ずかしさでそれ以上何も言えず口をつぐんでしまった。
その隙を突いて、後ろに迫っていた大柄な女性が指示に従い、すでに沈黙しているエリカを黙らせようとしてきた。

ガスッ
「んぐっ!」


365 :名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 03:58:30 ID:BHCrcMcM0
ミホは思い切りエリカの背中を踏みつけにして、再び尿の海に叩き込んだ。
厚底の靴で背中をぐいぐいと押しやられ、顔が歪むほど床にこすり付けられる。

「んん、ぷぅっ、ぃやぁ!」
(痛い、痛い、痛い!)

全体重を乗せるかのように背骨を靴の裏側で押さえつけられ、痛みで気が狂いそうになる。
助けを求めようと口を開くが、自身が漏らしたオシッコが口に入ってきて余計惨めになるだけだった。

「うぜぇんだよ、このブス、すきっ歯!」

前に座り込んだ少女に髪をつかまれ、顔を床に叩きつけられる。

がすっがすっがすっ
(イタイいたい、また歯が折れちゃう!)

今度は折られまいと歯を食いしばるが、床とぶつかる部分が鼻になるだけだった。
鼻の奥からどろりとしたものが流れ出してきて、自分が鼻血を出しているのが分かった。
先ほど尿で洗い流された鼻水の跡に、鼻血の道が新しく生まれた。
何とか許してもらおうと再び命乞いをしようとするが、背中を地面に押し付けられ
顔を間断なく上下させられ地面と叩き合わされ、エリカは何も喋ることが出来なかった。


366 :名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 04:00:48 ID:BHCrcMcM0
「で、傷害罪があんだって?」
「あ、あぶ、あぶぶぅ」

何十回と顔と床を衝突させられ、数分が経過してからようやく上下運動は停止する。
鼻は真っ赤にはれ上がり、それ以上に真っ赤に鼻血に染まっていた。
唇も切れたようで、食いしばっていた歯の間から鮮血が流れる。
また、途中から歯を食いしばることが出来なかったようで、取れた前歯の隣の
側切歯と呼ばれる歯も、ポロリと零れ落ちてしまった。
エリカは心の底から後悔した。
一度は命乞いをしてまで許してもらおうと思っていたのに、また怒りに任せて怒鳴ってしまった。
逃げるべきだったのだ、そう思っても拘束された状態では遅すぎる反省だった。

(あ、あ、あ、謝らなきゃ、許してもらわないと)
「あ、ご、ごめ、ごぶぅえ!」

年下の少女の媚を売るために、必死で謝罪をしようとしたその瞬間。
鼻血や尿が気管に入ってしまったのか言葉の最中にむせてしまう。
すると唾とも尿とも鼻血ともつかない液体が、目の前の少女の顔に飛んでしまった。

(あ、あ、あぁ)
「……上等だよ」
「ち、ちが、ちぎゃう!?」

否定をしようとした台詞は、少女の右拳によってさえぎられた。


367 :名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 04:09:06 ID:BHCrcMcM0
エリカはいつの間にか右を向いていた。
少女に左頬を殴られて向かされたと気付いたのは、熱を帯びてきた後だった。

(は、はわ、はわわ)

今までに生きてきた中で考えられないような行為を散々やられた。
頭をはたかれ、首を絞められ、お漏らしを見られ、背中を踏みつけにされ、顔を叩きつけられた。
それでも今、生まれて初めて殴られたことが一番ショックだった。
これまでの人生でエリカは他人に顔を殴られたことなどなかった。
親や教師ですら美人のエリカの顔には手を上げることさえなかったのだ。
あまりのショックに膀胱に残った残尿をちょろちょろとこぼれさせてしまう。

「ご、ごめんなびゃい~」

エリカは泣いた。
痛みや屈辱で涙を流したことはあっても、大人になってから怖くて泣いたことなどなかった。
それでも目の前の年下の少女が何より怖くて、正義感も闘志も何もかも打ち捨ててひたすらに
泣き声をあげる。

「う、ぅえ、ぶえ~!」
「あっはっは、泣いちゃったよ、かーわいそ」
「うるっせえんだよ!」

再び少女が激怒して右パンチを繰り出してエリカの泣き声をさえぎる。
だが、ひきつけを起こしたように泣きじゃくるエリカの声は止まらず、
少女は延々と目の前の女の顔を殴り続けたのだった。



379 :名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 20:38:43 ID:Q9xjXpAf0
久保カオルはサンタだった。
正確にはサンタの衣装を元にした女性用のワンピースを着て、街頭で看板を掲げるバイトだ。
クリスマス商戦に向けて大型デパートで急募していたのである。
その中でも、ひときわ輝く美貌を持っていたカオルはデパートの正面入り口を任されることになった。
そのことを密かに自慢に思っていた彼女だったが、事件はバイト終了時に起こった。

「あんたさぁ、チョーシにのってるよね」
「え?」

同じバイトに応募していた仕事仲間の少女がデパートの裏で話しかけてきた。
看板等の荷物を置いて、あとは着替えて帰るだけといったところで急に話しかけられ、カオルは動揺した。
何か仕事でミスでもしたのかと思ったのだが、そうではないらしい。
どうやらモデル並みの器量を持ったカオルがひいきされていると思ったようだ。

(馬鹿馬鹿しい、自分が十人並みの容姿だからってひがんでいるのね)
「あの、急いでますので」
「は? クリスマスにこんな仕事やってんだからカレシもいないだろ?」
(あんたと一緒にしないでよ)


380 :名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 20:55:36 ID:Q9xjXpAf0
カオルは現在、特定の異性と付き合っているというわけではなかったが
その器量から引く手あまたで、今日もこれから飲み会の予定が入っているのだ。
時間つぶしに適当に受けたバイトで年下の小娘に絡まれ、内心うんざりしていた。

「ごめんなさい、何かしたなら謝ります、これでいいですか?」
「はあぁ? 舐めてんのかテメェ!」

少女はカオルの言葉に急に激昂したのか、持っていた看板を振り回してきた。
その木製看板は、ガスッという音を響かせてカオルの額に激突した。

「いたっ!」

額の上からどろっとしたものが目蓋の上を流れ落ちてきて、視界が赤く染まった。
左眉の上の部分の皮膚が切られ、血があふれ出してきたのだ。
急に殴られた痛みと、自分の美貌が損なわれたショックでカオルは反射的に叫んだ。

「何すんのよ、このブス!」
「本音が出やがったな、誰がブスだオラァ!」

カオルと同じ可憐なデザインのサンタ服を着た少女は、奇声を上げて襲い掛かってきた。
とっさに逃げようとしたカオルは背を向けて逃げようとしたが、頭にものすごい衝撃を受け
下半身から力が抜けていき、地面にくず折れるようにして倒れる。
頭頂部に垂直に看板の角を叩きつけられ、腰が抜けてしまったようだ。

(た、立てない、頭が割れるように痛い!)
「オラオラどうした、逃げねぇのかよ」


381 :名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 21:14:24 ID:Q9xjXpAf0
額からぽたぽたと滴る血の飛沫に、恐怖から脂汗も加わる。
デパートの裏は閑散としていて、ゴミ捨て場と店員用の入り口くらいしかない。
助けを期待できないと理解すると、カオルの心臓の鼓動が早鐘のように響いた。

「どうせ店長に色目でも使ったんだろ、いや体かな」
「や、やめなさいよ!」

少女はカオルのスカートをまくり、下着を露にしてきた。
屋外でショーツを丸出しにされているのを風で感じて、カオルは赤面した。
そのぷっくりと膨らんだ臀部に、轟音とともに衝撃が響いてきた。

「ひぃいっ!」
「オラオラ、そんな締りのねぇケツにはオシオキだよ!」

少女は持っていた看板の広告面で、カオルの尻を打ち据える。
幼児に尻叩きをするような心積もりでやっているのだろうが、痛みはその比ではない。
お尻の筋肉から背骨を駆け上がるような鈍痛が脳まで響いてくる。
なんとか痛みから逃れようと四肢を動かすが、寒さと恐怖で震えた手足は言う事を聞いてくれなかった。

「いたっ、いだい、やめなさいよ!」
「敬語もしらねぇのか、このメス豚!」
ばしっばしっばしっばちぃっ
「ひぃ、ひいいぃ、やめて、やめてください!」

何度も何度も木の板に打ち据えられ、カオルの臀部は下着から覗く部分が真っ赤に晴れ上がる。
子供のころ以来の、尻を叩かれる痛みに涙を流して許しを請う。
お尻中に広がる痛みにそれ以外のことは考えられず、形の整ったヒップをプルプルと震わせ
少しでも衝撃を和らげようとするさまが、普段のカオルからは考えられないほど滑稽だった。
するとその時、従業員用の扉が開いて着替えを終えた他のバイトの少女達が出てきた。

「あん? あんたら何やってんの?」
「! た、助けてください、この子がいきなり襲ってきて!」


382 :名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 21:32:20 ID:Q9xjXpAf0
「ああ、久保さんだっけ? アンタ態度でかかったもんな」
「そうそう、すました顔しちゃってさぁ」
「いい気味だよバーカ」
「アンタらもやる? 結構楽しいよ」
「やるやるー!」
「そ、そんな……」

あれほど待ちわびていた助けが、一変して敵になると泣きたくなるような絶望感に包まれた。
少女達は代わる代わる看板を持ち替えて、カオルの尻にスイングをしてきた。
手足をベルトで縛られ固定され、衝撃を逃がすことも出来なくなっていた。

「ひい゛ぃっ、いだい、いぢゃいっ、やめでえ!」
「邪魔だな、パンツも脱がしちまえ」

泣き喚いて必死に許してもらおうとするが、一向に少女らの責めは止まらなかった。
それどころかカオルの下着を脱がせて、直接看板を叩きつけようとしてきた。
外気が肛門に触れる感触に、カオルは気も狂わんばかりの羞恥に囚われた。
だがそんな恥らう気持ちも、次の瞬間飛んできたスイングによって吹き飛ばされた。

ばちいいいぃぃぃ
「いびゃああああああ!」
「うおっ、いい音」

尻肉が取れてしまったかと思うほどの衝撃に、鼻水をぶぴゅっと噴出して絶叫する。
その反応を見て、少女らは喜色満面で次々と看板を振るってきた。
カオルは涙と涎を撒き散らしながら、反省を繰り返すが誰も聞く耳を持たない。
臀部の内出血が無残なほど鮮やかに、夜の街に輝いていた。


383 :名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 21:48:44 ID:Q9xjXpAf0
「おら、おら、もっとメス豚みたいに泣いてみろ!」
「ひぃ、ひぐぅ、ぶひ、ぶびいいい!」
「だはは、本当に泣いたよ、みっともねぇ」
「美人だからってチョーシこいてるからそうなるんだよ」
「フルスイングいきまーす」
「! や、やめでぇ!」
バギィッ
「うびゃああらあああ!」

一番長身の少女の全力の叩きつけに、看板は耐え切れず柄の中ほどから折れてしまった。
カオルは体中を駆け巡る痛みに、胃を押されるような衝撃に断末魔のごとく悲鳴を上げる。
事実、すえた臭いのするような胃酸が口内を駆け上がってきて、胃の内容物とともに口からあふれた。
さらに肛門を中心に下半身の力が抜けたようで、ぶすっぶすっと腸内のガスを噴出する。
尿道にも力が入らず、じょろろろろと湯気を立たせて失禁してしまう。

「うは、ひでぇ、何もかも垂れ流しじゃん」
「こうなったら女としておしまいだな」
「看板も折れちゃったし、この遊びもおしまいかな」
「まだよ、トドメの一撃を決めてやる」

少女達の中で唯一のサンタ姿、最初にカオルに話しかけた少女が折れた木の棒を奪い取った。
すでに白目を剥いて、吐瀉物に顔を汚しながら痙攣している少女に向き直る。
折れてささくれ立った木の棒の先端を肛門に向けて、狙いを定める。
少女達も何をするか悟ったようで、小水にまみれた下着をまとわりつかせた下半身を中止した。
そして、サンタは躊躇なく凶器をカオルの肛門に突き入れた。


384 :名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 21:55:23 ID:Q9xjXpAf0
ぶぢぶぢぶぢっ
「っ! お、ぃ、ほげえええぇぇぇ!」

カオルの肛門は裂け、腸を蹂躙しながら槍は突きつけられた。
菊門からは血が噴出し、尻を伝って尿で黄色く染まった下着をぬらす。
カオルの顔は元の美貌など欠片も見出せないほど、痛みと恐怖で歪んでしまっていた。
涙と鼻水と涎と吐瀉物にまみれ、白目を剥いて口を阿呆みたいに開けている。
小鼻をぴくぷくとさせて、完全に失神していた。

「あーすっきりした、帰ろ帰ろ」

翌朝、大型デパートの店長が出勤すると店の前にはゴミ袋が置いてあった。
袋の下のほうは赤く濡れており「おいおい、生ものかよ」と思って中を覗くと、
全裸で肛門から血便をブリブリとひりだしながら、オシッコをちょろちょろ漏らし
目の焦点を合わせずへらへらと鼻水をたらしてヨダレをこぼして笑っている
元美人のサンタが入っていた。

「め、めりーくりしゅましゅ、あへ、あへへへ」



397 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 06:09:24 ID:vNUECefG0


西田仁美(27)は大手広告代理店のナンバーワン営業
仕事だけではなく、相沢紗世似のルックスで社内外から評判が高い。

(今日のコンペでざっと一億円、明日のK社の提案も決まれば社長賞ものね)

クライアントと高級店で食事した後、恋人の家に向かう途中だった。
勝ち誇った、自信に溢れる笑みを浮かべながら、颯爽と夜道を歩く。

モデルのようなスレンダーな身体をまとう
ピンクの短めのスカートに、白いジャケット、生脚美脚に黒いニーハイブーツという
色気のあるファッションが、先のクライアントがそうだったように、
すれ違う男達の視線も引いた。

(近道しようかな。暗くて汚いからあまり通りたくないんだけど。)
時刻は23時半、高速道路の下の地下道を通る。人通りはいない。

コツッコツッコツ

ブーツのヒールが響き渡る。
出口に差し掛かった所、突然複数の人影が仁美の前に現れた。


398 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 06:30:42 ID:vNUECefG0
「はいちょっとお待ち~♪」
「きゃっ、な、何よ」

驚きと不審の目で相手を見る。皆体格が非常に良く、男かと思ったがよく見ると全員女だ。
人数は4人。
見た目としては明らかに仁美とはかけ離れた服装やファッションをしている。
金髪にピアス、アーミーパンツにコンバットブーツのようなものまで履いている。
顔つきも悪く、女性らしさ、品性などはかけらも持ち合わせていない。

「お姉さん、カツカツうるせー音出して歩いてんなよ。ちょっと面貸せよ!」

胸ぐらを掴まれる仁美。インナーのシャツのボタンがはじけ飛ぶ。





399 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 06:52:20 ID:vNUECefG0
15分後

「ふふっ、素晴らしいショーだわ」
地下道から2百メートルほど離れた黒のワンボックスカーの中で、東かおる(32)
はタバコに火を付けながら、ビデオで中継される非情なリンチの様子を満足そうに
眺めていた。

彼女の正体は仁美のライバル社の営業ウーマンだ。ここの所ことごとく受注を逃し、かおる率いる
チームは会社から叱責される日々が続いた。
部下に調べさせたところ、ライバル社の仁美の存在が浮上した。
仁美の写真を見た瞬間、メラメラと怒りの炎がかおるを包んだ。

(この美貌で、クライアントをたらし込んだに違いないわっ!)

K社への提案が間近に迫っている。ここにきてまた仁美に邪魔されては・・・
かおるは手段を選ばなかった。

悪さばかりしていた高校時代の仲間のツテで、この4人のいかつい女達を
雇った。皆18か19そこらの未成年だが、窃盗、恐喝、麻薬、傷害などで少年院
上がりの札つきの悪だった。

最初はちゃんとやるか不安だったが、彼女達はモニター画面の向こうで
予想以上の働きをしてくれている。






400 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 07:13:54 ID:vNUECefG0
「あらあらw随分いい声で鳴いてるじゃないw高価な機材を用意した甲斐があったわ。」
かおるはモニターを覗き込む。

ちょうど羽交い締めにされた仁美の腹に、女とは思えない重たいパンチが突き刺さる。
ドスウッという鈍い音までスピーカーから聞こえる。

《ぐうううッッ!げほッ ゲホッ、おえええッッ~!ゲフ、お、お願い、もうやめて~》

何発も殴られて腫れ上がった痛々しい頬、お洒落にセットしたウェーブのかかったロングヘア
もくしゃくしゃに乱れている。

ジャケットは脱がされ地面に転がり、汚れている。
ボタンの飛んだシャツはだいぶはだけ、オレンジのカラフルなブラジャーと、色白で柔らかそうな
腹部が半分顔を出している。

美脚を包み込んでいたニーハイブーツが片方脱がされ、ナイロンハイソックスだけになっている
姿も痛々しい。

か弱い女性への暴力はさらに続く。



401 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 07:22:36 ID:IPJ9jnCMO
仁美に胃液吐かせて


402 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 07:27:45 ID:vNUECefG0
乱れた格好で羽交い締めにされたまま、女壊し屋の慣れたパンチが、華奢な仁美の腹を何度も抉る。

《やん、やめ??ッッ!ぐ??ッ!お?ッッ、?えええッ!ゲッハ、ぐは、ごほっ》

何十発殴られただろうか、仁美は自らの腹筋では女の攻撃を防ぐ事は最初からまったくできなかった。
全て内蔵で受けてしまっているため、彼女の内蔵は限界に達している。

そんな様子を楽しむかのごとく画面に食い入るかおる。

「いいざまね!豚みたいな声上げちゃってwもっともっとやっちゃって!」

《了解~》無線が鳴る。

《げええッ、エフッ、エフッ、お、おねがいい、助けて、何でこんな事するのよお・・ぐおおおおッッ!!?》




403 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 07:36:03 ID:IPJ9jnCMO
ドボ~~!!今までで一番強烈な1撃が仁美の腹に命中!!「ゲッボ~~~~!」一気に頬が膨らんだかと思ったら 黄色い胃液を勢いよく噴射した!腹を抱え白目を向き口から胃液が垂れてる


404 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 10:57:02 ID:6uqWqhSH0
すでに羽交い締めの腕の中で、脚に力が入らなくなっている仁美。
仁美の顔の前に、もう一発いくぞという宣言をするかのごとく拳を見せつける女壊し屋。
もういや  といいたげに首を横に振って懇願する仁美。

《しっかりおさえとけよ~!》

《いやああッ、やめてええッ》

《うらあ~!!》

ドベッッッ!!
仁美の柔らかい腹がひしゃげるものすごい大きな音が響く。

《グオオオ~ッウ!!!!!》

とても先ほどまでクールに企画プレゼンしていたとは思えない下品な声を絞り出す仁美。
強力なパンチで胃の中のものが一気に駆け上がり、仁美の頬が見る見る膨らんでゆく。

《ウェッ!ウボウェウェウェウェ~ッッ!!グオウェ~~ッ》

羽交い締めされたまま、嘔吐物をものすごい勢いで吐き出した。ビチャビチャッ!
地面には先ほど上品に食事したフランス料理が未消化のまま撒き散らされている。


405 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 11:08:27 ID:6uqWqhSH0
「きゃははは!汚いわねwこっちまで臭ってきそう。」

しかめっつらのかおるが高画質のモニターから流れる仁美の内蔵破壊シーンを
ワインを飲みながら眺めている。

《グォエエッ・・・ゴフェ・・・ゲロゲロゲオ~ッ》

ぐるりと白目を剥いたうつろな表情で、口からドロドロと吐瀉物を流して喘ぐ仁美。
女壊し屋も満足そうにその様子を見守る。

《オッケー1回離してやんな。》

羽交い締めが解かれると同時に、ガクッと膝から崩れ落ち、腹を抱えたままうつ伏せで
倒れ、動かなくなる仁美。

ピンクのミニスカートがまくれ上がり、パンティが丸見えだが、仁美にそれを気にする様な
肉体的精神的な余裕は完全に失っていた。

《おい、パンツ丸見えだぜお姉さん。》

《・・・・・》

《おいっ、返事しなよ》

ウェーブのかかった髪の毛を鷲掴みにして強引に持ち上げた。
瞬間シャンプーと香水の混じった甘いいい匂いが漂った。

だが、それと裏腹に持ち上げられた彼女の表情は凄惨なものだった。



406 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 11:19:25 ID:6uqWqhSH0
《もうこんなになちゃってますけど、どうしますか?》

仁美の顔をビデオカメラに向ける。

「アハ♪アハハ!情けない顔!気取った面影ゼロよあなたwアハハハハ!
ねえもっとアップにしてよw」

アップで仁美の顔が映される。よほどの苦痛だったのだろう。
黒目と白目を交互に剥き、口を大きくだらしなく開け、吐瀉物を流し続ける。
舌はベロンと突き出している。時折、オエエ、と短く低い呻き声が漏れている。
相沢紗世似と言われた面影は完全に失われた。

《もうこのへんでいいっすかね?》

無線から怪力少女の確認が入る。

「だめよ!こんな程度じゃ済ませないわよ!報酬はあと20万上乗せするから、
二度と営業なんかできないようにぐちぐちゃにしちゃってよ!!」
かおるが絶叫する。

《毎度あり~!》






407 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 11:29:36 ID:6uqWqhSH0
仁美は膝をついた状態で身体を起こされ、頭を後ろから一人が固定した状態で、
顔をボコボコに殴られていた。

失神からは目覚めたものの、途端にこの仕打ちは非情過ぎる。
《ブフェッ!や、やめ、アガッ!ガヒッ!》

かおるは仁美の写真を手に持ちながら、その美貌が変形してゆく様を楽しんでいた。
「そうよ、そうよ、あんたは当分外に出られない化け物顔になって、明日のK社の提案は私が頂くのよw」

10分は顔ボコが続いただろうか。先ほどと同じように仁美の顔がカメラに差し出される。

「上出来ね」

かおるが拍手する。
仁美の高く整った鼻はひしゃげ、鼻の穴が大きくなっているように見える。
歯は前歯が7割ほど折れ、ピアスが引きちぎられた耳からは血が噴き出している。

《カ・・・カヒイ・・》

仁美の口から声にならない声が漏れる。かおるの顔が勝ち誇ったようににんまりしている。





408 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 11:44:57 ID:6uqWqhSH0
固定された仁美の頭が解放されると、ふたたびドサッと仰向けに倒れる。
ピクピクと手足を痙攣させている。

「あたしも今からそっちいくわ」

ワンボックスカーから降りて地下道に向かうかおる。
少女達がぐったり倒れた仁美を取り囲むようにして見下ろしていた。

「どいて頂戴。あらあら、こんなにボコボコになっちゃって。可哀想ねw
 あなた、吐いたの?酷く臭ってたまらないわ。もう別人ね。これであなたも
 男たぶらかせて利益を得る悪行とはしばらくおさらばね。ねえ?聞いてるの?
 あなた無口なのねえ、トークが得意のキャリアウーマンさんがねえ。」

「ボス。あまりしゃべるとあんたの事がばれちまいますよ」

 少女に諭されてしまうほど興奮しきっていたかおる。

「そうだったわ。あなた、耳はまだ聞こえてるのかしらね?
 それにしてもモデルみたいにスレンダーで羨ましいわ。」

仰向けの仁美のミニスカートをめくり、太ももをさする。
「綺麗な脚、でもあなたパンツ見えてるわよ」
そういうと、パンティのゴムに手を伸ばし、膝下までずり下げてしまった。

「あらら、あなた結構毛深いのね。顔の濃い美人さんだから仕方ないか。」









409 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 11:53:39 ID:6uqWqhSH0
「今日は長い事お仕事してたものねえ、パンティの中が蒸れてるみたいよ。」
かおるが仁美の股間に鼻を近づけて臭いをチェックしている。

「あなた、アソコの毛が多過ぎるみたいだから、すこし減らして上げる」
にやっと笑うかおり。仁美の陰部の毛を鷲掴みにしたかと思うと、一気に力任せに
引っこ抜いた。ブチブチッという音がする。

「いぎゃあああッ!」

苦痛のあまり失神状態からまた目が覚め、喉の奥から悲鳴を上げる仁美。

「うるさいわね!」

陰毛を引きちぎって握ったままの拳を仁美の剥き出しになった鳩尾に叩き込む。

「おえええッ!がああッ」

残りの胃液を宙に吹き上げるが、自分の顔に降り注ぐ。





410 :名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 12:12:17 ID:6uqWqhSH0
「汚いわねえ、かかるところじゃないの」

仁美の陰毛を、彼女の開いたままの口にパラパラち落とし込む。
その時、かおるは仁美の異変に気づき、後ずさる。
剥き出しにされた仁美の股間から、ジョロジョロと暖かい黄色の液体が音を立てて
流れ出している。

「あはは!あなた、お漏らししてるわよw何歳だと思ってるの?本当にキャリアウーマンなの
あなたwはははw」

ジョオ~ッと完全に流れきった頃には、仁美の太ももから膝にかけて大きな水たまりができ、
アンモニアの異臭を放っていた。

「ああ、臭くてたまらないわ。顔も胃液と鼻水と涙でぐちゃぐちゃね。もうそろそろ行くけど、
今夜はここで寝てるわけ?ちなみにここはホームレスも多いから気をつけてね。
じゃ、風邪引かずに明日仕事頑張ってね、西田仁美さんw」

「・・・・」

仁美からは応答がない。
失禁と同時に完全に失神したようだ。

仁美が発見されたのは、明け方、新聞配達だった。
仁美はブーツの下に履いていたハイソックス以外、何も身に付けていなかった。
かおり達が去った後、ホームレス達に強姦され、身ぐるみを剥がされて放置されて
しまっていたのだ。

翌日のK社へのプレゼンは、仁美の欠席により、かおるのチームが成功を納めたのだった。







440 :名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 10:19:25 ID:H+Vf5udp0
私は小6の時に、近所の女子大生に部屋に連れ込まれたことがある。
部屋には彼女の友達が5,6人来ており、私は正座させられ囲まれた。
四方八方から彼女たちの足が飛んできて蹴りを入れられた。
私が痛みでうずくまると、今度は笑いながらサッカーボールのように蹴られ、顔はぐりぐりに踏みつけられた。
その後、彼女たちの生足の匂いをかがされ、足の裏を舐めさせられた。
「おらおら、いてえだろ!これが女の足だ、みんなやっちまいな!!!」
「子ども虐めるのってストレス解消になるよね、おら!こうしてやる!」
「麻紀子、得意の踏み付けをおみまいしてやんなよ」
「え~!踏み殺しちゃうかもよ、この子の顔より、私の足のほうが大きいじゃん」
「それじゃあ、みんなで!ほら潰せ!」・・・私「ゆるして下さい」
「女の足の恐ろしさが分かったか、お前はこれから一生、女に踏まれて生きていくんだよ」
「私たちのリンチの味はどうだ、おりゃ!まだ、気絶しねえのか」
「よし、皆で両足でこいつの体にのってやれ、おらぁぁぁぁ!」
                       ・・・これが私のリンチ初体験です。





451 :名無しさん@ピンキー:2010/01/09(土) 15:36:39 ID:1wvtiQfM0
ITベンチャーの「ファイブドア社」パーティー会場にテロリスト達が押し入ったのは19時頃だった。
超高層ビル最上階。パーティー会場入り口の受付には、美人広報の田中紗登子と吉原かなえという2人の社員が
担当していた。エレベーターのドアが開くとともに、迷彩服に身を包んだテロリスト達が降りてくる。
男5人、女1人だ。
吉原かなえ「いらっしゃいませ・・・え? きゃあっ!!」
女テロリスト「騒ぐなよ」
ショットガンで至近距離からかなえの顔を打ち抜いた。一瞬の出来事だった。
かなえの美しい顔はザクロを割ったかのように大きく裂け、脳みそや目玉、髪の毛や
歯等が後ろの壁にべったりと飛び散った。イスに座ったまま、スーツを来たスレンダーな
身体だけがそのまま残された。
男テロリスト達は警備員を射殺し、会場内を制圧した。
女テロリストが、もう一人の受付担当社員の田中紗登子の顔に銃口を向ける。
「やだ!やだ!やめてえ!撃たないでえええ!!」かなえの返り血を大量に浴びた紗登子は
正気の沙汰ではない。歯をガチガチさせて涙と鼻水もおかまいなしに絶叫を上げる。
女テロリストは銃口を下ろす。その瞬間、大きな銃声とともに紗登子が壁際に吹っ飛んだ。
紗登子の腹部を撃ったのだ。大きな穴が空き、大量の血とともに内蔵らしきものが飛び出している。
田中紗登子「えっ?て・・・か・・・・ガハアッ!!ゲフッ・・・いやあ・・・・」
口から血を流し、大きな目を見開いたまま、彼女は動かなくなった。










452 :名無しさん@ピンキー:2010/01/09(土) 16:07:43 ID:1wvtiQfM0
女テロリスト「ちゃんと客を出迎えろよw」
イスに座ったまま果てている二人の女性達を眺めながら会場に入る。
テロリスト達は全員北東アジア出身だった。日本政府の対北東アジア政策や、資本主義に
不満を持つ国内に潜む工作員だったのだ。資本主義の象徴として、近年急成長中のこのベンチャー
企業の入るビルが標的となった。

パーティーの出席者は社員120名(男性45人女性75人)を含む総勢150人。何人かの男性社員や
会場スタッフが抵抗を試みたが、鍛え抜かれた屈強な男達にあっけなく鎮圧されてしまった。

彼らの目的は日本政府の北東アジア政策の変更の要求や、逮捕されている仲間達の即時釈放だった
が、要求して30分過ぎたが何の連絡もないことにいらだちを覚え始めた。

女テロリスト「何人かやっちまおうぜ」近くにいたシステムエンジニアの佐藤香織(25)
の髪を掴んでステージの上に連れてゆく。
男テロリスA「おいおい、あいつのサディストが始まっちまったよw」
男テロリストB「あいつは女には容赦ないからな。特に日本人には。ここの社員の女は運が悪かった
としかいいようがないぜ。」
男テロリストC「しっかりビデオ回してやろうぜ!」




453 :名無しさん@ピンキー:2010/01/09(土) 16:15:03 ID:1wvtiQfM0
佐藤香織「やめて!離してよ。」香織は仕事も出来き、広末涼子似の美人で社内でも評判のシステムエンジニア。
ステージに上がらされるなり、女テロリストのテコンドー技で顔面に回し蹴りを入れられる。
一瞬で彼女の細身の身体は数メートルは吹っ飛び、派手な音をたてて置いてあった大きな花瓶に顔から
突っ込んだ。

「いやああっ、痛いいッ!」顔から血を流しながらのたうちまわるブラウスにスカーツ姿の香織。
がら空きになった脇腹に、女テロリストの鉄板入りブーツのつま先が叩き込まれる。
「!!!ぐっはああああ!」四つん這いになり、口から泡を飛ばしながら苦しむ香織。
「あら、少し外れた。今度は真ん中いくね。」冷静に狙いを定め、今度は鳩尾を蹴り上げた。
「ぐあうっ!!・・・ぐおおおッ」もう一度蹴り上げられる。
「ううううッ!ぐ、ぐ、ぐうぇえええッ!」美人とは思えない呻き声を上げながら、
食べたばかりのサラダやスープを吐き出す。

「ああ、たったこれだけのキックでゲロッちゃうなんてどんだけ弱いんだお前。」
女テロリストが見下ろす。
「ゲフッ・・・ゲホッ・・ううう・・お、お願い・・助けてえ」
懇願する香織の顔に、女テロリストが側にあった花瓶を手に取り、振り上げる。
会場から悲鳴が上がる。
「いやあ・・!やめ」花瓶の割れる音とともに、香織の声は出なくなった。
鼻が顔の奥に埋まってしまったかのように陥没し、歯茎が剥き出しになった血だらけの顔は
もはや別人だった。スレンダーな身体が、ただピクピクと魚のように痙攣しているだけであった。




454 :名無しさん@ピンキー:2010/01/09(土) 16:32:58 ID:1wvtiQfM0
女テロリスト「おやおや、ずいぶん顔の形が変わっちまったなw生きてんの?死んでんの?まどっちでもいいけど。
それにしてもこの会社は随分女が多いな。しかも若い奴ばっか。こんなやつらが大金稼いで毎晩派手に遊んでるなんて
ねえ~、許せない。並んでる料理も美味そうじゃないか。祖国でどれだけの仲間が飢え死にしているか、オマエら分かるのか!!」

30分後

5人の秘書室の美人社員を選んで、先ほどの香織と同様にステージ上で血祭りに上げた。
そして、6人の美人社員達の半殺しにされた身体は、地上200メートルから地上の警察に
空から届けられた。グシャグシャグシャッという音がマスコミの待機しているエリアまで聞こえた。
救助隊が駆け寄ったが、いくつか折れ重なっている身体。
それが人間・・・しかも女性であることは、スーツやブラウスなどの服装で分かった。
だが、みなどれも年齢や身元が分からぬほど顔面が破損、目玉や歯ががそこら中に飛び散っている。
腕がもげている女性もあれば、ストッキングを履いた脚が膝か真逆に折れている女性の身体がごろごろと
ころがっていた。
「惨い事しやがる」かけつけた機動隊員は息を呑んだ。

女テロリスロの行動は次第にエスカレートし、残酷なゲームまで行っていた。







457 :名無しさん@ピンキー:2010/01/09(土) 17:25:08 ID:1wvtiQfM0
「もぐ・・ぐむっ」
「うう・・苦しいです」
「お願い・・お水を下さい・・・」

編集企画部の女性社員3人が、テーブルに並べられたバイキングの料理を口に運んでいた。
喉元には男テロリスト達によってナイフを突きつけられている。
宮本優(22)、坂下由貴(24)、星本加代子(28)。
3人とも読者モデルやキャンペーンガールなどの経験者で、かなりの美貌の持ち主だ。

女テロリスト「おらおら、もっともっとくわねーと罰があたるぞ!オマエら三人は痩せてるから沢山食わせるために
大食い選手権やってやってんだからよ。それにしてもこんな美味いもん大量に残しやがって・・祖国の仲間にも食わせてやりたい。」

宮本優「うっ・・ぐむっ・・」優は食べ物を口にパンパンにつめた状態で涙を流している。
女テロリスト「どうしたよ?食べろって」
宮本優「ふぐ・・も、もふ・はべれまへん(も、もう食べれません!)」
女テロリスト「そうかよ。じゃあいいよ、お前リタイヤして」
そういうと、女テロリストはショットガンを逆さにもって、グリップに渾身の力をこめて
優の胃の部分に叩き込んだ。
宮本優「ンンンッッゴオオオオッ~~~!!!」食べ物が限界までつまった彼女の小さな胃袋一瞬で破裂した。
もの凄い勢いで口の中のもの、食道の中のもの、胃の中のものが順番に飛び出し、目の前の皿の上に
戻されていった。その後「ゲボオッ」と低い呻きとともに血を吐いたかと思うと、彼女は皿の上に戻した
ものに顔からと伏してしまった。半袖のセーターから伸びた可細い腕が、だらんと垂れ下がり、座った
まま動かなくなってしまった。








490 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 04:19:23 ID:bRPL1sbn0
連邦捜査官の滝沢アカネは、州刑務所に潜入した。
表向きは暴行罪で収監された女性受刑者としてである。
先日、既に終身刑が決定している某教団教祖の脱走の噂が連邦捜査局に入った。
教祖は女性だった為、アカネが潜入捜査官として選出されたのだ。

(ふん、私にかかればこれくらいの仕事は簡単ね)

アカネは日本人ながら数々の手柄を立てて、捜査局になくてはならない人材となっていた。
この仕事も教祖に接触している教団関係者を調べれば、すぐに終わる予定だった。
捜査官として油断しているつもりはなかったが、アカネは余裕を持っていた。
しかし、彼女の日本人離れした美貌がそれを阻んだ。

「じゃあ全員、服を脱いで裸になりな」

南部訛りの英語で、黒人看守がそう叫んだ。
女性刑務所といえども、入所の際には裸での身体検査が行われる。
事前の知識としてアカネもその点は心得ていた。
何人かは他人の前で裸体をさらすのに躊躇しているようだったが、
アカネは素早く服を脱いで惜しげもなく裸身を露わにした。


491 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 04:32:11 ID:bRPL1sbn0
ほう、と感嘆のため息が耳に届いてきて、アカネは気分が良くなる。
日本人離れしたモデル並みのプロポーションは、欧米の女性から見ても羨ましいものだった。
捜査官として鍛え上げられて肉体は、無駄な贅肉などなく引き締まっていた。
にも拘らず、豊満なバストは天を突くようにツンと上を向いている。
長い黒髪は流れるように裸身を飾り、美の女神が顕現したように感じられた。

(ふふ、みんな私の体に注目しているわね)

だが、羨望は突如として嫉妬へと変わる。
特に黒人の看守は先ほどまでのやる気のない態度を潜め、アカネへと詰め寄る。
周囲の目も「自分と同じ犯罪者の癖に」といった毒々しいものへと変化していった。
アカネにとって目立つのは作戦のうちであった。
教祖は刑務所でもかなりの権力を作り上げたらしい。
怪しまれず接触するためには、ある程度そちらからのアクションを待つ必要があると考えたのだ。

「壁に手をついて、ケツを向けろ!」

口汚いスラングで看守が怒鳴りつける。
ここで看守をやりこめて、周囲の入所者たちへ自分の実力を見せようと考えているアカネ。
だが、看守のアクションによってその思考は寸断された。

バシ!
(いたいっ!)


492 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 04:55:52 ID:bRPL1sbn0
黒い肌の看守は、持っていた警棒でアカネの尻を打ち据えたのだ。
剥いた卵のようにツルツルとした臀部に、赤い痣がくっきりと刻まれていた。

「痛いわね、受刑者への暴力は禁止されているはずよ!」
「のろのろと動いて仕事の邪魔をしていたからだ、黙って尻を向けろ」

頭に血が上り反射的に叫んだが、看守はニヤニヤ笑いながら警棒を見せびらかす。
アカネは黙って壁に手をついた。
刑務所へは捜査局から何も通達をしていない。
看守にも教団関係者がまぎれている可能性があると考えたからだ。
よって、背後の黒人看守もアカネが連邦捜査官であることは当然知らない。

(だからって、この私のおしりを叩くなんて!)

アカネは数々の格闘術や捕縛術を身につけ、凶悪な犯罪者を相手取っていた。
先ほどの打擲も、たいしたダメージを受けたわけではない。
しかし辺境の刑務所の看取如きが、自分のようなエリート捜査官に暴力で従わせようとするなど
アカネは考えたこともなかったし、そんな行為をされてプライドが傷ついたと感じた。

(あなたみたいなデブ、三秒で打ち倒せるんだからね!)


493 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 04:56:35 ID:bRPL1sbn0
実際、アカネの蹴り一つで黒人の巨体は床へと沈むだろう。
だが、まだそこまで動いては入所すらおぼつかない。
もし理不尽に大勢でかかってきたなら全員を打ち倒し、捜査局に連絡して再度入所手続きをすればいい。
しばらくは様子を見ることにして、壁に手を付いたままじっと待つことにした。

「おら、もっとケツを突き出すんだよ!」
ブンッ!

風きり音から再び警棒を振り回す黒人の動きを察知し、とっさに腰を引いて攻撃をかわす。
打撃を外された看守は、体を一回転させて無様にも転倒した。
周囲にドッと笑い声が満ちる。
当の看守は何が起こったのか分からない様子で、目をパチパチとさせて仰向けに倒れたままだ。

(ふふん、油断していなければ貴方ののろまな棒なんか当たらないわ)

得意げな顔で看守を見下ろすアカネ。
全裸であっても、その尊大な態度から勝者としての風格を周囲に示していた。
周り中から響いてくる歓声から、自分に何が起こったのか悟った看守は、
顔を紅潮させて喚きだした。

「シャラップ!」

今にもアカネを射殺さんばかりに睨みつける黒人看守。
だが、周囲の看守も騒ぎに気付いたようで彼女に話しかけると作業の遅れに気付いたようで
素早く検査を済ませるように指示されていた。
ここまではアカネの思い通りの展開だった。
ここまでは。


494 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 05:05:56 ID:bRPL1sbn0
暴力ではアカネに敵わないと気付いたのか、黒人刑務官は真面目に作業を進めた。
アカネのほうも実力の差を見せ付けたので、以後は指示に従った。
だが、下半身を調べ始めたときに看守の動きが止まった。

(また、何か企んでいるわね)

不穏な雰囲気を感じて、美人捜査官は看守の動きに備えた。
だが次の瞬間、予想外のアクションにアカネの動きが止まる。

にゅぷっ
(はうっ!)

黒人看守が太い指をアカネの楚々とした肛門にねじ込んできたのだ。
さらに人差し指の第二関節まで差し込んでグニグニと動かしてきた。
その度に体を捻って、指から逃れようとしたが無理だった。
それ以上に深く指を突き入れて、全体が肛門に埋まり身動きが取れなくなった。

(くうぅ、いつまでおしりの穴に汚い指を入れてるのよ、早く終わらせなさい!)
ちゅぽんっ
「ひいぃ!」

腸液でぬめぬめとした指を引き抜かれると、情けない悲鳴を上げてしまう。
その声に周りの受刑者が何人かこちらを見てきたので、何もなかったような顔を作る。

(ふん、こんなことしか出来ないわけ、情けないわね)


495 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 05:16:25 ID:bRPL1sbn0
検査が終わったことに内心ほっとしながら、小さく悪態をつく。
だが、看守は美人の菊門に入っていた指を拭きながら、同僚と何か話をしていた。

(どうせ下らない、いちゃもんでもつけるんでしょ)

アカネの予想通り、黒人看守はアカネの腸内に何かが隠してあるようだと言ってきた。
もちろん肛門の奥には排泄物しかなく、口内の通信機にも気付かれていない。

(奥歯の通信機にも気付かないくせに、この無能!)

だが同僚刑務官はその言葉を信じたのか、再度アカネの肛門を調べようとしてきた。
断れば逆に怪しまれると思い、白人の看守の指示に従う。

「自分で尻の穴を広げなさい」
「えっ!?」

白人看守は理知的な目でアカネの裸身を睥睨している。
どうやら差別主義者のこの白人は、黄色人種の肌には触りたくもないらしい。
既に検査を終えた受刑者や看守もこちらを注視している。
どうやらアカネが一番最後のようだ。

(くっ、拡げればいいんでしょ!)
ぐいっ

アカネは自らの美尻に手をかけ、尻タブを左右に引っ張った。
肛門の皺の数までもがはっきりと周囲に主張された。
アカネは今までしたこともないような恥ずかしい行為に赤面して、体を震わせた。
看守は顔がつきそうなくらい近くで菊門を観察してくる。


496 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 05:28:50 ID:bRPL1sbn0
(あっあっ、息がかかる!)

白人女性の吐息が肛門の薄茶の皮膚にかかり、キュッと窄めてしまう。
ひくひくと痙攣する肛門をつぶさに観察する看守。
アカネには永遠とも思える時間が過ぎていく。
すると、彼女の腸内で不穏な動きが起こってきた。

ぎゅるるるるる
(ああ、お、おならが)

長い時間、裸でいたため腹が冷えて腸内の活動が活発になってきていた。
そのため、腸内にたまったガスが今にも広げた肛門から噴出しそうだった。

(だ、ダメ、今出したら聞かれちゃう!)

周囲には既に囚人服を着た囚人達がこちらを笑いを隠しながら見ている。
冷静な目で観察する白人の看守と、ニヤつきながらアカネを見ている黒人の看守。
アカネはモデル体型の裸身に脂汗を浮かべて耐えていた。
ぷるぷる震えると玉のような肌を冷や汗が流れ落ちていく。
決壊はすぐそこまで迫っていた。

(お、オナラが、この私がオナラをするところを聞かれる、ダメェ!)
ぷううううううぅぅぅ!

白人の看守は風を感じた。
その後、音が脳まで届き、自分が下等人種に放屁されたのだと理解した。
周りは喝采のような笑い声で満ちた。
先ほど看守が転んだときの比ではない、黒人看守も手を叩いて笑っていた。
アカネは目に涙を浮かべて紅潮していた。


497 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 05:38:46 ID:bRPL1sbn0
(く、くうぅ、こんな犯罪者どもにオナラを聞かれちゃった……)

周囲の大爆笑に消え入りたくなるほど羞恥が沸いてくる。
刑務所内での地位もパァだ、オナラ女と呼ばれることだろう。
泣き叫びたくなるような恥ずかしさの中でアカネは気付いた。
ただ一人、アカネの肛門を注視している白人看守だけが笑っていなかった。

「……検査を続けます」

厳かな声で白人がそう告げると、奥のほうから部下に器具を持ち出させていた。
アカネは二人目の看守も敵に回してしまったことに、恐怖を感じた。

(ふ、ふん、今更何も恥ずかしいことなんかないわよ!)

そう自分を鼓舞して見せたが、部下が持ってきた器具を見た途端、アカネの顔色が変わる。
浣腸器。
大きい注射器のような形をしたそれを見て、アカネは逃げ出そうとした。
が、見透かされていたようで白人の指示で周囲の看守が取り押さえる。

「腸内洗浄を開始します」
「いやぁ!」

アカネは周りの看守達を蹴倒して逃げようともがいたが、
先ほどのオナラの恥ずかしさからか、足が震えて力が入らずぷるぷると胸を振るわせるだけに終わった。

「や、やめて、放しなさい、私を誰だとはおおお!」

任務も忘れて自分の身分を吐露しようとした矢先に、肛門の冷たい感触で叫び声をあげさせられる。
浣腸器の先端がアカネの菊門に詰まっていた。
残酷な器具を持った白人看守が躊躇なく内容物を注入する。

「ひいいいぃぃぃ!」


498 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 05:58:26 ID:bRPL1sbn0
アカネの腸にぬるま湯のような液体が流れ込んでくる。
餌をねだる金魚のように口をパクパクとさせる彼女を、横で押さえる黒人看守が笑っていた。
ぎゅるるるとすぐにでも異質物を排除しようと腸が蠕動する。
だが出口を浣腸器でふさがれて行き場のない体液は腸内を駆け巡る。

(痛い、痛い、おなか痛い!)

拷問の訓練をされたアカネも、腸を鍛えることは出来なかったのかあまりの痛みにのた打ち回る。
白人看守は受刑者が苦しむのも構わず注入を続け、やがてその作業も終わる。
アカネのうっすらと腹筋が浮かぶスレンダーな腹部は、ぽっこりと丸く膨らんでいた。
先ほどよりも大量の脂汗を浮かべてアカネは身も世もなく唸っていた。

ちゅぽんっ
「うぐう!」

浣腸器の先端が引き抜かれると、すぐに肛門に力を入れた。
そうしないと内容物が今にもあふれ出そうだったのだ。

(トイレ、トイレに行かないと)
「どこに行くつもりだ、そこでしろ」

トイレで腹内の欲望を開放すべくよろよろと立ち上がったアカネに、白人が冷たく言い放つ。
視線の指し示す先には、銀色に輝く盆があった。
白人看守は残酷にも囚人や看守の前で、浣腸液を噴出させることを命令してきた。

「いやあああぁぁぁ!」


499 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 06:04:50 ID:bRPL1sbn0
アカネは絶望に泣き叫んだ。
捜査などどうでも良くなり、今すぐトイレに行けるなら死んでもいいとまで考えた
腹部の痛みのほかは何も考えられず、全裸で跪いて身を捩るしかなかった。
先ほどまでモデル並みの裸体を見せつけ、颯爽と振舞っていた美人捜査官は
今では鼻水をたらして汗まみれで涙を流し、滑稽に痙攣していた。

(ウンコ、ウンコ、ウンコしたい!)
「お願いです、トイレに、トイレに行かせてください!」

腸の痛みから大便のことしか考えられなくなる美人捜査官。
恥も外聞も投げ捨て、さっきまで軽蔑していた辺境の刑務官に泣きすがる。
全裸で看守の足にすがりつくその姿はあまりにも惨めで、周囲の笑いを誘う。

「靴を舐めたらトイレに連れてってやるよ、ジャパニーズ」
「は、はいい、舐めます!」

普段のプライドの高いアカネなら死んでもしないような屈辱的な行為。
あっさりと黒人看守の出した汚い靴の爪先に飛びついて、ぺろぺろと舐め回す。

(これでトイレに行ける、トイレでウンコできる!)
「そこでしろと言ったはずです」

必死で靴を舐めるアカネの腹に、白人看守が蹴りをお見舞いした。
普段のアカネであれば颯爽とよけて反撃を繰り出したことだろう。
しかし、黒人の足にすがりつく捜査官には不可能だった。
先程の放屁よりもあっさりと、アカネの肛門は決壊した。


500 :名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 06:14:31 ID:bRPL1sbn0
ぶばばばばばばばば!
「あぎゃあああ~!」

噴射。
その一言だった。
肛門から飛び出した汚物を撒き散らせ、美人捜査官は叫んだ。
あまりの開放感に頭がおかしくなりそうだった。
周囲の受刑者達は悲鳴を上げて、捜査官の糞射から逃れようとする。

「きったねぇ!」
「無様ね」
「はわわわ、ウンっこ、ウンコぎもぢいいぃぃ!」

黒人と白人の看守コンビも大口を開け、薄ら笑みを浮かべて美人を睥睨する。
肛門から勢いを衰えずに汚物を噴射するアカネは、全身を自らの糞で汚された。
艶やかな黒髪も、鼻水まみれの美顔も、引き締まった尻も、豊満なバストも。
全てが自らの大便で覆われ、美人捜査官は見る影もなかった。

全ての噴出が終わると、そこにはジョロジョロと尿をたらして
幸せそうに糞尿にまみれて失禁しているアカネの姿があった。
彼女は入所一日目から下痢便女として回りから馬鹿にされることが決定した。
果たして彼女は教祖の脱走をとめることが出来るのだろうか。
連邦捜査官の滝沢アカネは、州刑務所に潜入した。






555 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 06:19:28 ID:g8dtXNOY0
「……異常なし、報告を終わります」

ベッドの中で定時連絡を終えると、連邦捜査官の滝沢アカネはため息をついた。
報告で嘘をつきたくはなかったが、刑務所内は異常だらけだ。
特に自分への扱いの酷さを考えると、頭が痛くなる。

(エリートの私が、犯罪者どもに馬鹿にされるなんて)

入所二日目にしてアカネの心は折れそうだった。
初日に晒してしまった痴態が、次の日には看守や囚人全てに知れ渡っていた。
それから囚人達の陰湿ないじめが始まった。
美人で黄色人種のアカネは、憂さ晴らしの格好の的であった。

「うっとうしいから消えろ」
「美人だからっていい気になるなよ」
「オマエ、自分が何様だと思ってるの?」
「ウンコ漏らした癖によく生きてられるな」
「死ねジャップ」

陰口を叩かれるだけなら無視していたが、暴力を振るわれたときはさすがに抵抗した。
だが、アカネが得意の格闘で反撃しようとすると、すぐに看守を呼ばれる。

「何してんだお前ら」


556 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 06:30:29 ID:g8dtXNOY0
入所時にアカネに目をつけ、刑務所内で最下層になる原因を作った黒人看守が飛んできた。
靴を舐めさせられたときの屈辱を思い出すと、はらわたが煮えくり返る思いだ。

「この人たちが暴力を振るってきたんです」
「お前がくっさい屁でもしたからじゃないか?」

ドッと周囲に笑い声が起きた。
思い出したくもない記憶を揶揄され、アカネの頬はかっと熱くなった。
そして、憎憎しく黒人看守の顔を睨みつける。
歴戦の捜査官であるアカネの視線には迫力があった。
だが、次の看守の一言でその立場は逆転した。

「何だその目は? また浣腸されたいのか」
「ひっ!?」

背筋が凍るような恐怖が瞬時に駆け上がり、アカネは無様にも悲鳴をあげて蹲ってしまう。
その姿に気圧されていた囚人達に再び嘲笑が満ちる。
浣腸と聞いただけで、動けなくなるほどアカネの心は折られていた。
もし、またあんなことをされたら、と思うと逆らうことなど出来なかった。
完全にアカネの心にトラウマとなって刻み付けられていた。
それからは抵抗も出来ず殴られるままだった。


557 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 06:42:09 ID:g8dtXNOY0
「オラッ」
バキッ
「シット!」
ドカッ
「ぐうぅ!」

サンドバッグのように棒立ちで立たされ殴られるアカネ。
防御姿勢をとろうとすると、注意をされ看守を呼ぶと脅された。
細身の体で、犯罪者達の殴打の衝撃を逃がすことも出来ず、確実に体力を削られる。

「しゃおらっ!」
ぼぐっ!
「うげえぇ!」

女子プロボクサー上がりという囚人の拳が腹に叩き込まれる。
胃を突き刺すよう痛みのボディブローに、胃液とヨダレを飛び出させてしまう。
内臓がかき回されるような気持ち悪さに、膝を着きそうになる。
だが、アカネにはそんな行動すらも許されなかった。

「おら、ちゃんと立てよ、看守に浣腸してもらうぞ」
「ひぃい、た、立ちますから止めてください」

頭痛も腹痛も気力で抑え、ぴしっと気をつけの姿勢を自らとる。
犯罪者どもに言いように命令され、言うことを聞くしかない自分が情けなかった。
エリート捜査員として輝くような人生を歩んできたアカネ。
それが今では最低の犯罪者達に奴隷のように扱われていた。
思わず眦に悔し涙を浮かべて、どうしてこうなってしまったのかと後悔する。


558 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 06:57:05 ID:g8dtXNOY0
「何泣いてんだよカス」
バギッ!
「おぐぅ!」

今度はアカネの美貌に元ボクサーの鉄拳が飛んできた。
首が取れるかと思うほどの衝撃に、頭が一瞬真っ白になる。
口内に鉄さびの味が広がり、唇を切ったことを理解する。
この程度の格闘をかじった程度の犯罪者に手傷を負わされるなど、以前の彼女には考えられなかった。

「こいつ、腕っ節が強いとか言っていい気になってたぜ」
「へぇ、じゃあどこまで耐えられるか楽しみだね」
(くっ、馬鹿にして、今に見ていなさいよ)

アカネと同室の少女が、ボクサーに耳打ちする。
初日に「私に関わるな」と脅しつけたのを根に持っていたらしい。
だが単純そうなボクサーはさらにやる気になって殴打を続ける気だ。
アカネは内心で自分を殴ってきた人間の顔を覚え、復讐の方法を考えていた。
教団の教祖の脱走を阻止するのがアカネの任務だが、その共犯者ということにしてしまおう。
そんな情けないいじめられっこのような思考しか出来ない自分に気付いて、暗澹たる気分になる。

「おららぁ!」
「ひぃ!、ひいいぃ!」

ボクサーはワンツーと連打でアカネをひるませると、ラッシュを仕掛けてきた。
顔が歪むかと思うほどの衝撃で脳が揺さぶられ、胃がひっくり返るほど腹をへこまされる。
身動き一つとることができず、足腰から力が抜け脱力して倒れ臥す。
今度は誰も注意をしようとはしなかった、全員でアカネを踏みつけてきたからだ。

「お、おう、おごおおおおおお!」

胃の内容物を吐き出し、美人捜査官は美貌を歪めてもだえ苦しむ。
囚人達のリンチはアカネが気絶するまで続いた。


559 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:08:35 ID:g8dtXNOY0
そして夜になって意識を取り戻し定時連絡を終え、ようやく一息ついた。
就寝の時間だけが、アカネにとって安息の時間だった。

(明日からは本格的に捜査も始めなきゃ……お腹すいたなぁ)

二日目にして捜査官としての活動など出来るはずもなく、任務は何も果たされていない。
それ以前に夕食も足を引っ掛けられて落としてしまい、栄養も足りなかった。
薄く切られたミートローフを思い出し、腹を鳴らしてしまう。
毀れたソースをお尻に塗られて「また糞を漏らした!」と笑われてことを思い出す。
その後、白人看守に床に落ちた夕食を犬のように舐めさせられた。
そんな屈辱的な行いまでしたのに、肝心のミートローフは口にさせてもらえなかった。
プライドの高いアカネは毛布の中で涙を流して、嗚咽をこぼした。

「うっ、ううっ、ぐすっ」
(なんで、なんで私がこんな目に……)

任務のためだと自分を納得させようとしても、涙はあとからあとから溢れてきた。
明日からは浣腸すると言われても堪えてみせる。
だから今だけ、今日泣いてしまえば全部忘れる。
初日の夜と同じように、アカネはそう決意した。到底守れない決意を。
だが、アカネは泣くべきではなかった。
悪夢の時間が始まる。


560 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:18:47 ID:g8dtXNOY0
泣きつかれて夢うつつになっていたアカネは、誰かが自分の上に覆いかぶさっていることに気付いた。

(誰!?)

同室の少女だろうか、昼間あれだけ蹴っておいて睡眠の時間まで自分から奪うつもりか。
アカネはカッと頭に血を巡らせ覚醒する。
手足の二三本を折ってでも、少女に自分の立場を分からせてやるつもりだった。
だが、ベッドの中から起き上がることは出来なかった。

(し、縛られてる!?)

どうやら毛布の上からベッドごと、麻縄か何かで縛られてしまったようだ。
背中に冷や汗が浮いてきた。
また、また昼間のように抵抗することなく殴られるのか。
きつく縛られているようで、状態すらも満足に動かせない。
唯一自由な口で、真夜中の闖入者に対話を試みる。

「誰よ、何でこんなことするのよ!」
「テメェが毎晩めそめそウルセェからだよ」

声を聞いて息が止まりそうになった。
昼間、アカネが半殺しになるほど殴りつけてきた元女子プロボクサーの声だった。
なぜ別室の彼女が自分達の牢にいるのか。
さらにアカネは恐るべき事実に気付いてしまった。
部屋の中には元ボクサー以外にも複数の女性の気配や息遣いが聞こえてきた。
アカネの牢の鍵は何者かに開けられ、そこから他の部屋の囚人が侵入してきたのだ。


561 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:30:19 ID:g8dtXNOY0
「ひっ、な、なんで私の部屋に」
「テメェの泣き声や腹の虫がうるせぇからよ、注意しに来たんだよ」

アカネのおびえた声にボクサーが答える。
どうやら初日の自分の泣き声や、今日の空腹の音が聞かれていたらしい。
自分の弱い部分を聞かれていたことに、恥ずかしさで顔を赤らめるアカネ。
完璧主義者のアカネは、今まで他人に弱みなど見せたことはなかった。
だが、どうせ自分が脱糞してしまった事実は囚人全員に知られているのだ。
今更何を恥ずかしがる必要があると自らを鼓舞し、アカネは会話を続ける。

「ご、ごめんなさい、気をつけるわ、だから縄を解いて」
「口の利き方がなってねぇな、新入りのくせによ」
「その前に糞たれ女だろ」
「豚女が、身の程をわからせてやる」

周囲の服役囚たちがわらわらと寄ってくる気配を感じる。
ああ、どうせ殴られる運命にあるとアカネは観念した。
だが、心までは折れたりはしないと先程誓った決意を思い出す。
どんなに殴られ蹴られようとも諦めたりしない。
凄腕捜査官としてアカネはそう覚悟を決めた。


562 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:39:14 ID:g8dtXNOY0
そして毛布の上からの殴打なら、それほどダメージはないという打算もあった。

ゴッ!
「いぎゃ!」

そんな覚悟も打算も一瞬で吹き飛んだ。
何か硬い石のようなもので、腹部に激突させられてようだ。
鳩尾を的確に狙われ、息がつまり呼吸できなくなる。
昼間の暴行の恐怖がよみがえってきて、思考が千々に乱れる。

(なんで、武器? そんな、毛布が、痛い、死ぬ!)
ぼぐっぼぐっぼぐっぼぐっぼすっごがっがぎっ
「ひぃいい! いたい、痛いよう!」

そして周囲の囚人も風切り音をさせて、謎の武器でアカネに殴打を加えてくる。
どれも昼間の拳打など目にならないくらいの痛みだ。
骨や関節に硬い拷問具が当たると、痛みで声も出せない。
薄い毛布の皮膜も、筋肉の薄壁も、何の役にも立たなかった。
子供のように泣き喚いても、誰一人行為を中断しようとはしなかった。

「ははは、石鹸くらいでそんなに泣いてんじゃねぇよ!」
(石鹸!)


563 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:47:36 ID:g8dtXNOY0
ようやく拷問具の正体が分かった。
映画で見たり知識で知ってはいたが、すぐには思い至らなかった。
石鹸。
シャワーの時間で使う石鹸をタオルで巻きつけ、振りかぶって殴る。
拷問やリンチとしては程度が低いと思っていたが、これほど威力があるとは思わなかった。
効果的にダメージを与えるために考案されたと、身をもって実感していた。

「やめて、痛い、本当に痛いんです、許してください!」

おもわず敬語で許しを請うアカネ。
捜査官としての決意など既に頭の片隅にもなかった。
この痛みから逃れるためなら、なんでもする。
初日に黒人看守の靴を舐めたような状態にまで追い詰められていた。
身を縮こまらせていると、殴打の嵐が止んでいた。

(ゆ、許してくれた!?)

自分の必死の懇願が功を奏した、と嬉しさに包まれる。
お礼を言おうと、負け犬根性の染み付いた思考で口を開こうとすると、

ごぎゃ!
「うべぇあ!」

鼻の頭に石鹸の弾丸が放たれた。
鼻骨が飛んでいってしまったかと思うほどの衝撃に、絶望が再び訪れる。
なぜ、許してくれたのではないのか。
鼻の奥からどろりとしたものが流れ込み、鼻血が溢れてきた。
だが、アカネにはそんな些細なことはどうでもよかった。


564 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 08:00:36 ID:g8dtXNOY0
「やめて、私が悪かった、もう殴らないで!」
「うっせ!」

遠心力に任せて、武器を振りかぶる囚人達。
何が面白いのか笑いながらベッドの上のアカネに殴打を加える。
どの部分に攻撃が加えられるか視認できず、恐怖に震えるしかない。
必死で命乞いをしても弾丸の嵐は自分の体を離れない。

「お願いします、なんでもします、死にたくないんです!」

ぴたりと砲弾の乱射が停止する。
今度こそ許してもらえた、と思ったらまた笑いながら砲撃が開始される。
アカネはもう気がつくことすら出来なかったが、これが拷問の真の姿だった。
いつ殴打が再開されるか分からない。
その緊張で力を抜くことも出来ずに、いつまでも恐怖におびえる。
時には長く、時には短く。
囚人達の残酷な思考で休憩時間は調節され、アカネが安心したときリンチが始まる。
アカネは幼女のように許しを請い、泣くことしかできなかった。

「ふぅ、もう朝か、教祖様の言うとおり効果覿面だったな」
(あ……さ……)
「と油断させてもう一撃!」
ばぎ!
「おごお!」

日の光が昇る時刻まで拷問は続いた。
朝の点呼の時間、いつまでも起きてこないアカネの牢に黒人看守が入る。
ベッドの中で惰眠を貪る服役囚に罰を与えようと、警棒を振りかぶり毛布を剥ぐ。
ベッドの上にはあまりの恐怖に小便をたらし、体中を痣だらけにしたアカネがいた。
看守が話しかけようとすると必死で媚を売り、尿で濡れた股間を隠さず命乞いをする。
敏腕捜査官、滝沢アカネの三日目の捜査が開始された。






591 :名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 22:56:48 ID:THSfN7q30
力のある女が、力のない女(身体は華奢だが気が強い)を殴り倒してひいひい言わせる
姿はどんなAVよりも素晴らしい光景だね。殴られすぎて声も出なくなり、ぐったり大女の
前で倒れて動かなくなっているのもいい。可愛い声で「殴れるもんなら殴ってみなさいよ!」
とかタンカ切ったくせに、あまりの残虐な暴力の洗礼によって「やめてくだ・・うおええ!」
と無様に破壊されてく展開がいいんだよな。お洒落な服や髪の毛が乱れ、涙と鼻水でメイクが
落ち、ボロボロになってく姿。美しい声がすっかり枯れた金切り声や低音の呻き声になって
まるで別人。腹を殴られた影響で嘔吐や脱糞に陥り、フェロモン全快だった身体から異臭が
漂うギャップ。相手は中国とか朝鮮のデブスだったらなおさら興奮するんだけどな。
「日本の女は美人で澄ましてるからぶっつぶしてやろうぜ!」みたいな嫉妬とかね。






595 :名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 11:35:01 ID:Zqus/2j4O
瀬垣結子。
大学2年生の彼女は、その明るい性格とさっぱりした気性で人気の的だった。
すらりとした長身に、小麦色に焼けた肌と金茶の髪が良く似合っている。
派手に人目を引く美人だった。
アイラインにマスカラを重ねても決してケバくならないのは、
目元や口元にどこか甘えた感じがあるからだ。
男好きのする顔である。

結子は、一緒に暮らしている妹の誕生日プレゼントを買うために、大学近くの雑貨屋に行っていた。
ショーウインドーの中にフック型の可愛いピアスを見つけたのだけれど、それは展示品で、売り物ではなかった。
持ち前の気の強さで交渉し、手に入れたのはいいのだけれど…
予想外に手間取ってしまい、店を出て電車に乗り、自宅近くの駅で降りたときには、もう深夜0時を回ってしまっていたのだ。



596 :名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 11:35:48 ID:Zqus/2j4O
家では妹が待っている。
帰ったらお祝いをすると言って家を出て来たから、まだ起きて待っているはずだ。
「早く帰らないとね」
駅から家までの道は二つある。
普段、妹と一緒のときは多少遠くても大通りを通って帰るのだが、今日は近道をすることにした。
治安が良くないからと言って避けていた道だが、結子自身にはそこを通るのに抵抗はなかったし、実際幾度も通っている。
姉が平気で通っていれば、妹も真似をするだろう。そう思って妹の身を案じていただけなのだ。
結子は、近道である寂れた商店街を進んでいった。
空疎な空間に、7センチのヒールが生み出す音が鋭く響く。
道端で寝ていたホームレスや、吹きさらしのベンチで客待ちをしている女たちが見つめる中、
結子は毛皮のコートに包まれて堂々と背筋を伸ばして歩いていった。
「ねえ」
商店街のさらに外れ、足を止めれば吐瀉物の匂いすら漂ってきそうな一角で、結子を呼び止めた人影がある。
醜く太った女だ。
「アンタ、いい服着てんね。どこで買ったの」
結子はちらりと女を見て、吐き捨てるように有名ブランドの名前を言った。
「ふうん、やっぱり金持ちなんだ」
女は、足を止めずに歩いていく結子を上から下まで眺め回した。
そして、冷酷な笑みを浮かべると、家へ帰る結子の後をつけ始めた。



597 :名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 11:36:50 ID:Zqus/2j4O
「あ、千穂?遅くなってごめん。もうすぐ着くから玄関の鍵開けといてくれる?」
結子からの電話を受けて、瀬垣千穂は立ち上がった。
もう少し遅ければ自分から電話していたところだ。
千穂は、今年で18になる。美人姉妹として有名で、整った容姿をしているのだが、結子とはあまり似ていない。
肩の辺りで揃えられた黒髪といい、その白い肌といい、むしろ結子とは真逆の印象を受ける美少女だ。
「お姉ちゃんったら…もうちょっと早く連絡くれればいいのに」
ぼやきながら立ち上がったとき、玄関のチャイムが鳴った。
「お姉ちゃん?」
無防備にドアを開けて…だが、そこにいたのは結子ではなかった。
「ひっ」
わずかに開いた隙間から太い腕を突っ込んで、部屋に上がりこんできた見知らぬ女達に、大人しい千穂はただ怯えるばかりだ。
「●◇◎▼○□◇」
「◇▼●▼☆※◆□」
女たちの言葉は明らかに日本語ではない。
不意に、立ちすくむ千穂に大柄な女が近寄ってきたかと思うと、いきなり頬を張られた。
バシン!
鈍い音が鳴る。鋭い痛みと、一拍遅れて熱さが千穂を襲う。
ショックで声も上げられない千穂の髪をわしづかみにして、大柄な女は他の女たちに話しかけた。
「◎●☆◇※」
「※○□●○◆◎」
いくつかのやり取りのあと、女は千穂の方に向き直ると、情け容赦のない鉄拳を薄い腹に叩き込んだ。
「ぐぼぇっ」
つまみ食いしたバースデーケーキが胃液に混じって床に落ちる。
汚物からは鼻をさす悪臭が立ち上ったが、千穂の鼻腔に届く前に彼女は失神していた。





599 :名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 12:27:40 ID:Zqus/2j4O
家路を急いでいたはずの結子が目覚めたのは、薄暗いコンクリートの部屋の中だった。
…つっ…
体を起こすと、後頭部に激痛が走った。
「起きたの」
声の主は、路地で声をかけられた醜い女。結子は、きっと女を睨みつけた。
「何すんのよ!」
掴みかかってやろうとしたのだが、急に動くとまた頭に激痛が走った。
「くっ…」
思わず頭を押さえると、醜い女がいかにも小ばかにしたように首を振るのが見えた。
よく見ると、女が羽織っているコートは結子が着ていたものである。
「コート返しなよ!!」
叫ぶと、女はおもむろに立ち上った。
「◇※☆◆●◎□」
背後の暗闇に向かって何かを言う。
すると、まるで闇から湧き出るように醜い女たちが現れた。中には…結子は知らないことだが、千穂を失神させた大柄な女もいる。
「○※◎◆」
合図で、女たちが結子の体を仰向けに押さえつけた。
「離せよ!」
暴れるも、ただでさえ本調子でない結子は全く女たちを跳ね退けられない。
そこに、女がコートを羽織ったまましゃがみ込んだ。
「…ぎゃあっ」
たっぷりと贅肉のついた女に靴のまま両腕のつけねに乗られ、胸に無造作に腰を下ろされて、結子は悲鳴をあげた。
コンクリートの床に肩甲骨が擦れてみるみる皮が剥けていくのが分かる。
豊かな乳房は女の尻に押し潰され、結子を見下ろす女の口からは、つんとくる口臭が吹き付けてくる。
その体勢のまま女は口を開いた。
「アンタ、たまにあの道通るだろ? ずっと目付けてたんだ。いかにも金持ってますって顔してたろ?ちょっと顔がいいからってウチらを見下したような態度とられちゃムカつくんだよね」
「悪いけど、家も調べさせてもらったよ。いいマンション住んでるじゃないの。神様に愛された人間ってのはどこにでもいるんだねぇ」






607 :名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 17:58:47 ID:P19J0I98O
「臭せぇんだよ!!喋るなよ!」
結子の怒鳴り声を聞いて、女はいきなり結子のみぞおちに拳を叩き込んだ。
「ぐふっ…かっ…げほっ…」
一瞬息を詰まらせ、咳き込むが、活動的な結子の腹筋は千穂よりも鍛えられているようだ。
「生っ!…意気なっ!…奴っ!…だねっ!…!!!」
だが、連続して振り下ろされる凶暴な女の拳の前に、元よりスレンダーな結子の腹が耐えつづけられるはずはなかった。
ドスッ…ガッ…ドスッ…ボコッ…
柔い肉に拳を埋める鈍い音が、コンクリートの床に響く。
ぐっ…ぐぶっ…げぇっ…ぉぶぅっ…
始めの数撃こそは腹に力を入れて凌いだものの、執拗に繰り返される打撃に、ついに結子の口から汚物が噴き上げた。
ぶ、ぶうええぇっ、ぶしゅ、ぐ…げほ、ごほ、げほぉっ…
「きったねぇっ!!」
結子の上に跨がっていた女が悲鳴をあげて跳びすさる。
仰向けのままで噴水のようにゲロを噴いた結子の顔は、自身の汚物と涙、
そして鼻に逆流したゲロを鼻息で押し戻した拍子に飛び出した鼻水で、自慢のメイクも台なしになってしまっている。
「だっせえ顔。…◇◎◆※」
女が指示を出すと、結子の手足を押さえつけていた女たちがニヤニヤしながら離れた。
はあっ…はあっ…
息を荒げながら体を起こす結子だが、まだ闘志は失っていない。汚れた顔を両手で拭うと、女を再び睨んだ。
「根性あるんだねぇ。拭いても無駄なのに…どうせまた汚れんだからさぁ。」
手負いの結子を前にして、女の口調は余裕たっぷりだ。
「ふん…○☆◆※◎」
女の指示に応えて、先程千穂を痛めつけていた大柄な女が闇に消える。
それを見送ると、女は結子の前にしゃがみ込んだ。
「一応自己紹介をしとこうか。私は郭っていうんだ。さっきのデカいのは宋。中国から来たんだよ。」








618 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 16:44:41 ID:C+ZrwLdYO
「アンタみたいに恵まれた奴らには、貧しいってのがどういうことかすら分からないだろうけどね、あっちにはすごく貧乏な人間がたくさんいるんだ。 金があるのは一部の人間だけさ。
だけどね、そいつらだってアンタみたいに、毛皮のコートにブランドの服でスラム街歩くような真似はしやしないよ。
何故かって…向こうじゃみんな知ってんのさ。そんなことしたらどんな目に遭うかってね。」
郭の話が終わっても、結子は睨みつけるのをやめなかった。
-ただの逆恨みじゃないの!!
叫びたい気持ちが込み上げる。
事実、郭たちによって監禁されているのが自分ではなく、家で千穂とテレビを見ているときにこんなニュースが流れたのだったら、
『うっわ、完全逆恨み!拉致られた人最悪!!』と大声を上げていたに違いなく、
『もう、お姉ちゃん…』などとなだめるであろう、千穂の顔までが浮かんでくる。
-そういえば、千穂は大丈夫だろうか…
結子は、千穂が郭たちに捕われたことを知らない。郭たちに自宅が知られていたことも分かっていない。
-心配してなければいいけど。
そう思ったとき、不意に闇の奥が騒がしくなった。
「きゃあっ」
もみ合う気配の直後に聞こえた悲鳴。
結子は、その声に嫌というほど覚えがあった。
「千穂!?」
-嘘。まさか…
恐ろしい想像に、自分の顔が歪むのが分かる。
郭が大声で笑い始めた。
「…いい顔できるじゃないか!! …そう、アンタの妹だよ… 身の程知らずのバカがね、向こうの国でどんな目に遭うか教えてやるよ。
…家族共々リンチに遭うのさ!!回復不能になるまでね… ま、妹は高く売れるだろうから死なない程度に手加減してやるけど。
アンタは叩き売るしかないからね。日本人の女は大人しいのが受けるのさ。それよりは、気晴らしにぶん殴って内臓バラ売りした方が…」



619 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 16:45:03 ID:C+ZrwLdYO
喋り続ける郭だが、結子の注意は郭の背後、闇の中に向けられていた。
もみ合う気配はまだ続いている。
-千穂!!!
結子の瞳の先に、懐かしい影が現れた。
千穂だ。背後から宋の巨大な手で口を塞がれ、もがいている。
「離せよ!!」
千穂を捕らえている宋に向かって突進しようと体を起こすが、
逆に、突き飛ばされた千穂を受け止めるような形になってしまう。
「お姉ちゃん…」
顔の周りにこびりついた汚物の匂いに気付いたのだろうか、千穂は今にも泣きだしそうな顔をしている。
千穂の手は荒縄できつく縛られていて、その固い結び目は、爪を長く伸ばしてアートを施した結子の指には荷が重いのだが、それでも、懸命に結び目を解いていく。
パキッ
乾いた音をたてて、左手の人差し指の爪が折れた。
同時に、千穂の戒めも外れた。紫色のあざが残る手首を、指の腹でマッサージしていく。
…初めて泣きそうになった。
「お姉ちゃん……きゃぁあっ!!」
「千穂!離せ!離せよ!!」
姉を見つめていた千穂の頬を、宋の平手が襲ったのだ。
千穂は座りこんだ体勢から勢いよく横に倒れ、コンクリートの床に頭を打ちつけた。
いきり立って立ち上がった結子は、郭の号令のもと統率された女たちに取り押さえられている。
「さて。どうしようか…」
闇の中、舌なめずりをするように結子を見る郭。その背後には大柄な宋が控えている。周りを取り巻くのは細い目をした大陸の女たち。
そして、郭の背後からは、何かゴロゴロという不気味な音が近づいてきている。




627 :名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 08:23:49 ID:z3UBYeVxO
-何だろう。
一瞬、結子は自分の状況も忘れ、ゴロゴロという音に気を取られた。
「オモチャが来たね」
郭が不気味に笑う。
台車に乗せられた、古びて汚れた木のタライ…
それはそんな風に見えた。
「この中にはね…今までにもお前みたいな生意気な奴がいたんだ。そいつらをいじめてやるときに使った道具が入ってるんだよ。」
郭はタライに手を入れ、中からペンチのようなものを取り出した。
「これは…そうだ、ナツキってやつに使ったんだよ。両手両足の爪を剥いでねぇ…ほら、足の親指の爪ってデカいだろ?あれがなかなか剥がれなくてさ。何度もやり直したんだけど、その度にぎゃあぎゃあ鳴いて…
あんまりうるさいから口にガラスの灰皿叩き込んでやったんだけどね、勢い余って歯が全部折れちまって、中もガラスでぐしゃぐしゃでさ、叩き売るつもりだったからやり過ぎたかと思ったんだけど…
ま、あれはあれで良かったみたいだね。なんせ歯がないから、口に突っ込むと最高に気持ち良いんだってよ。」
郭の話は異常過ぎて、結子は一瞬信じられなかった。だが、今までの郭たちの行動を見るとありえない話ではない気がしてくる。
「よし。◇※●◎☆」
号令のもと、女たちが結子の体勢を変える。最初のように仰向けに押さえつけられた結子は、郭の手にペンチが握られたままなのを見て息を呑んだ。
「ねぇ、ちょっとやめてよ…嘘でしょう?」
弱々しい問い掛けを無視して、女たちは結子の右手を彼女自身の胸の上に固定した。頭の下にも板が引かれ、少し目線を下げれば宋の巨大な腕に押さえつけられた自身の手が見える位置だ。
郭がペンチを持ってしゃがみ込んだ。小指の爪の先端が挟まれる。
郭は、ゆっくりとペンチを持ち上げ、反り返らせていった。
結子は自身の小指が反り返っていくのを強張った表情で見詰めている。口は半開きになり、眉は寄ってものを言う余裕もないようだ。
45゚ほど反ったとき、指に限界が訪れた。
「痛い痛い痛い痛い!!」
指はもう反り返らず、代わりに爪と肉の間に血がにじみ始めた。郭はペンチを左右に揺さぶって乱暴に爪を引きはがそうとする。



628 :名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 08:24:58 ID:z3UBYeVxO
「ぎゃあっ!!!」
郭がしっかりとペンチを持ち直したところで、宋が結子の小指を力いっぱい押し下げた。もはや爪は九分がた剥がれ、根本に垂直に直立している。郭が残りを無造作にちぎり取ると、結子の頬に血が飛び散った。
「ぎゃああぁぁっ!!!」
一つ、また一つと爪を剥ぐたびに結子の悲鳴が響く。
足の小指は小さく、ペンチで挟む余地すらなかったからナイフでこじり取られた。郭が煙草を吸って休憩する間は女たちが爪を剥いでいった。煙草の吸い殻はゼリー状に血の固まった指先の穴に押し付けて消し、またその度に結子は悲鳴をあげた。
「あんまりうるさいと口に灰皿ぶち込んじまうよ」
郭がそう言ってから…ちなみにそれはもちろん脅しではなかったのだが…少し静かになったものの、「ぐう」だの「ぎぃ」だの言う声は喉から漏れた。
全ての爪を剥がし終え、女たちが離れておしゃべりを始める頃には、結子はショックと衰弱で一気に十も老けたかに見えた。
「よっこいしょ」
休憩を終えた郭が立ち上がった。
「えぇっと…次は…」
タライを覗きこんで道具を漁る郭に、結子がにじり寄って呟いた。
「もう、やめて…お願い…」
ん。という風に振り向いた郭は手に持っていたバットで思い切り結子を殴りつけた。
バキッ!
左の手首がたちまち青く腫れ上がる。
「んぐあぁ!!」
手首を押さえて転げ回る結子の髪を掴んで引き寄せ、郭はゆっくりと言った。
「いいかい?ウチらにものを言うときにはね、しっかり敬語を使うんだ。やめて、じゃなくてやめてください、お願い、じゃなくてお願いします。分かったかい?」
「は、は、はい、分かりました…分かりました、すみませんでした…」
「分かりゃいいんだ…ウチらも同じ人間だからね。お前、喉渇いてるんじゃないの?水飲むかい?」
「は、はい!!頂きます!」
ストックホルム症候群というのだろうか。
「水飲むかい?」と言ったときに、郭は一瞬笑顔を見せた。監禁されている結子は、郭のご機嫌を取らなければ殺されると思い込み、そして一瞬の郭の笑顔に安心してしまった。






642 :名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 05:31:18 ID:V0tIgjTF0
「ぐうぇ!げうおっ・・・うおええ!」景子は自分のものとは思えない
声を上げていることを意識することもなく、女の膝蹴りをみぞおちに受けていた。
(こ、殺される・・・)
景子の薄い腹筋にはもうまったく力が入らず、大女の重たい膝蹴りを叩き込まれる
だけだった。
「ぐうぉっ・・・うう!ううぇう!げぼお!げろおお~っ!」 壊れた蛇口のように
ビチャビチャと胃の中のものを噴出す景子。だが、彼女は膝をついたまま
両肩をしっかり固定され倒れることも許されない。
膝蹴りが入るたび、景子の超ミニスカートから太ももと下着が露出される。
大女は、自分の膝に獲物の嘔吐物がかかっても気にも留めずマシーンのように
機械的に景子の内臓を破壊する。
景子の嘔吐物は当たり一面に広がって異臭を放っている。
「ぐええ・・・・ぐお」ぐるんと白目を剥いたかと思うと、膝をついたまま失禁を
始めた景子。ジョボジョボと勢いよくミニスカートから黄色の液体がほとばしる。




643 :名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 05:39:27 ID:V0tIgjTF0
「けっ、もう終わりかよ。話にもなんねーな」大女はがくっとうなだれている
景子の両肩を離す。同時に、景子は顔面から自らの撒いた汚物に突っ込んだ。

こうして、校内ナンバーワン人気の美人女子高生・景子は大勢の生徒達が見ている
前で不良転校生のシズによって公開処刑された。

「おまえにや恨みはないんだけどね。一番目立つやつ絞めるのがあたいの挨拶
なんさw」




644 :名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 05:48:22 ID:V0tIgjTF0
景子はロングヘアの似合う、色気のある女子高生だった。
ブレザーの制服をお洒落に着こなし、雑誌のモデルとしても活躍。
しかも、成績も学年トップクラスで誰もが認める才色兼備の持ち主だった。

その彼女が、今グランドのど真ん中で汚い汚物と砂もこりにまみれて倒れている。
革靴やネクタイが方々に散らばり、学校指定のハイソックスがくるぶしまでずり落ちている。
スカートは捲りあがり、女子高生にしては大人びたパンティが丸出しとなっている。
股間から流れ出た大量の失禁。グランドにできた小さな水溜りが、ひときわ目立っていた。








656 :名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 06:28:14 ID:cabobz2r0
「いやあっ、来ないでよ。何なのよあなた達!」
深夜の人気の無い駐車場の一角で、フェンス際に追いつめられたOL奈緒美(28)は、不良女達に
怯えていた。

同じ商社に勤める彼氏とのデート帰りに、別れて家路を急いでいる最中、後ろから声をかけられたのだ。
「何いちゃつきながら歩いてやがるんだよ」人相の悪い2人組の女。髪の毛は逆立ち、とてつもなく巨漢だ。
よく見ると双子の姉妹のようだ。とにかく奈緒美はとんでもない輩に目をつけられたとその場から走って
逃げたのだが、履いていたのはヒールの高いブーツ。途中で足をくじいてしまい、あえなく捕まってしまった。

逃げ場の無いか弱いOLの腹に、ものすごい勢いで巨漢姉妹の妹のパンチがめり込む。
ドボオッと腹部を抉る音とうしろのフェンスが響き渡った。

「ぐ・・・・!ぐうええええっ!」たまらず腹を抱え、声を上げる奈緒美。生まれて腹など
殴られた事などなかったため痛みも衝撃も大きかった。



「」


657 :名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 06:50:02 ID:cabobz2r0
「がはっ・・げほっげほっ」むせ返る奈緒美の自慢のロングヘアを乱暴に掴み、身体を起こさせる女。
今度は鳩尾に狙いを定め、拳を叩き込む。ニットのセーターごしに鈍い音が再び響いた。

「ぐふううっ!う・・うええええっ!げほっ!げほっ・・い、痛いよ・・ど、どうしてこんなこと。」

大きな目に涙を浮かべながら問いかけるが、返って来たのはあまりに理不尽な答えだった。
「別にい?ヒマしてたらあたいらの横をイケメン彼氏と腕組んでいちゃついてたからムカついただけだよなあ?
お洒落な服着てミニスカなんか履いちゃってさあ。」
「そうそう。ナヨナヨしたOL狩りで~す」
悪びれる様子もなく指をポキポキならす姉。

「そ、そんな、酷いじゃな・・げうぇえっ!」いきなり姉のつま先蹴りが奈緒美の腹を抉った。
「えうっ・・お、おえ、うぉ、げほっげほ・・ひいい!」恐怖に目が見開かれている。

怯える表情も美しい小さく整った顔に、容赦ないパンチが浴びせられる。右、左、そして正面。
「ぎゃっ!や、やめてっあぶっ、ぐふっ!」衝撃で脳みそがシェイクされる奈緒美。口からは
血と唾液が飛び散る。そして、乱れる黒髪から甘いシャンプーの匂いが広がる。





658 :名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 07:06:17 ID:cabobz2r0
奈緒美が倒れないように不良デブスの妹が羽交い締めにし、姉が顔や腹をボコボコに殴り続ける。
右、左、顔面、下腹、脇腹、鳩尾を乱れ撃ちされて破壊されてゆく美人OL奈緒美。

さっきまで甘い声を出して可愛い表情で彼氏に甘えていた奈緒美だが、次第に顔が腫れ上がり、
歯も折れ、内蔵が潰れたような下品な声を上げている。

「がはあっ、ぶうっ、あうっ、ひぎゃあっ、やめっ・・うおえっ、おえええっ!」

ビチャビチャと嘔吐物まで撒き散らす。レストランで食べたパスタやら肉やらが未消化の
まま吐き出される。羽交い締めの中でうつむき加減の奈緒美だが、顔を上げさせられると
そこにはもはや別人がいた。彼氏が見ても分からないくらい顔をボコボコに殴られ、
潰れた鼻から血の混じった鼻水を垂らし、口からは胃液が漏れ、涙も合わせてメイクも落ちている。

上はセーターにジャケット。下はミニスカートにブーツという綺麗なOLらしい服も乱れ、土埃と、
彼女自身の体液で汚れている。







659 :名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 07:37:36 ID:cabobz2r0
「可愛い服もボロボロだなw邪魔だから脱いじゃいなよw」

羽交い締めの状態で、服を剥ぎ取られる奈緒美。
(雄二くん・・・助けて)朦朧とする意識の中抵抗する力は残っていない。
セーターを引き裂かれ、ミニスカートを外され、ブーツを脱がされる。
奈緒美はブラとパンティーだけの哀れな姿になってしまった。

ほっそりと華奢な身体だった。
Cカップの形のいい胸とスレンダーな身体のバランスが良く、デブス女達の嫉妬心を余計にかき立てた。

ベチイイイッ!!

胸の谷間の下、鳩尾にまたもや拳が叩き込まれる。服を着ていないので鳩尾も狙いやすい。

「おうぇええっ・・・うぶうぇ・・げろおお」

口からドロドロと胃の中の残りを絞り出すように吐き出す奈緒美。
ようやく羽交い締めから解放されると、ドサっという音とともに腹を押さえ、
尻を空に突き出すような格好で倒れてしまった。








662 :名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 23:35:31 ID:vBSB/tHJ0
ブランド物のバッグや服が散乱している中、下着姿で悶絶している姿に満足そうなデブス達。
うずくまる奈緒美の後ろ髪を掴み、仰向けにひっくり返すなり、自慢の細長い美脚を鉄パイプで
思い切りぶん殴った。骨の砕ける音がした。

「ぎゃあああっ!!痛いよおおっ!あ、あし、あしがあああッ」

鼻水と涎と涙をぐちゅぐちゅに垂らしながらこれまでにない絶叫を上げる奈緒美。
昼間は澄まして働くOLとは思えない。

「うるせえよ!でけえ声だすな。この臭えパンストでもくわえてな!」
奈緒美から先ほど脱がせたパンストを、彼女の口に押し込む。

「ふぐうっ」と息苦しそうに口を膨らませている奈緒美。
気がつくと、姉のデブスが奈緒美の携帯から彼氏に電話をかけていた。

(!!!)


663 :名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 23:48:10 ID:vBSB/tHJ0
彼氏は奈緒美からデートの後のいつもの電話かと思ったようだが、デブスのダミ声にさぞ驚いただろう。
巨漢女は、目の前で彼女がボコボコにいたぶられ、半裸に剥かれ、ゲロまで吐いて悶絶している事を楽しそうに
実況していた。
「あ?なんだって?そんなに声聞きてえなら変わってやるよ。オラっ」

再び奈緒美の髪を掴んで上半身を起こし、口に詰まったパンストを引っ張り出し
携帯を奈緒美の耳に当てて話をさせる。

「・・ゆ、雄二くん?・・・お、お願い・・助けにきてえ・・・あたし・・え?や、やめっ
ひいっ!い、痛いよっ・・・きゃっぐええっ!うおお~っ!げほっ、げほ、ぐおおお~っ」

わざとリンチされている声を聞かせるかのように、2人がかりで袋だたきにするデブス。
ベコッ ベキッ バキッ ドボオッ
殴りつける音まで彼氏には聞こえていた。

「うええ!がうぇっ、ごえっ・・げふっ・・ごほっ・・うお・・」
奈緒美はもう白目を剥き、半殺し状態だ。もちろんその様子は奈緒美の持っていたデジカメで撮影
されていた。








668 :名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 16:19:24 ID:drOupBlf0
入学シーズン、新入生リンチとかないかな…。
中学の頃、入学早々というわけでもないけどそれっぽいリンチがあって女子が一人、指骨折と顔面打撲した。
ただ、指の骨折に関しては実は殴られ怪我じゃなくて殴り怪我だったんじゃないかという噂もありましたが…。


669 :名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 16:49:53 ID:tUm/908T0
その子可愛かった?可愛いなら今夜のおかず決定でつ
まぁ勝手に可愛い子にしちゃうけどw


670 :名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 23:08:04 ID:drOupBlf0
可愛いというかかっこいい系の子だったが。
刈り上げショートボブで。
でも確かに少し冷めた感じで不良っぽく振舞ってる感があったから喧嘩になるのもわからんでもなかったな。
指はともかく口が痛くて何日か休んだのが何となく印象的だった。何針か口の中縫ったので。
まぁ口内炎悪化しただけでも痛くて飯食うのがつらかったりするもんな。


671 :名無しさん@ピンキー:2010/04/10(土) 11:42:12 ID:OIgJrKVW0
663続き
「へっつへっへ。ずいぶん惨めな姿になったじゃねーか。安心しな。彼氏にはちゃんと写真送って
知らせてやってるららよお。けけけ!」
出っ歯のデカ女が汚い顔を奈緒美の泣きじゃくる顔に近づける。

「い、いやあ・・・」

恐怖と痛みと羞恥心で気が狂いそうな奈緒美。普段オフィスで男達に見せるクールな
装いは見る影も無い。

「そろそろ次いかね?今夜はあと3匹は狩らねーとw」1人の大女がいう。
「おっけーじゃあそいつにとどめ刺しちまうか。」もう1人がぐったりする奈緒美に近づく。

「た・・たすけて・・おねがい」

倒れている奈緒美の髪を掴んで、上半身だけ起こすと、奈緒美の何倍もあるごつい両腕で首を絞め始めた。
周りからは「落とせ!」コール。

「ぐ・・・げほっ・・・が・・がああ・・!」両目を見開き細長い手足をバタバタさせる奈緒美。
口からは涎が垂れている。
(ど、、どうして?あたしが一体なにをしたっていうの?)抵抗しても無駄な事を悟り、自然と力が抜けていった。
グググッと大女の両腕の力が3倍の強さになる。




672 :名無しさん@ピンキー:2010/04/10(土) 11:49:03 ID:OIgJrKVW0
「・・・・ぐ・・・ぐあ」舌を突き出し、目が充血している奈緒美。大女の腕を掴んでいた奈緒美の
可細い腕が、ガクっと下に垂れ下がった。それでも大女はまだ腕を離さない。ピクッ!ピクッ!と奈緒美の
身体が痙攣を始めた。

直後、彼女の股間の筋肉が弛緩したのか、ジョボジョボと失禁を始めた。生暖かい黄色の液体が彼女の股間
付近に水たまりをつくる。

奈緒美が失禁したのを見て、ようやく役目を終えたとばかりに両腕の力をぬく大女。

「一丁あがり~。もろい女だねえ。さて、こいつの持ち物頂いて、彼氏に場所教えて迎えにこさせて
やんねーとなwヒヒヒ。可愛い彼女の悲惨な光景見たらどんな顔するかねえw」

陰険な笑みを浮かべる凶悪大女達。

数十分後、駆けつけた奈緒美の彼氏が見たものは、下着姿で全身ボコボコに殴られ痣だらけ、
吐いたものや失禁などで汚物まみれで失神している彼女の姿だった。

奈緒美は自分のパンストでフェンスに首を吊られているような格好で、下を出して白目を剥いていた。
両足は広げられ、失禁を強調されているかのようだった。

ついさっきまで上品にレストランでワインを飲んで知的な会話をしていた美人の面影など、どこにも
なかったのである。




6



704 :名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 17:20:59 ID:9/4Dg6fa0
「ううう!・・・・ッぐおおお~、げほっ、げほ、かはっ」

長瀬智美(25)は、か弱い身体の腹部に鉛のようにめり込んだ拳を恐怖の眼差しで眺めた。
テレビ局の受付嬢として働く彼女は、帰宅途中の路上で突然大柄の汚い女達に絡まれ、路地裏に
引きずりこまれてしまったのだ。

上下白のスーツでストッキングを履いたスレンダーな身体が一目を引いたのだろうか。
「あのヒールこつこつうるせえ女やっちまうか」と後を付けられていたのだった。

「ちょっと・・・・何なのよあなたたち!こんなことしてタダですむと思ってるの!」
腹の痛みを我慢しながらも、切れ長の二重の気の強い目で襲撃者達を睨みつける智美。

その整った美しい顔の真ん中に、高速のストレートパンチをまともにくらう。
「うわあああっっ!い、いたいいっ~!!」

流れ落ちる鼻血を両手で受けながら、パニック状態になる智美。
その様子を不良少女達がゲラゲラ笑う。


705 :名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 17:35:01 ID:9/4Dg6fa0
「おら、腹ががら空きだよ」

ごつい岩のような拳が、智美の鳩尾を抉るように襲った。
エクササイズで引き締まった智美の腹筋程度では、腹に受ける攻撃を防げるはずもない。

「ううううううううううう!!?」目をかっと見開き、口を文字通り「う」の形になる。
5秒位そのままの状態で固まったと思ったその瞬間

「うおうぇうぇうぇ!げうぇっ!」受付で愛想良く応対する智美のものとは思えない異質な
声を上げ、腹部を抑えたまましゃがみ込み。膝をついた瞬間、智美の口がみるみる膨れてくる。

「うっぷ、ぶっっふ!」胃の中のものが衝撃で込み上げてきたのだが、美人のプライドからか、
必死で口から出ないように溜め込んでいる。

「ぎゃっはは!我慢しねえで出しちゃえよ」
そういうとがら空きの智美の腹につま先蹴りを入れる非情な女。

「ぶふぇうぇうぇうぇっ~~!!」





706 :名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 17:46:10 ID:9/4Dg6fa0
ものすごい勢いで、智美の吐瀉物が撒き散らされる。
「おおううぇえっ・・げふ・・げほっ・・・おぐう」

必死で吐いている彼女の巻き髪ロングヘアを後ろから掴んだ女は、
そのまま彼女の顔を地面に叩き付けた。

自らの胃の中のものに顔から突っ込まれる智美。
頭の中はまっしろで、されるがままの状態だ。ぐちゃぐちゃと音をたてて擦り付けられる美人受付嬢。

「いやあ・・・」

もはや抵抗する気力も体力も残されておらず、四つん這い状態で失禁を初めてしまう。
面白がった少女達は彼女のパンストとパンティを一緒にずり下げ、尻の穴に、落ちていた
空き瓶を突っ込まれ、抜いたものを彼女の口の中に入れたりと非道際まりないリンチを続けた。

「どうだよお姉ちゃん!てめえのこびりついたうんこの味は!ひゃはあっ!」

一時間後、身ぐるみ剥がされ、大小垂れ流し状態で失神している智美が発見された。
翌日のテレビ局の受付に、彼女はいなかった。







2010-06-24 : リンチ いじめ : コメント : 0 : トラックバック : 0
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